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東京ばな奈

また寝坊してしまった。

起きると、スナフキンが一日何も食べていないので弱っている様子だ。トレーダー・ジョーズに食料品の買出しに行き、豚カツをぱぱっと料理して食べさせる。あいにく豚カツソースもウスターソースも無いので、ステーキ・ソースで食べてみたら、これが結構イケル。千切りキャベツにも少しかけてみる。デザートには東京ばな奈。

ナンデモアリフォルニアで東京ばな奈を食べている人はそういないと思う。最近、春休みで一時帰国していたときに買ったものだ。

ひよこは何回か食べているけれど、東京にずっと住んでいながら食べたことのなかった東京ばな奈。以前、引越しをしたときに車を出して手伝ったくれたスナフキンの同僚マリー・アントワネットが、どうしても東京ばな奈を食べたいと言っていたので、彼女のために成田空港で一箱購入した。マリー・アントワネットがどうして東京ばな奈のことを知っていたかというと、ずっと昔、父親が出張で日本にいたらしく、そのお土産がいつも東京ばななだったとか。その美味しさが忘れらないと彼女は言う。もう一度あのふわふわしたお菓子を食べたい、と。

そんなに美味しいのか、知らなかった!マリーの話を聞いていてなんだか無性に東京ばな奈が食べたくなってしまい、もう東京ばな奈を食べないと死んじゃうくらい食べたくなってしまい、自宅用にも一箱買ってきたわけである。たまたまその日の空港は大変混雑していて、どの店でも外国人観光客が楽しくワーワー騒ぎながら土産を吟味したり、行列したりしている。そこへ私が乗り込んで行き、忍者のようにさーっ!と東京ばな奈を二箱拾って素早く列の末尾につくと、おそらくこのくの一は日本人で何がおいしいのか分かっている様子だ、よし、私もこれにしようと思ったらしく、エキゾチックすぎる土産を目の当たりにして途方に暮れていた外国人が次々と私につられて東京ばな奈をいそいそとカゴに入れている。あまり日持ちしませんよと一声かけてあげたいけれど、搭乗時間が迫っているのでこちらはこちらで切羽詰っている。とにかく、私のシャープな動きのおかげで、今頃地球のどこかで東京ばな奈を食べて喜んでいる人が大勢いるのだ、きっと。

店員さんの手際の良いこと。あれほど長かった列がみるみる縮んで、まああっという間ではなかったけれど、割と短時間で自分の番になり、なんとか飛行機に間に合ったのである。東京ばな奈を買おうとして飛行機に乗り遅れたら、どんなにあほらしいことか。

肝心の味は、外がふかふかしていてスポンジケーキのような程よい甘さで、中にバナナ味のカスタードがたっぷり詰まっていて、大変満足だ。鎌倉カスターには劣るかもしれないが。

マリー・アントワネットの東京ばな奈をスナフキンに持たせた翌日、スナフキンはマリーから東京ばな奈代として預かった40ドルを持って帰ってきた。あれはお土産だからお金はいらないよ、それにしてもなんで40ドルなんて大金をもらってきちゃったのとスナフキンを叱ったら、なんでもeBayで東京ばな奈を買うと60ドルくらいするらしい。空港で買ったのは千円もしなかった。eBayで購入している人は、そんなにしてまで食べたいのか。それより、どんな人が東京ばな奈をオークションしているのだろう。ここは私もひとつ、東京ばな奈トレードで小遣い稼ぎをするべきだろうか。色々考えてしまう。

とりあえず40ドルはマリー・アントワネットに無事返すことができた。

晩ごはん。枝豆。ビール(3ボトル)。変な時間に豚カツと東京ばな奈を食べてしまったので、あまりおなかが空いていなかった。

しばらく仕事をし、一段落したところで 途中になっていたアメリー・ノトンの『殺人者の健康法』を読む。楽しく読書をしていたら夜が明けてきた。

 


by majani | 2014-04-07 22:08 | 食べる人々

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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