カテゴリ:ナンデモアリ( 14 )

びっくり

先日、母とサンフランシスコの散策を楽しんでいた。

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イタリア街の店のウィンドウ。

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金融街にある illy のカフェ、Espressamente に入り、

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上手にできたカプチーノと、ラズベリーとレモンのミニ・エクレアを美味しくいただいた。

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中華街にある Wok Shop という店の戦利品。中国は景徳鎮の輸出を最近やめてしまったので見つけたらラッキーだよと店主が話していた。そしてオマケにしゃもじをくれた。


さて、中華街で景徳鎮を買い漁った後に金融街に戻って来たら、裸の自転車ツアーをしている12人くらいのグループに遭遇した。それが本当に素っ裸で、「イェーイ、カム・アンド・ジョイン・アス!」とか歩行者に呼びかけている。そこに一人だけしわしわの老人が混じっていた。寒くないのだろうか。

裸の自転車ツアーは赤信号に引っかかってばかりで、徒歩の私たちは何度も何度も彼らに追いついてしまった。金融街でお尻を沢山見てきましたよ。

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中華街で見たカリフォルニア産アボカドの広告。


母と出かけると、面白いことが起こる。宇宙の法則なんじゃないかと思う頻度で。

また違う日、私はユニオンスクエアのデパート前の混沌としている道を母と歩いていた。私たちの後ろに男、女、女の仲良し若者グループがいるなと何となく意識した。

どうやら男は結婚に踏み切るかどうか悩んでいるらしい。通る太い声で、結婚しちゃうと仕事で色々面倒くさいことがあるからさと話していて、女二人が、うんうん、そうだよねえ、分かる分かると細かく相槌を打っている。母が急に静かになったので、私と同じようにダンボ耳になっているに違いない。結婚すると面倒くさいことが生じる仕事ってなんだろう?

すると、若者グループが私たちと並んだ。てっきり男性だと思っていた悩める若者は、シルクのようなつるつるの長い髪に純白のカチューシャをしていて、リブ編みの小さなタンクトップの胸元が多少膨らんでいた。意表を突かれた母がタハッという表情を浮かべている。トランスジェンダーの子かしら、声だけで頭の中で判断しちゃってたわ、びっくりしたねえ、と恥じらいながら母とコショコショ話をしていると、今度は若者たちのお喋りがパタリと止んだ。

私たちに向かって白いワンピースを着た小柄の女性が歩いてくるのだが、彼女の頭の上に大きな猫が横たわっているのだ。猫は前脚を上手に組み、女性の歩く動作に悠然と揺られながら、澄ました顔で「頭に乗っていますが、何か?」と目を細めた。

カチューシャの若者は呆然として頭に猫を乗せた女性が歩き去ってゆくのを見届けた。そして、「びっくりしたねえ!」と明るく友人たちと笑った。

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どうでも良い話だけれども、家に帰ってきて景徳鎮が包まれていた中国語の古新聞を広げてみて初めて知った。トランプって「川普」と書くんですね。

色々あります、サンフランシスコ。



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by majani | 2017-07-03 05:58 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(4)

グラノーラバーを食べ損ねる

ロードトリップの途中ですが、ちょっと余談。

久生十蘭の短編小説『葡萄蔓の束』で、聖母トラピスト修道院に客として宿泊することになった主人公は、変わり者のベルナアルさんに出会う。困ったことにベルナアルさんはたいそうのお喋り好き。何かに感銘を受けてはついつい沈黙の戒律を破ってしまい、修道僧になれないまま、それでもなお神の愛を信じ続け、社会から切断された修道院でひっそりと暮らす。沈黙に耐えきれなくなり、遠くまで歩いて行っては山や虹に向かって大声で喋りかけるベルナアルさん。

その姿を思い浮かべながら、私も最近まで沈黙と対決していた。親知らずを三本抜いて、話すことを禁じられていたのだ。気が狂いそうだ。少しでも気を紛らわそうと、『葡萄蔓の束』を本棚から掘り出して読み返したら、もっと喋りたくなった。

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台湾の公衆衛生キャンペーンポスター、1959年。Taiwan public health poster, 1959. Public domain.


ざ・ふぁーむ周辺の歯医者は、受付にちょろちょろと水が流れる噴水?らしきものがあったり、安らかな音楽が流れていたり、まるで高級エステサロンのようだ。治療を受けている間はサングラスをかけ、天井に設置された液晶テレビで自由自在に映画やドラマの観放題。

私は現在、三人の歯医者に掛かっており(日本では近所の歯医者さんに全てを任せていた一方、アメリカではそれぞれニッチュな専門家に診てもらうらしいのだが、つまるところ、色々な専門家を要するほど親知らずが大変なことになっていた)、その一人の待合室で面白い物を発見した。待合室のソファの隣に立派なエスプレッソマシンがあり、その側にリップバームや、ナッツとクランベリーが入ったグラノーラバーがバスケット一杯置いてある。

長い間、口を開けていると唇が乾くので、リップバームはまだ解る。けれど、歯に如何にも悪そうなコーヒーや硬いグラノーラバーをこれ見よがしにディスプレイしておくとは、意地悪ぢゃないか。

以前、病院でアイスクリームサンドを食べ損ねましたが、歯医者では美味しそうな(そしてとても高そうな!)グラノーラバーを食べ損ねた上、お喋り禁止の命令を受け、大好きなワインもしばらくお預け。ロードトリップ後の出来事だったから良いようなものの、とても惨めな気分になった。親知らずはさっさと抜いておくべきなんですね。

お喋り解禁の朝、あいにく山や虹はそこらになかったが、私は大声で「おはよう」と言ってみた。ああ、気持ち良い。



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by majani | 2016-02-02 05:38 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

隣は何を

10月のポカポカした日に書き上げて、そのまますっかり忘れていた話をひとつ。

・・・

年に一度、突然私に襲い掛かる「サンフランシスコに引っ越したい」発作。

今は大学のキャンパスに近いアパートメントで暮らしている。静かな並木道やこ洒落たビストロがある素敵な住宅街なのに、私が住む古い建物は壁が非常に薄く、側を電車が通る度にガタガタと家中の物が踊り出す。地震が来たら確実に死ぬだろうと覚悟している。しかし住めば都で、電車の音もお隣さんの子供たちの尋常でない大声も、もう慣れっこだ。

すると最近、向かい側の建物にオーストラリア人男性とアメリカ人女性の若いカップルが引っ越してきた。(私の奇怪なダンスを時々目撃していた憐れな住人が昔住んでいた場所。)

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Ideen von Olbrich (1904), architecture study. Public domain.


彼らはいつも家にいる。何故オーストラリア人とアメリカ人だと分かるかというと、カップルの会話がこちらに筒抜けなのだ。私がリビングルームでパソコンとにらめっこをしていると、買い物リストを作る他愛ない相談から、友人に対する生々しい陰口まで、全てがくっきりと聞こえてくる。とうとう彼らが真昼間から熱中して観ているテレビ番組のテーマ曲を、無意識にハミングするようになってしまった。

あの人たち、いつもソファにごろんとしてるね、とフィアンセ氏までが呆れている。

そうなのだ。秋と言えども、日中ずっと日が差していたアパートは夕方に一番蒸し暑くなり、謎の設計によって、窓を開け放しても何をしても延々とムシムシしている。向かいのカップルも同じ状況にあるらしいが、薄着になって蒸し暑さをただ耐え忍ぶ私に対し、彼らはアパートの扉を全開にする。するとこちらのリビングとキッチンから彼らがソファに寝そべっているのが丸見えなのだ。秋深き隣は何をする人ぞどころか、何をする人か完全に把握できている。

いつもテレビを観ているのは、大富豪で働かなくて良いのかしらん。きっと超文系な大学院生なんだよと彼は言う(私たちも文系ですけどね)。

向かいのカップルは、二人ともやたらに声が大きい。

「ダーリン、あのね、テーブルクロスのことだけどさ」

「なあに、ダーリン!」

「あのね!テーブルクロスのことだけどさあ!」

「ダーリン、私今キッチンで色々やってるから聞こえない!こっちに来て!」

違う建物にいる私にはちゃんと聞こえているよ!ダーリンはテーブルクロスをもう敷いてよいかと訊きたかったらしい。そんなこと独断でよいのでは、と思う。

ある夜、ギャアという叫び声に私はがばとベッドから起き上がった。カップルが大喧嘩をしている。

「ダーリン、いったい何を怒ってるんだい」

「昨日の夜、私を置いて逃げたことが許せないのよ」

すごく気になるけど、夜中に迷惑。寝室にまで彼らの声が漏れてくることが分かった。電車で家が揺れてもぐうぐう寝続けられる私が飛び上がる大音量のケンカだ。

向かい側に睡眠を邪魔されるような家はもう嫌じゃ、サンフランシスコのお洒落なアパートに引っ越してやる、とブツブツ言いながら私はベッドにもぐりこんだ。

こうして今年の「サンフランシスコに引っ越したい」発作が始まったわけだが、ちょうどそのタイミングでサンフランシスコで学会が開催されていて、ほぼ毎日電車で通っているうちに、現実的でないことを改めて実感する。サンフランシスコでアパート探しをした友人の身もつまされるような体験談は何度も聞いたし、同居人を数人探さないと住めない価格だ。金銭的なことはさておき、カルトレインからBARTに乗り換えたりしているうちに、大学まで往復で三時間以上かかってしまう。これが続いたら疲れてしまうだろうな。大学付近で広々としたアパートに低価格で住め、相当恵まれているのに、私はそれをすっかり忘れていた。

学会の最終日に私は思った。今の幸福な環境に気が付かせてくれてありがとう、向かいのカップルよ!私はもう少しこの中途半端な田舎で頑張るぞ。

私が帰宅すると、二人は仲直りをしたようで、ソファに並んでお気に入りのテレビ番組を観ていた。人は見えないところで、役立っている。

まあ、最初から静かにしてくれたならば、それで良かったんですけどね。


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by majani | 2015-12-13 10:48 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

バンジョーだけじゃない

毎秋、サンフランシスコで行われるブルーグラス音楽フェスティバル、 Hardly Strictly Bluegrass に行ってきた。三日間にわたりゴールデンゲートパークのあちこちに設置されたステージで100組以上のアーティストが演奏する。

それにしてもネーミングがいいですね。Strictly bluegrass というと、厳密にブルーグラス音楽となるが、hardly strictly bluegrass だとブルーグラス音楽のみというわけでは全くありません、という意味合い。ブルーグラスは本来カントリー音楽の一種とされているが、ハードリー・ストリクトリーではバンジョーやマンドリンだけではなく、フォークっぽいものからブルーズや少しジャズ調のものまで、多様な音楽が楽しめる。

無料だからか、来ている人たちが若い!アカデミアに長くいて、私が落ち着いてしまっただけかもしれない。

入れ墨にゴテゴテしたピアスはサンフランシスコのどこでだって見るけれど、そこにいる全員がしているとびっくりする。マリファナをぷいぷい吸っている少女や、裸にオーバーオールのおにいちゃんに挟まれて、私もフィアンセ氏と一緒に草の上にごろんとした。好きなバンドがちょうど現れたが、周りは人とマリファナと煙草の煙の海で、ステージは遥か遠く感じられる。草むらでぎゅうぎゅう詰めになり、何だかウッドストックとバーニングマンの間を取ったような雰囲気。煙草の香りを嗅ぐのは、別に嫌いではない。

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しばらくそこで音楽を聴きながらピープルウォッチングを楽しんでいると、若者ばかりではないことに気が付いた。足元で拝みたくなるほど美しい人間が通ることもあれば、むさくるしい髭でビール樽のようにまあるい中年男性がのそりのそりと私を乗り越えて行ったりすることもある。

フィアンセ氏が一生懸命に目を合わせないようにしているのは、上半身に何もまとっていない中年女性。いつの間にか私の隣で胡坐をかいていて、レンガ色に焼けて弛んだ乳房を大きなネックレスのようにして下げ、お友達とごく普通にお喋りをしている。

生でバンジョーを聴くと、元気が出た。


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by majani | 2015-10-18 09:36 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

アイスクリームサンドを食べ損ねる

人生で初めての手術を、カリフォルニアで受けた。今日はその話。

少し前に話した、グランドピアノがある病院で手術を受けることに。私は20代で、寝不足やストレスの波を除けば特に不健康でもないのだが、普段はカウチポテトのくせに、スポーツ選手がよくする脚の怪我を負ってしまった。黒いカウボーイブーツが印象的なざ・ふぁーむの女医の勧めで手術に踏み切った。(手術の日はさすがにペタ靴を履いていた先生。)

初めての手術なので、テレビドラマ『ER』や『Grey’s Anatomy』のイメージが強い。私は担架でガラガラ、バーン!と手術室に運び込まれるのだろうか。

緊急の手術ではないため、実際は平凡な準備が多い。頭痛薬や特定のビタミン剤の使用を一週間前から中止し、抗菌性スポンジで体を洗い、もちろん前夜は零時を過ぎたら飲み食い禁止。当日はアクセサリー・化粧の使用も一切禁止。別に誰に顔を拝ませるわけでもないけれど、私は化粧をしていないとびっくりしたカワウソのような顔になる。お慈悲を、せめて口紅をひとさし~、と病院スタッフに懇願するが、相手は厳粛にゆっくりと首を横に振る。

というわけでカワウソになって術前準備室のベッドで憂鬱な気分になっていると、心細いカワウソに見えたのだろうか、お喋りでお茶目な四人の看護婦に突如囲まれ、ちやほやされる幸運に恵まれる。私の下の名前がたまたまスペイン語でも意味があることを気に入ったらしく、言語の偶然に関してスモールトークをしてくれ、緊張が少し和らぐ。サンフランシスコの話をしたり、暖かい靴下を履かせてくれたり、松葉杖の練習を手伝ってくれたりする。

(一方、通路の向かい側に横たわっているおじさん患者は、時計や指輪を外し忘れていたのを看護婦にうるさく叱られている。アメリカの航空会社のキャビンアテンダントが客に対して厳しい感じと同じように冷淡である。おじさんがぐったりして居眠りを始めると、看護婦がのしのし戻ってきて、今度は彼の腕を剃りあげる。なるほど、腕の手術なのだな。するとしばらくして違う看護婦がやってきて、「全然剃れてない!」とブツブツ言いながら、カミソリで同じ腕に取り掛かる。とても毛深いらしい。プライバシーのためにカーテンを引いてほしい、とも思う。)

また、手術中に目を傷つけないように、コンタクトレンズをはずさなければならない。カワウソに変身するのは些細な譲歩でも、モグラになるのは実に不安である。私の視力は酷いもので、周りの全てがもやもやになる。モグラ状態のままガーニーに乗って手術室に向かうが、テレビドラマと違ってガーニーは音一つ立てず、うっすらと青がかった天井がもやもや過ぎてゆくのを眺めていると、優雅な帆船に乗ってどこかに出かけるような気分だ。案の定、担架でバーン!とドラマチックに手術室に運び込まれる期待は裏切られ、ここもやはり優雅に、おしとやかに入室。

「音楽をかけていてもいいかしら」ともやもやの看護師。明るい手術室の中は、アップビートの80年代ポップがラジオで流れている。5人くらいのもやもやとした人間が、なんとなく音楽のリズムに合わせて、周りで準備をしている。

全身麻酔も初めてだ。効き始めるのに時間がかかるのかと思っていた。しかし100から逆に数えるよう指示されることもなく、麻酔医と一言交わした直後にふと目を開けると、既に回復室のベッドに横たわっていた。気を失う前、麻酔医に「夢を見るのでしょうか」と訊いていた。「夢を見る人もいるけど、見ない人もいる」というあたりさわりのない答えにがっかりすると同時に、麻酔医の少し後ろのほうで私をじっと見つめている執刀医の助手が実に妙な帽子を被っていることを、モグラ状態でありながら認識できたのが、最後に覚えている二つのことだ。

一瞬のうちに6時間も過ぎていた。そして私は夢を見ない人だった。

もやもやの看護婦に話しかけられていることに気が付く。点滴がどうのこうのと言っている。6時間も何も食べず、やきもきしながら待機していた彼氏もいつの間にか隣にいて、心配そうにベッドを覗きこんでいる。しばらくして執刀医も現れ、なんだかよく分からない写真を何枚か見せられる。ここで起きた会話はあまり覚えていないが、後日、「術後室で話したとき、あなたはとっても陽気だったわ!」とカウボーイブーツに戻った医者に指摘される。麻酔にかかると、夢は見ないが、陽気になることが判明した。

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Slaughter, Tom. Untitled (Ice Cream Sandwich). www.exhibitiona.com


アメリカの病院では入院患者にアイスクリームサンドやゼリーが与えられるとざ・ふぁーむ医学部の友人に昔聞いたことがある。

確かに、テレビドラマだと、患者が小さなプラスチック製のスプーンで緑色のゼリーを掬っていたりする。うーん、懐かしの味のゼリーも良いけれど、今何が食べたいかと言えば銀色の紙に包まれたアイスクリームサンドだ。期待してベッドで待ち構えるが、出てきたのはクランベリージュースとクラッカーと強烈な麻薬性鎮痛剤。ジュースを飲み終えると、大柄な看護師がどこからともなくヌッと現れ、この男の唯一の仕事なのか知らないけれど、素早い手慣れた動きで車椅子にスポっと入れられ、さっさと退院させられる。幻のアイスクリームサンドは病院で夜を過ごさないと出てこないものなのか。とても残念である。

翌日、アイスクリームサンドを食べ損ねた私のために、彼氏が近所のダイナーから冷たくて甘いミルクシェイクを買ってきてくれた。カワウソでもモグラでもなんでも、愛してくれて、ありがたや。



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by majani | 2015-03-20 10:36 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(2)

スモールトーク

先日、ざ・ふぁーむの病院に行くことになった。それがまたハイソな病院で、入口にはヴァレーパーキング、ロビーには静かなジャズが自動的に流れるグランドピアノがあり、豪華ホテルにのこのこ入ってきてしまったのかと目を疑う。

待合室で論文に目を通していると、暇そうにしている看護師の男性が、「寒くない?」と声をかけてくる。面白い物を読んでいると興奮して肩に力が入ってしまう癖で、それが寒そうにしているように見えたのかもしれない。大丈夫だと答えて論文に戻ろうとすると、今度は「日本のどこから来たの」と聞かれる。東京出身だと言うと、看護師はこう語り始める。

「東京か、懐かしいな。まだ若くて独身だった頃は六本木のクラブでDJしてたなあ。俺、グアム出身なんだけど、友達が埼玉に住んでて、よく日本に遊びに行ったもんだよ。埼玉には半年くらいいた。」

「へえ、六本木でDJしてたんですか」と相槌を打ったのが彼に自信を持たせてしまった。あの頃はナンチャラが同じクラブで仕事してただの、ナントカとよく飲みに行っただの、私が全く知らないDJの名前をいくつも呪文のように唱え始める看護師。

「日本は面白い。友達が駐輪所で自転車をがちゃがちゃ動かし始めて、何やってるんだと聞いたら、これは鍵がかかってないからお前も早く乗れって言うんだ。そうやってどこかまで乗ってくと、今度はそこらへんに乗り捨てて、おい、これここに置きっぱなしでいいのかと聞くと、大丈夫大丈夫、誰かがまた乗って元の場所に戻してくれるさ、ってね。便利なシステムだよね!」

そんなシステムないです。つまり自転車泥棒をしてたわけですか。

看護師は遠くを見つめ、ため息をついている。懐かしの埼玉時代を思い出しているようだ。案の定、

「日本で知り合った女性と結婚してね」

「はあ、そうなんですね」

「グアムに一緒に来てくれて、永住権を取得してさ。彼女はホテルバーで働いててね。そしたら彼女は同じ職場のギリシャ人と恋をしてしまったんだ。」

ギリシャ人だったかな。ジャマイカ人だったかもしれない。とにかくグアムのホテルバーで働く怪しい外国人に奥さんを取られてしまったようである。これは…慰めるべきなのか?

しかしその必要はなく、看護師は淡々と話し続ける。

「でも俺はこっちで結婚できて、今は娘がいて、すごく幸せさ!それにしても日本はいいとこだよ。いやあ、俺も若かったなあ、あの時。サンフランシスコのジャパンタウンはよく行くのかい?」

起承転結が一応あるが、支離滅裂なストーリーである。それに若かった若かったと言っている割にはそんなに年上という感じがしない。私がちんたら論文を書いている間、彼は埼玉で自転車を盗んだり、失恋したり、子供を産んだりしていたのである。人生色々だ。

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"Do not disturb signs #0096." Obsessionistas. Mar 7, 2012.


アメリカ人は「スモールトーク」が得意である。エレベーターや郵便局の列で一緒になった人と天気とかスポーツとかについて話す、ちょっとした会話のことを small talk という。(看護師の話はスモールトークを通り越してしまったような気がするが。)日本にスモールトークが存在しないというわけではないが、赤の他人相手に進んで自分の人生のことをさらけ出すこのオープンさには、今でも驚くことが度々ある。アメリカ文化独特な何かを感じる。

私は話しかけやすい顔をしているのか(ぼーっとしているのかも)、電車などで近くの人にちょくちょく声をかけられる。最初はつまらない話題でも、急に「ノースカロライナの伯父はムーンシャインを作ってるんです」とか、「私は趣味で、オレゴン州から仕入れたレアな木材でワニの模型を作るのが好きなんです」とか、絶対に普通の会話に出てこないような奇妙な事実が浮上する。それがスモールトークの面白いところでもある。どの時点でスモールトークではなくていわゆる「会話」になっているのか、定義のことはさておき、山の手線で隣のサラリーマンと酒造りについて話し込むなんてことはまずない。

ところで、ホテルバーのジャマイカ人が登場したあたりで、待合室に新しいおじいさん患者が入ってきて私の隣に腰かけた。途中からにも関わらず、看護師の話に目を輝かせ、もの言いたげな表情でこちらをチラチラ見るのである。しかし私はその「私も話したい」信号を冷たく無視し、看護師が仕事に戻ったのを機にまた論文に向かった。

しばらくすると、隣から嗄れ声が。

「お嬢さんはどこが悪いの」

やっぱり話したかったのね。わかりました。話しましょう。それにしても唐突な質問。

「脚を怪我したんです」

「私は膝の手術をここで受けたんですよ」と得意げなおじいさん。

「それは大変でしたね」

「もう治りかけですけどね。今日は肩がおかしいから診てもらうんです。ほら、左右比べると変でしょう。」

「そう…ですかねえ。まあ、私は専門家じゃないですからねえ」

「いいえ、確かに変なんです。ちゃんと見てください」

そしていきなりシャツを開いて私に肩を見せてくるおじいさん。

話したがり、見せたがりが集まる待合室だった。次回病院に行くときは、スモールトークを交わす(もとい、かわす?)技術をもう少し磨いてから挑むことにする。


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by majani | 2015-02-13 12:06 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

異邦人と東京

一時帰国している。

パナマ人のイザベルアレンデちゃんがちょうど同じ時期に出張で来ていて、東京案内をすることになった。食べ物ポルノの話でもアレンデちゃんについて少し書いた。彼女は旅好きで語学の達人だが、アジア訪問はこれが初めてである。日本ももちろん初めて。

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彼女の目を通して見る、東京。

それはモダンな要素と昔ながらの要素が入り交じる、一見、無秩序な、街の在り方に当惑している街。一方、そこに見出せる不思議な秩序が大都市の独特な魅力とも言えよう。映画『ロスト・イン・トランスレーション』で一気に有名になった、夥しい人の群れが行き交う渋谷のスクランブル交差点だが、初めて日本を訪れる外国人にとって、そのインパクトは強く、定番ながらも人気が根強い。これほど大勢の人が一箇所に集まっているのに、みんな大人しくじっと信号を待っている。誰一人その秩序を乱す者はいない。すると、先ほどまで無関心にさえ見えた人々が一斉に、まるで正確なコレオグラフィを踊るように四方八方に散る。その奇妙な(もちろん彼女にとって)光景に、アレンデちゃんは驚愕した。

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ところで、渋谷や新宿でよく放心状態の彷徨える外国人を見かけるが、あれは都会の雑踏に仰天しているのだろうか。新しい刺激が多すぎて処理できなくなっているように見えるけど、ただアスファルトから立ち上る尋常でない暑さにばてているようにも見える。

幸い、アレンデちゃんは放心状態になることなく、初日から活発に私とあちこち移動してくれた。あいにく自分の家にアレンデちゃんを泊めることができなかったので、Airbnb の宿を手配した。Airbnb は日本でも少しずつ広まっているようだが、アレンデちゃんが泊まっている部屋にお邪魔してみると、取ってつけたように浴衣が椅子にかけてあったり(不自然)、大きな鎌倉彫の魚が床の間に身構えていたり(邪魔)、また囲炉裏がありそうもない場所に囲炉裏があったり、しかも上からぶら下がっている自在鉤には急須がかけてあるなど、日本っぽさ、それも外国人にウケそうな日本ぽさが綿密に演出されていた。アレンデちゃんは、東京の全ての家に囲炉裏があると思って帰っていったことだろう。

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東京観光の4日間は長いようであまりにも短く、最後は東京駅でアレンデちゃんを新幹線に乗せてお別れをする。京都まで付いていけないのが残念だ。彼女は一瞬だけ不安そうな表情になるも、またすぐ微笑み、気を取り直して人混みの中へと消えていった。

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アレンデちゃんは、日本に来る前に、「東京のムード」溢れる本を是非薦めてほしいと私に頼んできた。彼女が使った言葉は mood ではなくstate of mind だったが、要は、飛行機で読みながら「ああ、東京はこういう雰囲気なのね」とひしひしと伝わってくる本、「よおし、東京に行ってくるぞ」といった気分に浸れるような小説か短編集を求めていたのだ。邦書で「英訳が数日のうちに簡単に手に入る」という条件付き。

はたしてそんなマジカルな本は存在するのだろうかと大いに悩んだ私だが、何故こんな簡単な頼まれごとで悩んでしまうのだろうと、疑問にも思った。友人が、例えば、パリの雰囲気が上手く描写されている本を薦めてと頼めば、すぐ何冊か頭に浮かぶ。押し付けがましくベスト10リストを送ってしまうだろう。ニューヨークでもサンフランシスコでもいい。ただ東京だけ、悩んでしまう。


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東京を一言で(一冊で)まとめるのは難しい。まず、街の目まぐるしい変化。一時帰国する度に必ず何らかの移り変わりに驚いたり、しんみりしたり。しかしこれは都会の特徴であって、別に東京特有ではないと思う。では何か。

あの本もこの本も東京の esprit を象徴するにはイマイチに思えてしまう。これは自分が熟知している街、好きな街であるほど悩んでしまうものなのか。しかしよく考えると、一年に過ごす時間は圧倒的にアメリカのほうが長いのだから、熟知しているとも言えなくなってしまった。では生まれ育った街へ対するノスタルジアが私の選択の邪魔をしているのだろうか。

ノスタルジアといえば、ミラン・クンデラの小説『無知』にこんな一節がある。少し長い引用になる。

Le retour, en grec, se dit nostos. Algos signifie souffrance. La nostalgie est donc la souffrance causée par le désir inassouvi de retourner. Pour cette notion fondamentale, la majorité des Européens peuvent utiliser un mot d’origine grecque (nostalgie, nostalgia) puis d’autres mots ayant leur racines dans la langue nationale : anoranza, disent les Espagnols ; saudade, disent les Portugais. (…) Mal du pays. Mal du chez-soi. Ce qui, en anglais, sedit : homesickness. Ou en allemand : Heimweh. En hollandais : heimwee. (…) L’une des plus anciennes langues européennes, l’islandais, distingue bien deux termes : söknudur : nostalgie dans son sens général ; et heimfra : mal du pays. Les Tchèques, à côté du mot nostalgie pris du grec, ont pour cette notion leur propre substantif, steck, et leur propre verbe ; la phrase d’amour tchèque la plus émouvante : styskase mi po tobe : j’ai la nostalgie de toi ; je ne peux supporter la douleur de ton absence. En espagnol, anoranza vient du verbe anorar (avoir de la nostalgie) qui vient du catalan enyorar, dérivé, lui, du mot latin ignorare (ignorer). Sous cet éclairage étymologique, la nostalgie apparaît comme la souffrance de l’ignorance. Tu es loin, et je ne sais pas ce que tu deviens.

そう、あなたは遠く、どう変化していのるか私にはわからない。止まることなく変わり続ける東京は、その住人にでさえ、根本的にノスタルジーの街なのかもしれない。東京は誰もが知っている街でありながら、誰も知らない街でもある。知り尽くせないという意味で、知らない。

私の知らない東京は、まだたくさんある。知らないが故に郷愁に駆られてしまうのか。

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by majani | 2014-09-04 16:52 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(2)

テニスとルノワール帽子

テニス三昧の一週間だった。

といっても、私がテニスをしていたわけではない。ざ・ふぁーむでバンク・オブ・ザ・ウェスト・クラシック (Bank of the West Classic) という女子プロテニス大会が開催されていた。スペイン語の授業などで忙しかったので練習試合は観に行かなかったが、金曜の準々決勝、土曜の準決勝を友人と観戦。テニスファンの知り合いがこの一週間のうちに選手の一人と仲良くなったらしく(ええと、ノーコメント)チケットを無料で分けてもらった。ありがたや。

私のテニス知識はマルティナ・ヒンギスとかリンジー・ダベンポートとか、一昔前の時代で止まったままである。そのダベンポートが解説者としてざ・ふぁーむに来ていて、マキシドレスでコートの周りをスタスタ歩きまわっていたのが実に印象的であった。若い頃見ていたプロ選手をこんな近くで(しかも何年も経ってから)見られるとは夢にも思わなかった。

ウィリアムズ姉妹はまだ現役。ヴィーナスの背の高さ、セレナの筋肉の大きさに脱帽。知らない選手ももちろん沢山いる。若い日本人選手も来ていたようで、あいにくその試合を観る機会はなかったが、友人の話によると結構いい所まで行ったらしい。偉いなあ。

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Renoir, Pierre-Auguste. 1892. Chapeaux d'été.


プロの試合を生で観るのは今回が初めてだ。テニスというと、なんだかブルジョアでハイソなスポーツのイメージがある。その昔はウィンブルドンなどをけっこう熱心にテレビで観ていた。まず、コートが静まり返っている。観客もなんとなく上品な感じがした。皆がルノワールの絵画に出てきそうな帽子を被っていて、拍手の仕方も他のスポーツと異なり、ぱらぱらぱらっと音のする整った拍手である。

このイメージでざ・ふぁーむの試合に繰り出したら、雰囲気はかなり違うものであった。陽射しが強いので帽子を被っている人は沢山いたけれど、観客はけっこう勝手に叫んだりヒューヒュー口笛を吹いたりしている。ヴィーナス・ウィリアムズがプレイしているとき、「ヴィー、頑張ってえ」と声を張り上げて叫ぶおばさんたち。ヴァルヴァラ・レプチェンコがプレイしているときは、「バーブ、しっかり 」との掛け声。(バーブはバーバラのあだ名。レプチェンコはペンシルバニア州のアレンタウンに移住したため、「頑張れペンシルバニア」という応援もあった。)

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Renoir. 1895. Femme au chapeau blanc.

想像していたより賑やかな試合ばかりでとても楽しかったのだが、暑さが辛かった。残念ながらルノワール帽子を持っていないので、中途半端なつばの帽子を被っていたら、気が付けば胸と足の甲に変な日焼けの跡ができている。12時間以上に渡るテニス観戦で、隣に座っている友人はこんがり焼けてしまっている。日焼けしてしまった以上もうどうしようもないけれど、夏休みはまだ一ヶ月以上ある。その間につばの広いルノワール帽子を買いたいと思っている。

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Renoir. 1884. Jeune fille au chapeau de paille.

今は完璧にカウチポテトになってしまっている私だが、子供の頃にテニスのレッスンを受けていたことがある。当時はシンガポールに住んでおり、コーチは中国系シンガポール人だった。そのコーチが毎週履いていた眩しいほど白く、ピチピチでとても短いショーツを覚えている。今思えばあれはホットパンツ以上の域に達する実に過激なショーツだった。しかし子供相手にあんなの履いていて良かったのだろうか。大人相手に履かれても困るが。

練習が終わると、お母さんたちがお喋りしながら待っている日陰のところへテニス仲間と駆けて行き、冷えた砂糖漬けのレモンスライスを皆で分け合って食べていた。テニスで汗だくになって口にするレモンの最初のあの一切れ、その美味しさは私にとって懐かしの味だ。

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今日のスペ語とか。
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by majani | 2014-08-05 12:33 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

良い変

少し前、人魚姫さんとパロアルトで見かけた変な壁画。

ストリートアートでもグラフィティでもないし、なんとも言えない壁画である。白人のおじいさんがそれはとても幸せそうに乳母車を押している。しかし乳母車の中に座っているのは赤ん坊ではなく、薄茶色の宇宙人である。巨大なカタツムリにも見えなくない。

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ざ・ふぁーむの辺りは変なアートが多い。キャンパスの東側から電車の駅に向かって歩いていくとカリフォルニアアベニューという通りがあり、毎週日曜の朝はここでファーマーズ・マーケットが開催される。ダウンタウンパロアルトほど拓けていないが、美味しいレストランが並ぶ。しかしこの通りもやはり、ユニコーンかイッカクの角ような彫刻や、車が足を生やしてどこかへ走ってい行く彫刻など、謎のものが多い。

謎というか、単なる「変」なアートだとオフィスメート助奈探君はいう。変というか、単なる「下手」なアートなんじゃない、とアトリエ君。 “Good weird” (「良い変」)や “[It’s]so bad it’s good” (「駄目すぎて逆に良い」)という言い回しはあるけれど、ただ単に「下手」なものは下手なことに尽きる。では「単に下手なアート」と「良い感じに変なアート」を分けるのは一体どういったクライテリアだろうか考えてみようではないかと全く無駄なディベートに至ってしまうほど変な彫刻が多いのだ、ここら辺は。

宇宙人の壁画があまりにも変なので写真を撮ってしまった。乳母車ではなくて買い物用のカートかもしれないと後にふと思った。よく見るとおじいさんのズボンの後ろポケットから、買い物のメモみたいな白い紙がのぞいている。「卵、牛乳、シリアル」とでも書いてあるのだろうか。眺めれば眺めるほど、謎が深まる。

「良い変」に近づきつつある。

Or me.

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今日食べたものとか。
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by majani | 2014-07-24 16:02 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

やめられないこと

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ナンデモアリフォルニアに来て4年が経とうとしている。相変わらずやめるべきだけれどやめられないことが多い日常生活だが、最近、一つだけやめることができた。10年近く続いたラブストーリーに終止符を打つことにしたのだ。

出会いは東京で、後にパリ、ニューヨーク、そしてナンデモアリフォルニアで人生を共にしてきた恋人だ。旅も一緒にした。日本はもちろん、フィレンツェ、マラケシュ、プラハ、ランブイエ、ブリュッセル、アムステルダム、ルクセンブルグ、ナイロビ、チューリッヒ。様々な街、人々、異文化を一緒に見てきた相手だ。相手の紹介のおかげで良き友人もできた。

しかしながらこれ以上付き合いを続けるのは不健康だと考えた。以前にも別れようと何度か試みたが、やめなければならないことほど、やめなれない。

本当に別れてしまった今、数々の小さな記憶が蘇る。徹夜明けで一緒にサンフランシスコに繰り出した風が冷たいあの冬日、野外コンサートで急に雨が降り出してしまったときに近くの軒下で雨宿りをしたブルックリンのあの夏日。気付けばいつもそこにいた恋人は、私が失敗をして泣きついても責めることなく、黙って慰めてくれた。スランプのときは一緒に知恵を絞ってくれ、側にいるだけでやる気が出て仕事が捗った。その一方、わずか数時間会えないというだけで恋人のことばかり考えてしまい、何も手に付かなくなってしまう。

早朝のコーヒーの時に挨拶を交わし、寝る前に最後に見る愛しい相手だった。今なお、外食してエスプレッソを飲みきった時に会いたくなってしまう。お酒が美味しいと、やはり会いたくなってしまう。

恋人とは煙草のことである。やっと禁煙したのだ。

なんじゃい!と思われるだろうが、本当に恋しいのだ。煙草という文字を見るだけで胸が苦しくなる。

もともとやめる決心をしたのは確か4月下旬だった。パロアルトのバーで友人と飲んでいて、なんらかのキッカケで7月4日の独立記念日に止めようということになった。独立記念日なら覚えやすいと思って選んだのだが、煙草から独立する自分の記念日なのだとかなんとか崇高な説明を付け加えてみたら、本当にやめられるような気持ちになってきた。7月4日にやめるんだぜと友人に宣伝しまくったところ、見事に禁煙失敗。18時間が限界だった。

因みに(非)独立記念日は親がサンフランシスコにいたので、禁煙するところを母にばっちり観察されていた。後の母の話では、私はソワソワするばかりで人の話を全然聞いていなかったらしい。「また煙草を吸い始めてくれて、ああよかった」とまで言われてしまう様。それほどひどかったのか。「私たちが日本に帰ってから、また禁煙してみてね。」

ヘビースモーカーの父にも「まだ20代なんだからさ、若いうちにやめといたらいいよ」と助言される。変なロジックだけれど、まあやめるに越したことは無いと思い直す。

というわけで、もう一度試みた。運良く風邪を引き、ゴホゴホでズビズビの間は煙草のことをあまり考えずに済んだため、これなら自然にやめられそうだと楽観的になるものの、ちょっとでも油断するとやはり煙草がぽっと頭に入ってきてしまう今日この頃。

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少しでも気を紛らわそうと、昨日ビリー・コリンズの詩集
Aimless Love (2013) を読んでいたら、彼の “The Best Cigarette” (1997)(『最高の煙草』)という詩を思い出してしまった。気が紛れるどころか、悶々とする。

詩はこう始まる。(注)

There are many that I miss
having sent my last one out a car window
sparking along the road one night, years ago.

とにもかくにも、煙草を断った今は全く新しい観点から堪能できる詩だ。何度も読み返してしまう、聴き返してしまう内容である。一節一節、まるで煙草を吸っているかのように頭がクラクラするほどの実感がこもっている。コリンズも昔は喫煙者だったに違いない。

私の場合、最後の一本は車窓から投げ捨てたのではなく(車がない)いつもどおりに自宅のすぐ外の木の下で吸った。特に記すほどの特徴が無いごく普通の木だが、そのごく普通の枝を眺めながら毎晩煙草を吸っているうちに愛着が湧き、植物に名前を付ける昔からの癖でウッドバート・ドミンゴと命名。煙草を吸わなくなった今、ウッドバート・ドミンゴと共に過ごす時間が少なくなった。

このままスッパリ別れられるかどうか、まだ分からない。しばらくは「最高の煙草」に思い焦がれる夜が続きそうだ。

注 参考文献:
Collins, Billy. “The Best Cigarette.” In The Best Cigarette, Cielo Vivo/SmallGood Press, 1997.
Full text available at: [http://www.bestcigarette.us/2004/09/the_best_cigare_1.html]


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今日食べたものとか。
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by majani | 2014-07-18 19:47 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(6)


ナンデモアリフォルニアの某大学院で研究中。海外生活、旅、散歩で出会った生き物などの記録です。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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