カテゴリ:動物王国( 15 )

街中のタタンカ

サンフランシスコの街のど真ん中で、北米最大の哺乳類がのんびりと暮らしていることを最近知った。アメリカンインディアン部族のラコタ族が「タタンカ」と呼ぶアメリカンバッファローのことだ。

それがゴールデンゲートパークにいるのだというからビックリ。植物園のついでに、街中のタタンカに会いに行ってきた。

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ゴールデンゲートパーク内。このすぐ近くにバッファローがいる。

同じゴールデンゲートパークでも、花のコンサーバトリーから徒歩45分かかる場所にタタンカはいるらしい。面倒くさがり屋の私たちは車で移動して、広い公園に再び踏み入った。

しばらくして、黄色い野花が咲く原っぱに出た。なんだ、タタンカいないじゃない、おかしいなとウロウロしていると、原っぱのぽつぽつと茶色い物体が微かに動いているのに気が付いた。

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何だか気が抜ける光景である。5、6頭のバッファローが、行き交う人たちに冷たく無視されながら、のそのそと野原を散歩している。群れを作るものだと思っていたが、6頭ぽっちじゃ群れが作れないのだろうか。

タタンカってけっこうコミカルなんですね。一頭、一頭が、道に迷ったかのように無闇にウロウロしている。かと思えば、急に何かを思い出したのか一頭がドドドドドと走り出し、それにつられて他のバッファローも(違った方向に)ドドドと駆け出す。すると今度は、アレなんで走ってたんだっけ?という感じで、パタリと停止する。

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子供の頃、カナダのアルバータ州で過ごした夏休みを思い出した。

アルバータ州カルガリー出身の家族友人に招かれて母と行ったのだが、大自然のアルバータは都会っ子の子供にとってかなりツマラナイ田舎(大人になった今、再訪したら感激すると思う)。友人の年齢が近い息子と最初は張り切って遊んでいたものの、私たちはすぐ退屈し始めた。家族友人は気を遣ってくれたのだろう。親しい友達がバッファロー牧場を運営しているので(今思えば不思議な友人がいるものだ)ちょっと遊びに行ってみないかと提案された。

カナダの牧場で初めて見たバッファローはトラックのように大きく、ひん曲がった背中にボロボロになった茶色い絨毯を無造作に乗せているような奇妙な姿だった。

牧場の気さくなおじさんが、どうだい、餌をやってみたいかいと言った。小心者の私はそうでもなかったのだが、大人たちの「是非やってみなさい」というキラキラした視線の下、「ハイ、では」と小さく答えた。

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柵に近づくとバッファローが何頭かこちらにやってきて、お面を被っているような巨大な頭をゆっくりと振る。馬に餌をやるときと同じ法則で、手を平らにしてバッファローに差し出すのだと教わった。これがすごく怖い。いかにもおつむが弱そうなだけに。

そおっと野獣のごつい顔に手を近づけると、バッファローは助走(?)を付けすぎたのか、私の腕を肘が見えなくなるまでごっそり口に含んだ。噛まれたわけではないが、びっくりして腕を引き出すと餌は消えていて、肘までビッチョリ、白く曇った臭い唾液がまとわりついていた。

後で皮膚が真っ赤になるまで腕をゴシゴシ洗ったが、私は一日中バッファローの強烈なよだれ臭を放っていた。ひどく熱く感じたバッファローの口の中の感触は今も明確に覚えている。

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後日、6千年前からバッファロー狩りが行われてきたヘッド・スマッシュト・イン・バッファロージャンプ(Head-Smashed-In Buffalo Jump)というユネスコ世界文化遺産に登録されている史跡を訪れた私は、ささやかなリベンジとして、史跡の近くでバッファローの肉を使ったハンバーガー、「バイソン・バーガー」を食べた。

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ゴールデンゲートパークからバスで戻ってきた。たまたまバッファローの絵が描いてあるワインを見つけたので、その夜はバッファローのジンファンデルで乾杯。味は、まあまあ。

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でもコルクが可愛い。

ゴールデンゲートパークに住むバッファローたちは食べられる心配なく、サンフランシスコ動物園の係の人たちにちやほやされながら一生を過ごす運命。

街中のタタンカは、今日もおかしな茶色い絨毯を背中にのっけて散歩をしている。




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by majani | 2017-06-22 13:14 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

夕方の散歩道

少し涼しくなった夕方、散歩に出かけた。

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フェイスブックの近くの Bedwell Bayfront Park。

工業地域に挟まれた、160エーカーある鳥のオアシスだ。遅くまで明るい6・7月は、毎日夜9時まで開いている。

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リルケとお互いの研究について話し合いながら歩く。歩きながらだと閃きがあると、誰かに教わったような?

私より背の高い草が揺れる姿は、月に手を振っているように見える。

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水が多いエリアで、ダイサギなどが姿を見せる。

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地面に巣を作るアナフクロウもこの公園に住んでいるらしいが、残念ながら一度も見たことがない。

ピックルウィードが 生き生きとしている。

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帰り道。八時を過ぎてもまだ明るい。

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夏になると、晩御飯を食べてから散歩に出かけることが多い。

パロアルトの Baylands Nature Preserve は小鳥が多くて、特に気に入っているお散歩スポット。以前も、写真を何枚か載せました。

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インフォメーションセンターの建物の周りを歩いていたら、視線を感じた。ふと見上げると、

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小鳥です。巣の中から、早くあっちに行ってくれないかナと、私たちの様子を窺っている。真正面から見るとちょっとマヌケなお顔が可愛い。

もうすぐ、夏休み。

Bedwell Bayfront Park
https://www.menlopark.org/Facilities/Facility/Details/Bedwell-Bayfront-Park-6

Baylands Nature Preserve
http://www.cityofpaloalto.org/gov/depts/csd/parks/preserves/baylands.asp





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by majani | 2017-06-06 07:24 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

コヨーテヒルズ

フリーモントのコヨーテヒルズ公園で散歩をしてきました。

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雲一つ見当たらない、吸い込まれそうな青い空に恵まれた。

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色々な水鳥がグワグワとお喋りをしている。

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ピックルウィードのどこかに、親指サイズの可愛らしいネズミが潜んでいるはず。一度見てみたい。

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銀色のキツネも姿を見せるらしいのですが、この日は残念ながら現れず。

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トレール沿いにバードハウスが設置されている。写真の左側に見えるグレーのものがそう。

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ツバメ(かな?)たちは人間が近づいてもお構いなしで、慌ただしく巣作りに励んでいた。

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一方、この小鳥はじっと休憩中。

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まっすぐなトレールを離れ、丘を登ってみる。

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緩やかに見えるのに、息切れしてしまう。運動不足です。

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飛行機雲がかすかに残っている。

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帰り道の橋で、私たちの前を歩いている帽子を被ったおじさま二人組が、ある論文についてじっくり話し合っていた。私もリルケとこうやって仲良く論じ合いながら、これからも散歩をしていきたいな。

遅い時間まで、明るかった。春本番です。



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by majani | 2017-03-30 09:29 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

ハーバード自然史博物館

ロンドンからナンデモアリフォルニアに戻ってくる途中、ハーバード大学に寄り道をすることになりました。

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久々の東海岸・ニューイングランドらしいキャンパス。

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UCLの動物博物館に次ぎ、ハーバードの自然史博物館を訪れる。

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まずは Glass Flowers の展示室に入る。ドレスデンのガラス工芸家、レオポルド・ブラシュカとその息子ルドルフ・ブラシュカによる「ブラシュカ製ガラス模型」の世界最大のコレクションがここハーバード大学の自然史博物館にある。

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部分拡大されたベ二ハナインゲンの模型。ハチによる授粉の様子を精密にとらえている。

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ブラシュカ親子の工房は19世紀後半から20世紀半ばに向けて、ヨーロッパとアメリカの博物館や教育機関のためにガラス製の生物模型を作っていた。例として、前回紹介した University College London のグラント博物館が保有するクラゲやウミウシの模型もブラシュカガラスだ。

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このカシュ―は年中、実が生っている。

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次の「進化の部屋」に進むと、おどけた顔のこんな子が。

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虫の世界の食生ピラミッド。ベジタリアンの方が基本的に派手?

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古脊椎動物学の部屋にのこのこ入っていくと、12メートルにも及ぶクロノサウルスが大きな笑顔で出迎えてくれた。クロノサウルスと二人きりの部屋は静かで居心地が良い。

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新生代の部屋にはマストドンや、

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巨大なナマケモノ(右奥)やサイとカバのあいの子のような奇妙な哺乳類の化石。真ん中の動物はアルマジロに似ているような、似ていないような・・・。

当時、南アメリカ大陸は海で囲われていたため、他の生態系と関わることなく、まさしく bizarre な、不思議な動物がどんどん進化していったのですね。

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現代の動物は地域別に標本がアレンジされている。南米・アマゾン熱帯雨林の動物が特に面白い。普通サイズのナマケモノがにっこりしている。

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哺乳類の標本は大きい分インパクトがあるが、鳥にも是非注目したい。威厳のあるタカにちっぽけなハチドリ、エメラルド色のフウキンチョウから一見地味なシジュウカラまで、多様な鳥の標本が保有されている。

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ダーウィンはガラパゴス諸島に生息するフィンチの多様性に進化論のヒントを得たとか、所々に丁寧な説明がある。

よくできているなあ、教育的だなあと感心していたところ、大泣きをしている子供がこちらにかけてきた。死んでいる動物ばかりで怖くなってしまったようだ。無理もない・・・。

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大型の哺乳類が集まる部屋。いよいよ博物館のフィナーレです。

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吹き抜けになっている二階に上がると、クジラの骨を間近で見ることができる。

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二階の壁に展示されているのは主に鳥の標本。

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私が特に気に入ったのは、杏子色のへんてこりんなアンデスイワドリ。

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シンガポール以来会っていないオオサイチョウと再会する。

そして・・・

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・・・ラマがいました!



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by majani | 2016-12-23 09:18 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

奇妙なロンドン

最後に、ロンドンの奇妙な博物館を二件紹介する。

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ベンサムのオート・イコンを拝み損ねた後、University College London の Grant Museum of Zoology に向かった。

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恐竜の化石、クアッガやドードーなど最近絶滅した動物の骨、普段見られない深海魚やウミウシのホルマリン漬け動物標本などで溢れかえる動物学の博物館だ。ちょっと変わっている生き物が大好きな私にはたまりません。

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博物館で「人気がある」展示物に、瓶にぎゅうぎゅう詰めにされた18匹のモグラ等があります。とにかく不思議な空間。上はモグラほど気味悪くない、始祖鳥の化石。

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後ろに写っているのが、ドードーの骨(の一部)。手前はワラビーの胎児と、絶滅したとつい最近まで思われていた、オーストラリアに生息する central rock rat の標本。

動物学を専門とするUCLの大学院生が受付や説明係を任されている。こんなことやらされてなんて不憫な大学院生なんだ!とリルケは可哀想がっていたが、大学院生は自分の分野について話すのが好きだから、ぴったりな仕事だと私は思う。

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ガラス製の模型も充実している。標本や模型は、動物学・比較解体学の教育に使われる。

募金をすると動物の標本を adopt、すなわち「養子にする」ことができる。年間20ポンドで、ウミウシの親になれるのです。

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さて、UCLから少し離れたLondon School of Economics に用事があり、帰りに近くのカフェ Fleet Riverでほうれん草とチーズのキッシュとバーリーサラダをむしゃむしゃ食べる。学生の街は若いエネルギーがあって、こちらも元気が出ます。

教授とマリルボーンでワインを飲む約束をしているが、Sir John Soane’s Museum に寄り道。18世紀から19世紀にわたり、イギリス人建築家ジョン・ソーンがヨーロッパや北アフリカのあちこちで収穫してきた建築物の破片、彫刻、工芸品、絵画、骨董品などが、家中にざっくばらんな感じに飾ってある。

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古代エジプトのサルコファガスから、ウィリアム・ホガースの18世紀の連作油彩画―手あたり次第拾ってきたのではないかと思わせる多様なジャンルの美術品。

ソーンの邸宅がそのまま博物館になっているのだが、この建築がまた面白い。狭い入口を抜けていくと、ありとあらゆる所に階段や小さな廊下があり、くねくねと階段を上ったり下りたりしていると、いつの間にか隣のフラットの中にいる。メジャーな大英博物館やナショナルギャラリーとは全く雰囲気が違う、迷路のような美術館・博物館だ。

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これでロンドンともお別れ。まだこの街に住むかどうか決めていませんが、有意義な旅でした。

ロンドン「下見旅行」おわり。



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by majani | 2016-12-22 08:00 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

エルクの愛の仕草

エルクの愛のしぐさを学ぶために、ポイント・レイズに出かけた。

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サンフランシスコのさらに北にあるポイント・レイズは、牡蠣がその場で食べられるオイスター・ファームや、新鮮な乳製品が手に入る広大なフリーレンジの牧場などで知られている。しかし小さな半島の一角には、和香に草を食べて過ごす牛以外に大きな動物がいる。ナンデモアリフォルニアにしか生息しない大型の鹿、トゥール・エルク(tule elk)だ。

エルクがどうしても見てみたくて夢にまで出てくるようになったと言うヘブンフィールドさんとポイント・レイズ・ナショナル・シーショア国立公園を訪れた。

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Point Reyes National Seashoreでは年中エルクが見られるが、往復で15キロ程あるハイキングトレールは海岸沿いの冷たい風にさらされる部分もあるので、暖かい時期が一番快適。

もっとも、8月上旬から9月いっぱいはエルクの愛の季節。繁殖期を迎えたエルクの奇怪な求愛行動や、「ラッティング」(rutting)と呼ばれるオス同士の戦いが間近で見られる時期である。


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ラットが見られるかワクワクしながら、ハイキングトレールの入口にある古い牧場を目印に車を停める。

靴を履き替えていると、いきなりエルクのグループが丘の上に現れた。こんなにすんなり見つかってしまっていいものなのか。少し遠い場所にいるので、とりあえずトレールにのってハイキング開始。

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レッドウッドのハイキングトレールとは全く違う雰囲気。遠くに見える岬は霧がたちこめていてハッキリとしない。

木陰がないトレールだから帽子と日焼け止めは必需品。けっきょく両方とも忘れてきて、一番暑い正午にのこのこ歩き出した。この日は曇りがちで荒涼とした風景に感じられたが、かんかん照りの中15キロも歩いていたら辛かったと思う。

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エルクのお尻は白い。

トゥール・エルクは様々な危機を乗り越えてきた野生動物である。昔はナンデモアリフォルニアで幅広く見られたが、州の開拓と共に乱獲により19世紀後半になると絶滅の危機に追い込まれてしまった。70年代の保護運動に伴い、マリンカウンティのポイント・レイズ・ナショナル・シーショア国立公園を含む数か所にエルクの保護地区が設けられ、現在は健全な数に戻りつつある。(最近の干ばつによる影響が懸念されているが。)

・・・それにしても、絶滅しかけたとは信じ難い勢いでポコポコと現れるエルク。

エルクは群れで行動する。上のように、一頭の強いオスが沢山のメスを連れて、つまりハーレム状態のグループを率いる。弱いオスはオス同士のグループでいるが、チャンスを見計らってハーレムを奪いに行くことがある。立派な角をぶつけ合い勇敢に戦うも、挑戦者に敗れたオスはハーレムを譲る。悔し涙を流したり、可愛いメスを侍らしていた古き良き時代を思い返したりするのだろうか。エルク社会は厳しい。

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たまに、もどかしいお年頃のオスを目にする。ハーレムを離れるには若すぎるが、お母さんにずっとくっついてるのも格好悪い。角が生え始める頃だけど、ちょっと変に生えちゃったりする。人間でいうと、ニキビが出だして自意識過剰になっている中学生か。

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一方、こちらは池の近くにいた小さめのハーレム。オスは一生懸命一頭のメスを追い回すが、全く相手にされない。逃げ回るのにウンザリしたメスはぺたんと草の中に座り込み、完全拒否体制に入る。そんな気分じゃないらしい。

それでもオスは積極的に求愛し続ける!メスが一瞬気を抜くと、すかさず彼女の尻をペロペロ舐め始める。するとメスは「やめてんか!」という顔をして嫌がる。やめたふりをして、またペロペロする。

「あの舌・・・なんだか気持ち悪いですね」

と見ているこちらもオスに嫌気がさす始末。時折、「えへえへ」と鳴くオス。

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ぺろぺろ。やめれ。

面白いのでしばらく観察していると、オスがだんだん悲しそうな表情になってきた。エルクって意外と表情豊かなんだなあと感心していると、オスはじれったそうに、いきなり「きょえええええ!」と鳴いた。びっくりするほどのボリュームで、こだましている。

好きな子に拒まれた悲しみの「きょえええええ」だと思っていたが、後に他のエルクのグループを観察していると、どうも他所のオスが近づいてくると出す鳴き声のようだ。ホルンの音色の様でよく響く。それはラットする前段階の雄叫びで、次に両者はどんなもんだーいと角を見せ合い、無駄な怪我を負わないようにお互いの強さを見極めている様子である。

何回かこういう場面に出くわしたが(死角から急に車サイズのオスが飛び出してくるとかなりコワイ)、いずれにしても挑戦者が「ヤベ、あいつ思ったより強いんじゃね?」と引き下がっていき、格闘に至らず。ハーレム奪回の決定的な瞬間は見られなかったが、まあ平和が保たれてよし。

可笑しいのが、オスが吠えたりケンカを売ったりしている大騒ぎの中、ハーレムのメスたちは見守るわけでもなく、完全に無視してあちらで黙々と草を食べ続ける。自分たちの将来が一瞬にして変わるかもしれないのに、この平常心(?)は凄い。気が付いたらハーレムのリーダーが変わっていた、なんてこともあるのかな。

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半島の先まで来ると、土が砂に代わり、二時間サスペンスらしい崖っぽい場所に出る。エルクの姿は消え、今度はピンと背筋を伸ばした沢山の鵜(ウ)が岩に座っている。ここがトレールの終り、折り返し地点だ。見晴らしの良い場所を選び、好奇心旺盛なカモメに見張られながらおやつを食べて脚を休ませる。

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帰りは人間にほとんど会わない。野生の七面鳥やウズラがまだ餌を探していて、小さなねずみやジリスも草むらの中を駆け回っている。動物の気配がずっとするトレールだ。

エルクも夕方が食事時なのか幾分か活発になっている様子で、道を通せんぼしていたりする。近くにいるとぷんと野生の動物の匂いがし、そろそろ避けながら歩き進むとエルクは大きな白い尻を振って急な谷間を駆け下りていく。

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道を通せんぼしていたメス二頭のうちの片方。私たちが側を歩いていても萎縮することなく、美味しいものを探し続ける。

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あ、目が合っちゃった。モグモグしながらじっと見つめられると、何だか落ち着きません。

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夕方、車を停めた場所に戻ってくると、道の真ん中に怪しい物影が。

「マウンテンライオン?!」とヘブンフィールドさんが喜んだが(危ないのにずっと見たがっている)身体が一回り以上は小さい。顔がお面のように険しく、ずんぐりした大型のネコだ。一瞬のことだったが、ボブキャットではないかと私は思った。ヘブンフィールドさんが駆け寄っていくと(危ない)ボブキャットらしき獣はギクリとして、そそくさと道を渡って逃げて行った。



Or me.

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by majani | 2015-09-11 14:58 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

再びあの森へ

それは普通の水曜日。一年近く経ち、リベンジの時がやってきた。

バナナスラッグが住む森にまた挑むのである。

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去年の秋、ヘブンフィールドさんに連れて行ってもらった時は、思いのほか高度の変化が激しく、運動不足で喫煙者でもあった私は死に絶えるのではないかと思った。最初は可愛らしかったバナナスラッグも凄まじい数で現れ、この世の終り感を演出。ここで倒れたら巨大ナメクジに食われるのだとめっきり弱気になったところ、ハイクが終了したのであった。今年は、殊に手術以降は、健康維持に(珍しく)気を使っているし、禁煙も(まあまあ)続いているし、運動も(人に言われて)いそいそとやってきた。それにキャメルバック(ラクダのコブ)というブランド品の優れた水筒まで備えている(ヘブンフィールドさんの)!

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プリシマ・クリークの森に到着。

バナナスラッグの居住地、Purisima Creek Redwoods Open Space Preserve は山の方からレッドウッドの森に入る方法とハーフムーンベイの海側から入る二つがある。前回は Skyline Boulevard からずっとプリシマの小川まで下る方法で痛い目を見たため、今回はビーチ側から潜入。元気なうちに山を登り、トレールを一周ループして最後にまた下ってくる作戦である。Higgins Canyon Road が Purisima Creek Road にあたる西側の入口に車を停め、森の中へ。

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まだ暑すぎるのか、バナナスラッグは二匹しか見なかった。それも細々としていて、去年見たものと比較すると色も何となく薄い。

バナナスラッグは夏の間は木の葉にくるまったり倒れ木の穴に入り込んだりして、身体が乾燥してしまわないようにしている。ナンデモアリフォルニアが実際に秋めいてくるのは10月半ばから11月にかけてで、それもあっという間に過ぎてしまう短い秋である。バナナスラッグ日和になるのはまだ少し先だ。

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干ばつで山火事が頻繁なナンデモアリフォルニアだが、小川が流れる森はしっとりと湿気がある。

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道端で作り物のようにテカテカしたイモリの一種に遭遇。カリフォルニアイモリの仲間?濡れた身体は光沢感があり、そっと近づいて見ると模様が何となく毒々しい。

「全然逃げようとしませんね」

たしかに、私たちはいつも動物に逃げられてばかりいるが、イモリは澄ました顔にカメラをぐっと近づけてもピクリともしない。死んでいるのではないかとヘブンフィールドさんと話していると、後ろから短パンのおじいさんがガシガシやってきて、

「やあ、何を二人で騒いでいるのかと思ったら、ただのイモリか!」

おじいさんは妙に軽装で、脚と腕の干し柿のような素肌が丸出しである。近所の人だろうか。呆れている様子なので、こちらもつい、「はあ、見るのが初めてなので」と恥ずかしそうにしたら、

「私はもう何百匹ものイモリを見てきたが、これほど大きいのは珍しい」と言う。

本当かどうか知らないが(何百匹はすごい)ちょっぴりラッキーな気分にしてくれたおじいさんは、手を振ってさっさと先に行ってしまった。その後も何度も立ち止まったので追いつくことはなかったが、イモリごときで大騒ぎをする変なアジア人観光者だと思われたことだろう。

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しばらくすると森が開けて、レッドウッド以外の木々やハックルベリーの茂みが目立ちだす。ツタウルシに触れないよう気を付けながら進む。

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海も遠くにチラホラ見え、単調にならないのが良い。しかしイモリのおじいさん以外、誰にも会わない。

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去年はここまで来て引き返したのを覚えているが、今回は12キロ程度のトレールを歩き切った。

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帰りにハーフムーンベイの町に寄り道。以前から目を付けていたグリルチーズサンドのフードトラックに寄るが、残念ながら水曜日はお休みだ。ベーカリーでクッキーを買い、海が眺められるベンチでおやつを食べる。

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夕方、ビーチの近くでヤギが草刈りに貢献している。半分だけ毛刈りをされた半裸の羊も混じっていて、私たちが歩いて通ると濡れた眼でじっとこちらを見つめていた。

ハイク、無事終了。リベンジが果たせたことにしておこう。



Or me.

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by majani | 2015-09-09 11:53 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

紅茶とワラビー

シンガポール旅行記の続き。20年ぶりに、世界的に知られるシンガポールの動物園へ。

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シンガポール動物園の長所は、檻や柵を使わず、動物を堀で囲むなどして展示していること。泳げる動物はちょっと厄介で、その昔は「動物園からカバが逃げました」とかたまに聞いたけれど、最近はこんなハプニングはないのでしょうね。野生のクジャクもそこらをのこのこ歩いていたりするので楽しい。資金不足の動物園にありがちな、小さな檻の中を行ったり来たりする哀れな動物は、ここに(ほとんど)いない。

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動物園は三つある。日中の動物園、夜行性の動物の生き生きとした姿が見られるナイトサファリ、そして世界の河川に生息する生き物を中心とするリバーサファリ。リバーサファリは比較的新しいので、私がシンガポールに住んでいた頃はまだ存在しなかった。また、忘れられがちだが、北西のジュロンの方に、動物園と同じ会社が経営しているバードパークというのもある。

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学会の後なので、夜の動物園、ナイトサファリへ。親とピーターパンさんと待ち合わせ、ゆっくり中華を食べた後の出発だ。入口では、ずんどこずんどこ音楽が流れており、「これ聴いてると、なんだかワクワクしちゃいますね!」とピーターパンさん。

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ナイトサファリの戦略はこうだ。まず、園内をぐるりと一周するトラムに乗り、ガイドさんの面白くないあまりに思わず笑ってしまうジョークを聴きながら、目ぼしい動物を一気に見る。ガイドは暗闇の中で動物を見つけるのに慣れているので、石の上になんちゃらが座っているとか、木の手前になんちゃらが寝ているとか、すぐ教えてくれるのが良い。

次は徒歩でトレールを辿り、トラムから見られない動物をじっくり観察する。世界最小(だったかな?)の鹿の仲間、ディクディクが見られるフィッシングキャットトレールや、ワラビーが前をぴょこぴょこ横切るワラビートレール等。ピーターパンさんは、初めて身近で見る愛くるしいモモンガに心を奪われ(でも本当に暗闇の中ぴゃっと飛びついてきたら怖い)、私はマレーバクのふにゅふにゅした唇(鼻?)に興奮。暗い中で、ぼーっと突っ立っているサイも、何となく味わい深い。

最後にアンフィシアターで Creatures of the Night という動物ショー(これ、脚本が上手い!)を観て、都心に戻るバスに乗ればバッチリ。オーチャードロードへ戻る最終バスは11時に出てしまうが、ナイトサファリは深夜まで開いているので、タクシー乗り場でしばらく待つ覚悟をして、最後まで歩きまわっていたい。

都心に戻ってきて、 St. Regis Hotel の Astor Barブラッディメアリーの激辛シンガポール版、Bloody Padi Mary をちびちび飲みながら、翌日の研究発表の練習に取り組んだ。重要な発表の前夜にナイトサファリなんかで遊ぶんじゃなかった、なんて全く思わない。それくらい面白かったのです。

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後日、新しいリバーサファリへ。手足があるような奇妙な淡水魚を色々見た。

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例えばこの魚。ちょっとマヌケな笑顔が、チャーミング。

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ジュゴンのサラダバー。

川魚や爬虫類だけだと淡泊だと経営者が考えたのか、哺乳類もいる。レッサーパンダ(川の近くに住んでいるのか?)、ジャイアントパンダ(これも謎)、アマゾンの熱帯雨林に住む様々な種類の猿、ジュゴンなど。ピーターパンさんと、頭上の木の枝に座っているオマキザルを見上げていたら、おしっこをかけられそうになった。

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レッサーパンダも食事中。

動物園(日中の方)の裏側からキリンなどが遠目に見える遊覧船と、もう少し遊園地っぽいボートライドがある。遊園地っぽい方は、南米のアマゾン川地帯に住む生き物が、ボートの両脇で個々の「ハビタット」にいる。

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ここでもやはり檻を使っていない。絵の具で塗ったように紅いショウジョウトキ( scarlet ibis )や、ひょいひょい木を渡るホエザル( howler monkey )がどうして逃げてしまわないのか、とても不思議に思う。ジャングルの猛獣、ジャガーはさすがにガラス張りの檻に入れられていて、少し可哀想だった。

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バードパークの涼しげな滝。

まだまだ続く。オオサイチョウが見たかったので、とうとうジュロンバードパークまで行ってしまった。

オオサイチョウとは、羽を広げると1.5メートルを超える鳥で、長いまつ毛と、間違えてバナナをくちばしに乗っけてしまったような(バナナスラッグにも見える)可笑しな頭が特徴的である。自然に発生するのかよく分からないが、クジャクと同様、普通の住宅街でオオサイチョウや帰化してしまったコカトゥーを見かけることがある。

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カンムリバトを追っていった。グレーがかった紫色の美しい羽にふっくらとした個体、ルビーのような赤い目、そしてもちろん放射状に広がる見事な冠。こんなに派手なものがインドネシアの森林をとことこ歩き回っていたら実に神秘的だ。残念ながら絶滅のおそれのある鳥で、沢山はいないらしい。

僅か数日間で、セントーサ島の水族館、ナイトサファリ、リバーサファリ、更にバードパークを訪れている。(そうそう、あと学会ね。)私は大学院生という無責任な立場にあるが、会社勤めのピーターパンさんは東京から週末だけ来ていたので、随分ファイトがあると思う。

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やっとここで核心の話に移る(と言っても大した話じゃない)。

2008年だったかな、The New Yorker 誌のウェブサイトで「紅茶とワラビー」というオーディオスライドショーを観た。インターネット検索しても見つからなくなってしまったが、たしか世界中を駆け巡る報道写真家の、たまに質素でたまにヘンテコな食事を紹介するスライドショーだった。実に印象的だったのが、オーストラリアで好奇心旺盛なワラビーに囲まれながら、優雅に紅茶をティーカップから飲むフォトジャーナリストの写真である。(英国人だったのかな?)ハイソサエティーな紅茶と野生のワラビーという奇想天外な並置だからこそ、面白い。それに英語だと tea and wallaby になるから、上手く韻を踏んでいるんですね、これが。

紅茶とワラビーほどヘンテコな展開にならなかったものの、ジュロンバードパークでホロホロチョウや何となく臭いフラミンゴを見た後、タクシーに乗り込んでマリーナベイサンズの紅茶専門店 TWG に向かった。

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マリーナベイサンズとは例の船みたいなのが上に乗っているビルである。高級ブランド店が並び、カジノまである。建物の中に細い運河(?)が流れており、ラスベガスの真似をしたのか分からないが(ラスベガスはベネチアの真似をしたのか?)、シンガポール人が観光客を乗せてゴンドラをきしきし漕いでいる。リバーサファリでボートに乗ってきた私が言うのもなんですが、不自然だなあ。

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TWG の紅茶は土産物として人気。店で色々な紅茶の香りを嗅ぎ、気に入ったものを選ぶといいが、缶のデザインで決めるのもよし!店員に訊くと、こちらの方がベルガモットが強いとか、これはバニラが入っているとか、細かく教えてもらえる。隣の喫茶店は土産物として売っていないティーが何十種類も揃い、上品なスコーンや、耳がきちんと切り落としてあるティーサンドイッチなどと一緒に、「文学的な紅茶」などと面白い名前が付いているお茶が楽しめる。

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ぎゃあぎゃあ騒いでいたオウムやコンゴウインコたちの世界から、一気に文明社会に戻ってきた感じだ。私はお土産に買ったオウムのぬいぐるみを持ち歩いているのが急に恥ずかしくなり、父のリュックに無理やり詰め込んだ。

「バードパークから乗りつけた観光客はそういないと思うよ」と父。自慢しているのか呆れているのか、曖昧である。

父は人知れずオウムを背負い、嬉しそうにダージリンをすすっていた。


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by majani | 2015-06-21 09:16 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

ふらりと、塩辛い場所

最近、塩辛い場所に凝っている。

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私が住んでいるざ・ふぁーむ周辺は、湿地がそこらじゅうに広がっていて、身近で面白い生態系を観察することができる。殊に塩沼(ソルトマーシュ)のような汽水域は、豆粒のようなハチドリから、軍艦のように進行するペリカンまで、様々な鳥を呼び寄せる。

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サンフランシスコ、ベイエリアの海岸と塩沼地帯をなぞるベイ・トレール(Bay Trail)を毎週末、少しずつ歩くようにしている。手術を受けてからフニャフニャになってしまった筋肉のリハビリを兼ねて、研究のアイディアを生み出すのにちょうど良い気分転換になっている。ベイ・トレールの緩やかな道は、バナナスラッグが住む森とは勝手が違う。

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Baylands Nature Preserve ではイソシギやカモメ、真っ赤な長い足でひょこひょこ歩くクロエリセイタカシギ、アオサギ、ツバメ、トゲオヒメドリなどが見られる。Harriet Mundy Marsh の方角へ歩いてゆくと、セイリングステーションの看板があり、小さな女の子とお父さんが二人乗りのカヤックを水に下ろしている。

ここで、愛鳥家の間で peeps という愛称で知られる、小ぶりなアメリカヒバリシギ(least sandpiper)の群れが忙しく何かを食べている。日本語のウィキペディアのページによると、「〈クリィーッ〉、〈プリーッ〉などと鳴く」そうだ。だから日本語は楽しいですね。

もっとも、私たちが見たのはプリーッのプの字も出さず、黙々と食事を続ける。

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小さな池を通りかかると、尾と翼の先が尖っている鳥を発見。滑らかな白い体に、黒い帽子を被った頭、朱色のくちばし。アジサシという海鳥の一種で、側をヨタヨタ歩いているカモメに比べると、スマートな容姿だ。空中で一定の場所に留まり、頭を下の水面に掲げている。急にピシャッと水に落下したかと思うと、銀色の小魚をくわえて再び空へ。これを一定のリズムで繰り返している。

一方、同じ池で餌を探している大柄なシロサギ。こいつは浅い水の中をゆっくりと歩きながら魚を捕まえなければならない。魚に忍び寄る策略なのか、エネルギーを節約しながら狩りをするタイプだ。しかし空中ダイビングが得意な格好良いアジサシに次々と魚を横取りされて、分が悪い。

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ハーフムーンベイの近くのペスカデーロ・ビーチも塩辛い場所。地帯の移り変わりとその様々な表情が一度に楽しめる、海岸、塩沼、森がごちゃ混ぜになったハイキングトレールがお勧め。

去年の暮れに訪れた時は、これでもかこれでもかという程、沢山の鹿に遭遇。しかし何頭見ても感激は薄れないもの。

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腕を伸ばせば触れるくらいの近さまで来た二頭の鹿は、アイスプラントの中から美味しそうな柔らかい葉を見つけては、それを器用にちぎって食べている。

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ところで、アイスプラント(学名 Carpobrotus edulis )とは南アフリカのハマミズナの一種である。帰化植物としてカリフォルニアの浜辺でよく見かける。地帯が砂っぽかったり岩っぽかったりしても、アイスプラントはその葉と茎をせっせとめぐらせ、黄色やマジェンタ色の大胆な花を咲かせる。

みずみずしい葉は食べられるそうだが、小心者の私は試したことがない。こんな場所に生えていたら、塩辛くなっていそう。

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見た目がピクルスに似ていることから美味しそうな名前の pickleweed を始め、塩辛い場所に適応した不思議な植物の数々。

いずれも生態系のデリケートなバランスを保つ重要な役割を持っているわけであるが、ナンデモアリフォルニアにおける観測史上最悪の干ばつの影響は実に深刻なもので、塩辛い場所の特殊なエコシステムも脅かされている。(カーボンオフセットとか持続可能農業とかにはすこぶる熱心なナンデモアリフォルニア人なのに、節水に関してはけっこう無関心だったりするので解らないものだ。)

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一見雪景色のような、真っ白な塩沼の塩を背景にジョギングをする人。

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ハーフムーンベイのルーザベルトビーチからエルマービーチまで散歩。

ハーフムーンベイというと、何となく霧が立ち込めている海がイメージとしてあるけれど、この午後は優しい光に恵まれ、海辺に並ぶ家の面白い建築などもじっくり見る余裕があった。

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最近、学会で知り合った方とベイエリアの魅力について論じていた。彼女は10年にわたる海外滞在を経て、この夏ようやく地元のサンフランシスコに戻ってくると話していた。ずっと離れていて、一番恋しいと感じたことは?と尋ねてみると、彼女は少し考えて、

「自然…と一言で言うのは簡単だけれど、それだけではないのよね。」

彼女はニューヨークに住んでいたこともあったが、ニューヨーク(州)にだって大自然がある。ただ、街を出て、建物が消え始め、森が出てくるまでに何時間もかかるのだ。木を一本触ったらまたすぐ引き返さなければならない。一日がかりの上、事前に計画しておかないといけない。一方、ベイエリアの良いところは、ゆっくりソーマでランチをしてから、ちょっとビーチで散歩したいなと思いついたならば、ふらりと海に出られるところだ。

この「ふらりと」が重要だと思う。何時間もコードとにらめっこをしているけど全く進歩がないぞ、海に論文を持って行って読書しよう、誰もいないビーチを見つけてみよう、ここら辺のソルトマーシュを散歩しよう、と人を誘って出かけることが多い。ナンデモアリフォルニア人は恵まれていますね。

今は当たり前のようなことだけれど、いつかは私もここを離れて、ふらりと塩辛い場所に行くことができなくなってしまうのである。なので、いつも言っていることですが、旅に待ったなし。

どんどん、ふらりと出かけたい。


Or me.

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by majani | 2015-05-31 11:03 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

バナナスラッグ日和

パリッとした秋がやってきた。

新たなふにゅふにゅ系の生き物を求めて、ヘブンフィールドさんと再び遠足に出かけた。今回私たちが訪れたのはレッドウッドが聳えるプリシマ・クリークの州立公園である。

Purisima Creek Redwoods Open Space Preserve はスカイライン通り Skyline Boulevard )沿いにある。この辺りはレッドウッドが多く、色々なハイキングトレールがあるので、アウトドア派にはとても嬉しい北ナンデモアリフォルニアの一部だ。週末はうねうねしたスカイライン通りを上るサイクリスト達の姿が目立つ。

また、近くには Arlo Guthrie の有名な反ベトナム戦争の曲、Alice's Restaurant に因んだ同じ名前のレストランがある。涼しくなってきているが沢山の人が外のパティオで食事をしている。レストランの外には色鮮やかでピカピカのバイクが並ぶ。

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断っておくが、私は決してアウトドア派ではない。カウチポテトだということは以前立証している。しかしレッドウッドの森は好きだし、自然の中で見つける生き物にも興味がある。今回のトレールは、行きは良い良い帰りは怖いで、下り坂が延々と続くが、ある時点で自分の耐久力に見切りをつけ、引き返して同じ坂道を上ってこなければならない。もう少し下ればもっと良いものが見られそうな気がしてずんずん歩いてしまう、ちょっと危険なトレールである。

プリシマ・クリークのハイキングトレールを歩き始めて5分も経たないうちに、ふにゅふにゅ系の生き物を早速発見。4、5匹集まっている。


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熟したバナナのように見えるため「バナナスラッグ」と名付けられたこの黄色い物体は、25センチほどになる巨大なナメクジの一種である。近寄ってじっくり見ると、体がぬめぬめした粘液に覆われているのが分かる。この粘液はバナナスラッグが呼吸できるよう重要な役割を果たしているとパンフレットに載っている。体が乾いてしまわないように、枯れ葉の下に小さくくるまったりしているのもいる。

すぐバナナスラッグが見つかってラッキーだねえと喜びながら、写真を何枚も撮るが、トレールを歩いてゆくとありとあらゆる所にバナナスラッグがのさばっているではないか。この森はバナナスラッグだらけのようである。天敵はいないのだろうか。

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サルノコシカケや面白い色をした木の実にコメントをしながら森の中へ進む。時々、鳥のさえずりが響き渡る。ヘブンフィールドさんとお互いの研究について相談しあっているうちに、かなり遠くまで歩いてきてしまった。

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そろそろ引き返すことにする。

バナナスラッグはすっかり見飽きてしまって、「またバナナスラッグがいるよ」と指差すこをやめてしまった二人。しかも途中で木が倒れたりしていて、それをまたいで超えたりしているうちに私はすっかり疲れてしまった。

一方、ヘブンフィールドさんはけろっとしていて、こういうときに限って私ばかりに研究の話とかをさせるのである。

「森の中で研究のこと考えるの楽しいですよね!」

とかなんとかお気楽なことを言っているヘブンフィールドさんだが、私の頭の中はバナナスラッグだらけの森で力尽きて死んでしまうのではないかという不安で一杯で、もう研究の話どころではない。最初は喜んでいちいち立ち止まって観察していたバナナスラッグも、沢山いすぎてなんだか恐ろしくなってくる。ヒッチコックの『鳥』のナメクジ版である。

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このまま私が深い森の奥で果ててしまったらヘブンフィールドさんは私を担いで山を登ってくれるだろうか。

「私を見捨てないでくださいね、絶対ですよ!ナメクジに食べられるのは嫌です!」

と念押しすると、今さっきまでエルサルバドルの話をしていたのに一体何のこっちゃという困った顔をされた。


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ふにゅふにゅでぬめぬめのバナナスラッグたちに見守られながら、上り坂をひたすら歩くことさらに一時間、やっと車を乗り捨ててきた入り口まで戻ってこれた。ヘトヘトだけれど、森の熟したバナナに会いに、いつかまた来たい

と思えるようになるのは、少し時間が必要だ。

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by majani | 2014-11-09 18:26 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)


ナンデモアリフォルニアの某大学院で研究中。海外生活、旅、散歩で出会った生き物などの記録です。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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