南デモアリフォルニア旅行記の続き。
サンタモニカのスパニッシュ・タパスの店でバールに座り、目の前に置いてあるイベリコ豚のキュアードハムを見つめながら思ったこと。ロサンゼルスに来て初めて妙に落ち着く食事である。タパス文化は異国の雰囲気がありながら、日本人にとって馴染みやすいのではないか。何故ならば日本には居酒屋文化がある。比較的に小さなポーションで出てくるものを種類沢山注文し、それを他の人と分け合い、会話交じりにつまみながら、酒を飲む。それがしっくりくる。大量に出てくる
真空ステーキを食べる必死さがまるでない。
Bar Pinxto というタパスバーで晩御飯。Pintxo とはスペイン語で(それもスペイン国のスペイン語で、ラテンアメリカでは聞かない) tapas より量が少ない小皿のことを意味する。私たちが食べたのは、蛸のグリルとルッコラのサラダ、鱈のコロッケ、イベリコハム、ピクルスなど。スペインとカリフォルニアのワインを飲み比べる楽しみもある。
バールの向かい側ではコックたちが、ふわふわのフリッタータをひっくり返したり、パエリヤをオーブンにばーんとぶち込んだり、繊細なサラダをタワー状に積み上げ、その上に塩漬けの牛肉を手際よくさっさっと切り落としたり、それはとても忙しそうにしているがその全てが無言で行われているのに感心する。わーわー喚くキッチンではない。
同じバールに座っているのは地元のロサンゼルス人っぽい人ばかり。聞いてはいたが、この街はやはり金髪女性が多い印象を受ける。それに男女問わず、決して太っているわけではないが、大柄だ。ウッディアレンみたいな小柄なユダヤ人はまず見かけない。周りの大きくて美しいロサンゼルス人たちをヘブンフィールドさんと観察しながら、彼らの動く唇に合わせて会話を想像する遊びをする。日本語という秘密言葉があると、こういうくだらないお遊びが公にできる。
「それにしてもこの街は白人女性とアジア男性のカップルが多いね」とヘブンフィールドさん。
白人男性とアジア女性のカップルはサンフランシスコやパロアルトだと別に珍しくもなんともないが、その逆はちょっと新鮮。現に私たちの隣に座っているカップルもそうだ。やがてそのカップルが熱いキスを交わし始め、私たちのくだらない会話想像ゲームも急展開である。
メニューの品はほとんどがスペイン語で綴られており、英語の説明は漠然としている。ウェイターに聞けば、ちっとも嫌な顔をせずにメニューを解読してくれるが、夏期講習でマルコ兄弟と学んだ
スペイン語が思わぬ所で役立ち嬉しく思う。
バールの上の黒板にもスペイン語でこんな祝杯のメッセージが。To health, money, love and the time to enjoy them!
「健康、金、愛、そしてそれを味わう時間に、乾杯!」
Or me.