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チャヨーテを食べる

ビジネススクールの友人ヘブンフィールドさんにお誘い頂き、初めてサンノゼにある日本スーパーに行く。一ヶ月くらい前にヘブンフィールドさん(日本人)とお茶をしたとき、私が帰国時はいつも農大の子が作っているお米を買ってはスーツケースに詰めて持って帰ってくるという話をしたら、「えっ、そんなことする必要ないですよ。米ならこっちでも簡単に買えますよ」とヘブンフィールドさんは大いに驚いていた。まったくそのとおりである。しかし、私は車がなく運転もできないので、食料品の買出しは徒歩で行ける範囲に限られている。バスや電車に乗ってどこかに行くのは別に苦痛じゃないが、重いものをしょって家路につくのが嫌だ。

昔から料理に関しては無頓着である。たとえば、去年まで炊飯器が無かった。炊飯器が家にやってくるまでは鍋や底が少し深くなっているフライパン等でリゾットを作る感覚でご飯を炊いていた。その話をしたら、心優しいヘブンフィールドさんはディープなショックを受けている様子だった。何故突如こんな恥ずかしいことを打ち明けてしまったのか解らないが、とにかくこの話をヘブンフィールドさんは覚えていてくれて、というか私のことを哀れんだらしく、サンノゼの買出しに誘ってくれたのである。

和食は普段作らないが、スーパーで美味しそうな魚、乾物、干物、漬物、調味料等を見ていて心が動く。あれもこれも欲しい。これさえあれば料理のレパートリーもどんどん広がるぞ。ひょっとしたら素晴らしい料理人になれるんじゃないか。自分の中の小さな声が「旅に待ったなし」のマントラを唱えだし、思うがままに色々カゴに入れていたらしっちゃかめっちゃかのコレクションになってしまったが、まあよい。知らないうちにシャンプーとか関係ないものも買っている。この柚子胡椒を使うときもある日来るだろう。その日を気長に待つ。

買出しが終わったら、近くのビルマ料理の店で食事をする。そこでいろんなナッツが入っている茶葉の漬物とキャベツのサラダというのを食べて、美味しいおいしいと唸る。コロナ(一本)、タイガービール(一本)。

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From Hemstreet, Charles (1901). The Story of Manhattan.


チャヨーテの天ぷらというのが気になったのでそれも頼む。ん?チャヨーテってもしかしてネイティブ・アメリカンが西部劇(?)とかでパイプに入れて吸ってる幻覚剤ではなかったかと一瞬はっとするが、それはペヨーテ(サボテン科)だった。一方チャヨーテはセロリのような薄い緑色でみずみずしく、癖のないサッパリした味と食感だ。日本語だと隼人瓜(ハヤトウリ)というカッコイイ名前が付いているが、見た目はあまりカッコよくない。ツルツルしている表面に、うっすら白い無精ひげみたいなトゲトゲが生えていたりする。

夜はざ・ふぁーむの方に戻ってきて、バーのテレビでアイス・ホッケーを観ていたスナフキンと人魚姫さんと合流する。ミスターベアがソムリエをしている店に移動し、心理学研究の話をしたり、海魚と川魚とどう味が違うかという話をしたり、ワイワイやっているといつの間にかワインボトルが二本空いていた。

 

今日は少し二日酔い気味で家でごろごろしている。

朝ごはん。ファーマーズ・マーケットのリンゴ(一つ)、かぼちゃの種入りグラノーラ(一ボウル)。コーヒー(二杯)。

昼ごはん。ピザ(一切れ)。

晩ごはん。キャベツ炒め、炊飯器でちゃんと炊いたご飯、サンノゼで買った漬物、きゅうりのサラダ。玉ねぎとシラントロを和えてスモークド・トラウト(鱒)も食べる。

 

最近、永山久夫著『なぜ和食は世界一なのか』を寝る前に少しずつ読んでいる。本屋で手にしたとき最初に思ったのが、目を三日月にして口を大きく開いてワッハッハと大笑いしている著者の写真が凄く良いということだ。いかにも優しそうで面白そうなおじさんだ。第一章は「卵かけご飯の快楽」で始まる。これを読んだだけで腹がぐうぐう鳴り出す。大豆に含まれるイソフラボンは尿意を抑える効果があると言われているとか、ターメリックは血液を浄化する働きがあるとか、専門的になりすぎない程度のサイエンスあり、『万葉集』に出てくる食べ物に携わる歌あり、長い一日の最後にちょこっと読むのにちょうど良い本である。

私は卵かけご飯が大好物で、できるものなら毎朝食べたい。初めて渡米したとき、卵かけご飯のことを友人に話したら、サルモネラ菌で病気になるからそんな危ないことは止しなさいと注意された。サルモネラ菌は普通殻に付着するものだと後に知り、気をつければナンデモアリフォルニアでも卵かけご飯が食べられるはずだ。それでもアメリカの卵は謎めいている感じがして、小心者の私は未だに挑戦していない。


by majani | 2014-04-21 15:12 | 食べる人々

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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