直前になって、感謝祭を南カリフォルニアで過ごすことになった。大学時代の友人でテレビ脚本家を目指すマグダレナに会いに、いざロサンゼルスへ。
旅仲間は、去年の
南デモアリフォルニア旅行も一緒だったヘブンフィールドさん。ニンニク畑が広がるギルロイという町までは去年と同じルートを使うが、一気にロスまで運転となると疲れるので、途中で何か所か面白そうな田舎町を探検することにした。
まず、パソ・ロブレスに到着。葉が亜麻色に染まったブドウ畑が高速道路から見える。ナパやソノマほど著名ではないが、プティ・シラーなどのブドウで知られるセントラルコーストのワインカントリーだ。
事前にあまり研究せず乗り込んだので、とりあえず入ってみたのが Le Cuvier というワイナリー。
10ドルのテイスティングで各ワインが一口サイズの自家製オードブルとペアリングされている。道中はバナナとアーモンドしか食べていなかったので、何ともありがたい。この日の試飲は、主にローン系ブドウ種の赤ブレンド。白ワインは安物を料理に使うくらいしかしない不勉強な私は、赤ワイン中心で嬉しく思う。
ほくほくしながらワインを啜っていると、赤カブのクロスティーニの下に隠れていた英文が目に留まった。
ごく普通のワインリストかと思いきや、ヴィンテージ等の情報の下に小話がある。ブドウや風味の説明ではなく、イメージストーリーみたいなのが各ワインに付いてくるのだ。例えば、「レッド・ドラゴン・クリスプ」の名が付いたパプリカ入りのショートブレッドクッキーとペアされていたロゼのイメージストーリーは、何故か日本庭園のシーンだ。スズキという庭師(?)が登場したり、主人公の父親が側でギター(?)を弾いていたりする。
ル・キュヴィエは丘の上にちょこんと座っていて、眺めがとても良い。
ワイナリーとしては、味だけでなくイメージ作りも大切なんでしょうね。(ナパでは
革ジャンをまとったラブソングの味がするワインと出会った。)二人で小話を全て読んでいると、係の若者がこちらに戻ってきた。小さなテイスティングルームなので、スタッフは彼と、窓越しの厨房でレッド・ドラゴン・クリスプをせっせと焼いているおばちゃんの二人だ。
「いかがですか」と若者。
「美味しいです。実はこの物語を読んでいて・・・これは誰が書いたんですか」とヘブンフィールドさんが尋ねる。
「ああ、これね。それぞれワイナリーの関係者が書いてるんだ。日本のはここのマネージャーが書いたんだよ」
「へえ~」
「僕も一本書けよとずっと言われてるんだけど・・・ちょっと自信がないんだ」
彼はブロンドの髪をかき上げて、恥ずかしそうに帽子を被りなおした。ヘンテコな日本庭園ロゼを買ってあげたくなりました。(買わなかったけど)
次は海岸に近い Justin というワイナリー。パソロブレスでは大手の業者らしく、ル・キュヴィエのアットホーム感とはまた違う賑やかさがある。パティオでワイン畑を眺めながら試飲ができる。夕方のワイン畑は全てが蜂蜜に包まれたような光で、うっとりしているとあっという間に閉店時間。
入口にワインボトルでできたクリスマスツリーがあり、ホリデーシーズンが来るのだなあと感じさせる。
ロードトリップ記録、のんびりと続く。
Or me.