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砂漠道中

ネバダとの境界にある「死の谷」― デスバレー国立公園に向かう。砂漠地帯のデスバレーは西海岸に多々ある国立公園の中でも渋い方で、一番暑くなる夏がオフシーズン。

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シリコンバレーからデスバレーまで約8時間。家具がなくなりガランとした古いアパートメントを後にし、トランクにたっぷり水を積み込んで、まっすぐな高速を南に辿る。

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平坦な畑や果樹園が消えさると、夏虫色のごわごわした植物や、地学的な大きな力を感じさせる岩体が目立ち始め、白と赤茶が交互する地層は綺麗に割れなかった板チョコレートの平面を想起させる。

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私はずっと運転免許がないままナンデモアリフォルニアに住んでいて、「どうやって生活してるの」と大学の教授までが首をかしげていたのが、先月ついに仮免許を取得した。それがこのロードトリップで(ちょっぴり)活躍することになる。

聞いていた通りのカオスのDMVで(The Simpsons のパティーとセルマの世界だった)車デビューしたての高校生に混じってペーパーテストを受けた時や、自転車の人を轢かないように冷や汗を流しながら運転練習を繰り返した日々が、砂漠に来てみればアラ不思議、全て良い思い出になっている。やっと理解できるようになりましたよ、ドライブをする快感が。開放的な砂漠なら私でも安全に運転ができる!

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入口にゲートがあるわけでもなく、気が付けば公園に入っていた。このような殺風景な道路、アメリカの大陸らしくていいなあと思う。

早速、コヨーテが出現。この時間帯に道路付近をうろついているのはおかしいので、誰かが餌をやって人間に慣らせてしまったのだろう。車内からコヨーテを観察していたが、いかにも餌欲しそうにしているのでクラクションを鳴らしながらその場を去ることにする。人間は危ないのよ?轢かれないでね。

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ストーブパイプウェルズの休憩所でいったん車を停めて場所を確認する。今夜は公園の東側に渡り、ネバダ州側の小さな町に泊まる予定だ。

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ストーブパイプウェルズで初めて外に出てみると、乾いた熱風がわっと顔を襲う。デスバレー国立公園の公式ウェブサイトには午前10時以降は車から出ないように、と注意書きがある。脱水症状を起こさないためには、ハイキングをする場合、一時間ごとに一リットルの水を飲むのが基本。

休憩所にあった温度計を見て目を疑ってしまった。気温が45℃以上もあるのでこの日はおとなしくドライブだけにして、朝からトレールを歩くことにしよう・・・

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・・・と思っていたら、いわゆる砂漠らしい砂丘に行き当たったので、もう一度外に出てみることにした。遠目に見えるのが Mesquite Flat Sand Dunes 。皮膚が焼け爛れるような暑さでも、短パンで歩き回っているルール破りなフランス人がけっこういる。

近そうで遠い砂丘まで歩いていく元気は、私になかった。写真で伝わりにくいかもしれないが、オーブンの中にいるようで、すぐへたってしまう。

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日が落ちてしまう前に、Artist's Drive and Palette というエリアに急ぐ。それにしても車の数が少ない。途中でエンコを起こしてしまったら大変。

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先ほどの砂丘とは全く違う風景。

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メインの道路から一本離れた Artist's Drive の細道を行くと、薄紫や桃色が緑と赤茶と入り混じる水彩画のパレットのような色彩の岩体が楽しめる。時間帯と光の加減によって色の出方が少しずつ違うらしい。

私たちが訪れたのは黄昏時で薄暗くなり始めていたが、誰かが山の上に絵具をこぼしてしまったように見えた。

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岩ばかりに気を取られていたけれど、ふと足元を見ると不思議な植物が。

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日が落ちると街灯が一つもない砂漠はあっ!という間に真っ暗になる。

道路に飛び出してくるカンガルーラットを避けながら、ネバダ側のパランプという田舎町へ。町の名前が何となく似ているせいか、トランプ支持者が住んでいそうな町だなあとリルケで話し合いながら食事ができる店を探す。

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「ゴールデンハーベストカフェ」という店がまだ開いているようだ、よし行ってみよう、とダウンタウンに繰り出すと、なんとカジノの中にあるレストランだった。だから「黄金の収穫」なのね。アジア系の人が見事に人っ子一人いないのは、まあ予想できたが、いざとなるとなんとなく居心地が悪い。

ところで、パランプにアップル社の共同創立者ロナルド・ウェインが住んでいるらしい。ウェインが、初期に800ドルで売り払ってしまったアップルの株をまだ持っていたならば、現在は750億ドル以上に膨れ上がっていたとある。今はパランプで、ヴィンテージ切手やコインを売っているとか。彼もデスバレーに遊びに行ったりするのかしら。

明日は早起きをして、少しトレールを歩いてみよう。帽子、日焼け止め、水は必需品。



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by majani | 2017-09-08 02:55 | 旅に待ったなし

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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