トニーベネット

普段なら必死に避けるミッドタウンの観光スポット。派手なネオンサインの Radio City Music Hall にやってきた。

f0328897_08323984.jpg

何故ならば、トニー・ベネットがライブで来ていた。トニーのためなら、マンハッタンの人混みもへっちゃら。

f0328897_08415625.jpg

ああもう、この笑顔を見ると安心する。

以前、サンフランシスコでトニー(の銅像)を見てきたけれど、生のトニーが、ニューヨークに着いてすぐ聴きに行けるとは夢のよう。やはりセコイア国立公園の種ゲームでスゴイ幸運を呼び込んだのか!

f0328897_08460119.jpg

ほぼ10年ぶりにラジオシティ・ミュージックホールに足を踏み入れる。この金と深紅の入口、 grand foyer を始め、アールデコ調の歴史的な建築物だ。

f0328897_08461138.jpg

売店でポップコーン、プラスチック容器からヨーグルトのようにぺりっと蓋を剥がして飲むワイン、金色のゴブレットに注がれたシャンパンなどを売っている。悲しいことに、プログラムはない。ちゃんとしたグラスで飲みたいなあと思いながら赤ワインを啜り、前座の娘アントニア・ベネットの歌を聴く。彼女の歌はイマイチ盛り上がりに欠ける。

するとこんなアナウンスがかかった。「では、フランク・シナトラにトニー・ベネットをステージに迎えてもらいましょう!」観客が「え?」とざわめくと、トニーを褒めちぎるシナトラの昔の録音が、広大なホールに響き渡った。

f0328897_08463844.jpg

耳がおかしくなりそうな喝采の中、トニーがステージに出てきた。始まる前からスタンディングオベーションだ。トニーがパッと腕を広げると、観客はさらに手を叩きならして喜んだ。彼のトレードマークジェスチャーである。(サンフランシスコのフェアモントホテルにある銅像もこのポーズを取っている。)

ポケットスクエア替わりに、赤いバラを胸に挿しているトニー。 彼が "Watch What Happens" を歌い始めると私は感極まって涙がぽろぽろ出てきてしまい、隣に大人しく座っていた北欧の観光客がぎょっとしていた。

f0328897_08464892.jpg
割と良い席を取ったつもりでしたが、やはりケータイ写真だとトニーが豆サイズですね。オペラグラスを持って行って正解。

プログラムが無かったので、暗闇の中、セットリストをメモした。Boulevard of Broken Dreams などちょっと意外な選曲もある27曲だった。

トニーベネット・クォーテットのメンバーそれぞれの見せ場がある時、トニーが奏者の所までゆっくりと歩いていき、本当に楽しそうに聴き入る姿が、私は好きでしょうがない。

f0328897_08465765.jpg

ライブが終わった後、外でリルケが鋭い観察をする。「あれ、ト二―の車じゃないか?」MUSIC7 というライセンスプレートの車を発見したのである。

しばらくすると、側に立っていたTシャツとジーンズの若い男の子が、"There he is!" と叫んだ。トニーが楽屋口から出てきたのだ。わあああ!と喜ぶ観客に手を振ったが、彼は素早く車に乗り込んでしまった。(因みに、電話をしているのは彼の息子のダニーだと、父が後に教えてくれた。)

f0328897_08470744.jpg

MUSIC7の車は、マンハッタンの煌びやかな夜の中へと消えていった。ああ、良かった~といつまでも見送っていると、腰の辺りから急に声がした。ブクレのブレザーを着たとても小さなお婆さんが、それはまた小さな声で私に話しかけてきたのだ。「トニーは物凄く疲れたことでしょうね!」

上演中はすっかり忘れていたが、トニー・ベネットは91歳である。そうですねえと返事をすると、私もヘトヘト、でも本当に良かった、とお婆さんは微笑んだ。私は地下鉄一本で帰れるけれど、お婆さんは頑張っておめかしをして、とても遠くからやってきた感じがした。

f0328897_08471702.jpg

ラジオシティ・ミュージックホールと言えば、毎年クリスマスの季節にある「ロケッツ」たちのショーがまず思い浮かぶ。36人の若い踊り子たちが、揃って長~い足をかんかん踊りのように蹴り上げたりするので有名なロケッツの Christmas Spectacular 。1930年代からあまり変わることなく続いてきたラジオシティの伝統だ。

館内の広告を見て、子供の頃にお世話になったおねえさんが、後にロケッツになったことを思い出した。彼女は確かインディアナだかアイダホだったか、田舎の出身で、人魚姫のような美しい髪をしていた。彼女は頑張ってニューヨークに出ていき、ウェイトレスのバイトをしながらミュージカルのオーディションに通い続け、やがてロケッツのキャストメンバーになったのだった。大学生になった私は彼女の噂話を共通の知り合いから聞き、全く映画に出てくるような話だなあと、ひどく感心した。

ロケッツは宝塚みたいなもので、キャストが何年かごとに入れ替わるので、彼女はとっくに違う仕事に移っていることだろう。若いダンサーなんて、ニューヨークにごまんといるのでしょうね。

最近の我が家では、ロケッツのかんかん踊りではなく、トニー・ベネットのぱっ!と上に向かって腕を広げるジェスチャーが大流行している。




ブログランキング・にほんブログ村へ


[PR]
by majani | 2017-10-23 02:44 | 旅に待ったなし | Trackback | Comments(8)
トラックバックURL : http://llamainai.exblog.jp/tb/28259676
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
※このブログはトラックバック承認制を適用しています。 ブログの持ち主が承認するまでトラックバックは表示されません。
Commented by BBpinevalley at 2017-10-23 06:10
え〜〜、トニー・ベネット、懐かしい〜〜
まだ生きていることに、まずびっくり。
まだ歌えることに、さらにびッくり。
昔、彼は、フィッシャーマンズワーフのバー(名前忘れました、角っこのバーです)にしょっちゅう出没していて、会ったことあります〜
すごくフレンドリーで、近くに住んでた友人は、その後も彼のお世話になって、仕事とか紹介してもらってた。
1980~82年頃の話です。すごく身近な感じでした、彼はあの頃。
もう91歳……、自分も歳をとるはずだと思います。
ホント、お疲れだったでしょうね、ショーの後は。
Commented by reica_az at 2017-10-23 09:39
こんにちわ。
二度目のベネットの紹介ありがとうございます。^^
それにしても、ド派手なホールでビックリ
91才で歌うんですからやはりベネット様は素晴らしい。
会場を出られた所での、おばあちゃんとの会話
目に浮かびます。
アメリカはいいですね。^^
Commented by Lynn6 at 2017-10-23 13:47
こんにちは。幾星霜のリンです。(๑・̑◡・̑๑)
私はアメリカの音楽にも疎いのですが、それでもトニーベネットは聞いた事があります。さっきyutubeで、 I Left My Heart in San Franciscoを聞いて来ました。今、SFの娘宅に遊びに来ているので余計です。
NYCに引っ越されたんですね。数年前には娘が住んでいたので、これまたよく遊びに行っていたのでとても懐かしいです。西と東で結構交流のある都市同士なんですね。またお邪魔いたします。m(_ _)m
Commented by majani at 2017-10-24 03:06
BBpinevalleyさま
えー!!しょっちゅう出没してたんですか、トニー!
フィッシャーマンズワーフで何を飲んでたのでしょう~。
大した昔でもないのでしょうけど、SFやNYで
ミュージシャンやアーティストがもっと身近な存在の時代があった印象を受けます。
アストリアでばったり会っちゃう、なんて奇跡起きないかなあ。

私は父の世代に比べると「トニーベネットを愛する歴」が短い方ですが、
トニーは91歳になっても歌がどんどん味わい深くなっていく感じがします。
This is All I Ask の歌詞で、"As I approach the prime of my life" という部分で
少しはにかんだりする姿が、愛おしく感じました(笑)
Commented by majani at 2017-10-24 03:08
reica_azさま、こんにちは
二度目の紹介も物足りない写真ばかりですみません!
私は「トニー」なんて気安く呼んでいますが、
ホント、ベネット様さまです。

kounaiさんも、最近の東京公演でご覧になっているのですよね。
こちらでは公演が終わった後、観客が赤の他人と喋り始めたりして、
皆が興奮と感動を分け合っている感じがしました。
これもアメリカらしいと言えば、アメリカらしい。
おばあちゃんも誰かに話したくてしょうがなかったんでしょうね。
Commented by majani at 2017-10-24 03:09
Lynn6さま
リンさん、ようこそ^^ 
サンフラン現地で I Left my Heart in San Francisco を聴かれたのですね~。
私も最近の音楽はすっかりワカラナイのですが(邦楽なんか余計そう)
トニーは活動がすごく長いですからね。

最近ベイエリアからニューヨークに移りました。
お嬢様と逆ですね。
フィルズコーヒーが懐かしいです。
リンさんのSFレポの続き、楽しみにしています!
Commented by otenbasenior at 2017-10-24 04:05
majaniさま、こんにちは。
冒頭でトニーベネットの名前を見て、あらっと思いました。ずいぶんなお歳ではないかと思ったのですが91歳とは驚きです。そして27曲も?素晴らしいですね。まだあの素晴らしい声が出ていましたか?
観客のおばあさまが心配するのもわかるような。
彼のパッと腕をあげるしぐさが流行っているのわかるような気がします。私までやってしまいそう(笑
Commented by majani at 2017-10-25 04:44
otenbaseniorさま
お転婆さん、こんにちは。
そしてアメリカにお帰りなさい!
91歳でも歌詞を忘れることなく、相変わらず素晴らしい歌唱力でした。
最後の曲で(Fly Me to the Moon)マイクが切れてしまっても
そのまま歌い続け、広~いホールですが声がしっかり通っていました。
プロですねえ。
トニーの物まね、コンサートがあって他の家庭でもちょっと流行ったと思いたいです。
名前
URL
画像認証
削除用パスワード


カリフォルニアで博士号取得後、ニューヨークにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、お出かけの記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


by majani

プロフィールを見る

カテゴリ

全体
言葉と物
旅に待ったなし
院生リンボー
食べる人々
動物王国
絵葉書もどき
ナンデモアリ
未分類

以前の記事

2017年 12月
2017年 11月
2017年 10月
more...

Like what you see?

ランキングに参加しています。
ハリネズミと蛙をクリックしてね。




ブログランキング・にほんブログ村へ


にほんブログ村 海外生活ブログへ
にほんブログ村 海外生活ブログ サンフランシスコ・ベイエリア情報へ
にほんブログ村 海外生活ブログ 海外留学(アメリカ・カナダ)へ
にほんブログ村 海外生活ブログ 国際生活へ

ライフログ









タグ

最新の記事

初雪
at 2017-12-11 08:28
本とブラインドデート
at 2017-12-08 09:16
スタンドパイプ探し
at 2017-12-05 05:33
感謝祭がやってきた
at 2017-11-30 04:24
感謝祭がやってくる
at 2017-11-18 09:45
チキンスープとクリングル
at 2017-11-07 03:27
ビートジュース
at 2017-11-04 06:17
テイクアウトのメッカ
at 2017-10-26 05:06
トニーベネット
at 2017-10-23 02:44
ベーグルの街
at 2017-10-14 02:55

最新のコメント

lanovaさま、こんに..
by majani at 12:12
BBpinevalley..
by majani at 12:11
お久しぶりです。 こち..
by lanova at 10:22
ニューヨークの雪景色、綺..
by BBpinevalley at 06:39
heididayoさま ..
by majani at 00:51

記事ランキング

ブログジャンル

海外生活
旅行・お出かけ

ブログパーツ

検索