街中のタタンカ

サンフランシスコの街のど真ん中で、北米最大の哺乳類がのんびりと暮らしていることを最近知った。アメリカンインディアン部族のラコタ族が「タタンカ」と呼ぶアメリカンバッファローのことだ。

それがゴールデンゲートパークにいるのだというからビックリ。植物園のついでに、街中のタタンカに会いに行ってきた。

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ゴールデンゲートパーク内。このすぐ近くにバッファローがいる。

同じゴールデンゲートパークでも、花のコンサーバトリーから徒歩45分かかる場所にタタンカはいるらしい。面倒くさがり屋の私たちは車で移動して、広い公園に再び踏み入った。

しばらくして、黄色い野花が咲く原っぱに出た。なんだ、タタンカいないじゃない、おかしいなとウロウロしていると、原っぱのぽつぽつと茶色い物体が微かに動いているのに気が付いた。

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何だか気が抜ける光景である。5、6頭のバッファローが、行き交う人たちに冷たく無視されながら、のそのそと野原を散歩している。群れを作るものだと思っていたが、6頭ぽっちじゃ群れが作れないのだろうか。

タタンカってけっこうコミカルなんですね。一頭、一頭が、道に迷ったかのように無闇にウロウロしている。かと思えば、急に何かを思い出したのか一頭がドドドドドと走り出し、それにつられて他のバッファローも(違った方向に)ドドドと駆け出す。すると今度は、アレなんで走ってたんだっけ?という感じで、パタリと停止する。

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子供の頃、カナダのアルバータ州で過ごした夏休みを思い出した。

アルバータ州カルガリー出身の家族友人に招かれて母と行ったのだが、大自然のアルバータは都会っ子の子供にとってかなりツマラナイ田舎(大人になった今、再訪したら感激すると思う)。友人の年齢が近い息子と最初は張り切って遊んでいたものの、私たちはすぐ退屈し始めた。家族友人は気を遣ってくれたのだろう。親しい友達がバッファロー牧場を運営しているので(今思えば不思議な友人がいるものだ)ちょっと遊びに行ってみないかと提案された。

カナダの牧場で初めて見たバッファローはトラックのように大きく、ひん曲がった背中にボロボロになった茶色い絨毯を無造作に乗せているような奇妙な姿だった。

牧場の気さくなおじさんが、どうだい、餌をやってみたいかいと言った。小心者の私はそうでもなかったのだが、大人たちの「是非やってみなさい」というキラキラした視線の下、「ハイ、では」と小さく答えた。

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柵に近づくとバッファローが何頭かこちらにやってきて、お面を被っているような巨大な頭をゆっくりと振る。馬に餌をやるときと同じ法則で、手を平らにしてバッファローに差し出すのだと教わった。これがすごく怖い。いかにもおつむが弱そうなだけに。

そおっと野獣のごつい顔に手を近づけると、バッファローは助走(?)を付けすぎたのか、私の腕を肘が見えなくなるまでごっそり口に含んだ。噛まれたわけではないが、びっくりして腕を引き出すと餌は消えていて、肘までビッチョリ、白く曇った臭い唾液がまとわりついていた。

後で皮膚が真っ赤になるまで腕をゴシゴシ洗ったが、私は一日中バッファローの強烈なよだれ臭を放っていた。ひどく熱く感じたバッファローの口の中の感触は今も明確に覚えている。

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後日、6千年前からバッファロー狩りが行われてきたヘッド・スマッシュト・イン・バッファロージャンプ(Head-Smashed-In Buffalo Jump)というユネスコ世界文化遺産に登録されている史跡を訪れた私は、ささやかなリベンジとして、史跡の近くでバッファローの肉を使ったハンバーガー、「バイソン・バーガー」を食べた。

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ゴールデンゲートパークからバスで戻ってきた。たまたまバッファローの絵が描いてあるワインを見つけたので、その夜はバッファローのジンファンデルで乾杯。味は、まあまあ。

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でもコルクが可愛い。

ゴールデンゲートパークに住むバッファローたちは食べられる心配なく、サンフランシスコ動物園の係の人たちにちやほやされながら一生を過ごす運命。

街中のタタンカは、今日もおかしな茶色い絨毯を背中にのっけて散歩をしている。




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# by majani | 2017-06-22 13:14 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

想い出のサンフランシスコ

サンフランシスコでトニーベネット(の銅像)に会ってきた。

去年、90歳の誕生日を迎えたジャズ界の伝説的な存在トニーベネット。その記念に、サンフランシスコのノブヒルにあるフェアモントホテルにトニーの銅像が作られた。

トニーベネットは1961年にフェアモントホテルのベネチアルームで『想い出のサンフランシスコ』("I Left my Heart in San Francisco")を歌っている。

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両親がサンフランシスコに遊びに来てくれたので、家族揃って、トニーベネットをテーマとした一日を過ごした。

フェアモントホテルに例の銅像があると聞いていたが、ホテル内の中庭にでもあるのかと思いきや、冷たい風が吹く入口付近にでーんと立っていたのが少し意外だった。「なんか顎の感じがちょっと違うんぢゃないか」「マイクを持っているのはどう思うね」とわあわあ騒ぎながら、芝生にずいと乗り込んでいき、トニーと写真撮影を行う。

ジャズを好む父は、トニーベネットの大ファン。何十年分ものアルバムを全て持っていて、東京の公演に駆けつけたり、トニーにハグをしてもらったりしている。私自身も、母のお腹にいた頃から彼の歌声をずっと聴いている。顎の感じがちょっと違っていたとしても、実に感慨深い。

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上のマークホプキンズを始め、フェアモントやリッツカールトンなど高級ホテルが多いノブヒル。

良い仕事をしたという顔で大満足の父が煙草に火を点けると、パンクロッカー姿の若いイギリス人カップルがやってきて、トニーベネットの銅像に気が付いた。「オーマイゴッド、トニーじゃない!」と興奮しながらケータイで写真を撮り始める。すると今度はスポーツコートを着た中年男性が銅像の前で立ち止まった。満面の笑みを浮かべ、トニーとずっと向き合っていた。

90になっても衰えることのない歌唱力と年々増していく魅力の持ち主のトニーベネットには長生きをしてほしいと、心の底から願う。

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先月、ロザモンドと一緒に行ったユニオンスクエアの Sears Fine Foods にまた立ち寄った。トニーベネットもこのダイナーで食べたことがあるのかな。彼のサイン入りの写真が何枚も飾ってある。

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有名なスウェーデン式パンケーキを頼んでみた。小さくて薄いパンケーキが18枚(!)運ばれてきた。温かいメープルシロップとホイップバターでぱくぱく食べる。流石に18枚全ては食べきれなかったが。

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お勘定をすると金色のトーケンがもらえる。それを入口付近にあるスロットマシンに入れてレーバーを引くと、次のブランチが無料になるかも?

クジ運が強い母にスロットマシンをさせたが、今回はハズレ・・・

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さて、トニーベネットの『想い出のサンフランシスコ』のLPカバーに霧がかかったゴールデンゲートブリッジが映っているのだが、父がその風景を是非とも再現したいとのこと。

どこから写しているのかリルケにも一緒に研究してもらい、プレシディオの方へ出かける。

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結果がこの写真!いかがでしょう。

この日はからっと晴れていて霧が無かったけれど、橋の影の角度もけっこう近いのでは。父はとても喜んでくれた。




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# by majani | 2017-06-20 07:30 | 旅に待ったなし | Trackback | Comments(2)

ゴールデンゲートパーク植物園

サンフランシスコの植物園を訪れた。

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ゴールデンゲートパーク内にある Conservatory of Flowers 。入場料は大人8ドル、学生6ドルと良心的。

草食獣のような優し気な顔をした受付のお兄さんが、私の着ている厚手のジャケットを見て「中は暖かいですよ」と教えてくれた。

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入るやいなや、熱帯雨林のようなアトリウム。時々、上からミストがしゅわしゅわと降下し、シダやヤドリギを細やかな水滴のベールで覆う。

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実際、動物はいないのだけれど、鳥の鳴き声やジャングルぽい(?)効果音が流れていて、どこか東南アジアの森林に迷い込んだかのような気分を盛り立ててくれる。

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これは蘭ね、と思うものもあれば、

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見たことのない、不思議な花も。サーモンピンクと薄紫の派手なこの植物は、地味なアラビカコーヒーの木に寄り添うようにしていた。

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色と形がハロウィンで配られるコーン状の飴に似ていることから「キャンディーコーン・インペーシェンズ」とも呼ばれる花。

学名 Impatiens niamniamensis の impatiens とは、ラテン語で「せっかち」の意味。種を爆発的にあちこちにぶちまけることから、「せっかちな」植物という異名が付いたようだ。

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ハイビスカスも負けずと派手なキャンデイーコーン色。

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アマゾンリリーが咲く池を一周する。

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Potted plants のエリアは、ウツボカズラやミドリノスズがありとあらゆる所で垂れ下がっている。

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中をそっと覗く。

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この子は本来オーストラリアに生息する食虫植物。長い葉に密集している赤い粘毛で虫を捕まえるらしいが、小さくカールした先端の葉は、まだフレンドリーで無害に見える。

学名の下に「ジャイアント」と書いてあるのが気になる。

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この植物は名前が分からないけれど、アルマジロのしっぽみたいな形が良い感じ。

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さて、この夏、植物園で一番注目を浴びているのが、この子。10年に一度、二日間だけ花を咲かせるインドネシアの巨大なショクダイオオコンニャク(Amorphophallus titanum)だ。

英語だと corpse flower 、つまり「死体の花」とも呼ばれることから想像できるように、開花した時は腐肉のような凄まじい悪臭を放つ。膨らんでいる巨大な蕾のような物は実は花ではなく、その中心に百もの小さな花が咲く。

因みに amorpho の意味は不定形あるいは奇形の、titanum は巨大な、phallus は男性器…。学名を付けたのは多分、男性。

私たちが先週訪れた時は、開花まであと一週間ちょっとだと教えられた。残念だったのか、ラッキーだったのか、ちょっと複雑な気分。

植物園のウェブサイトで、この「テラちゃん」の状態を生中継でチェックできるのよ~と植物園のスタッフが教えてくれたので、最近はこのライブストリームをモニターに流しならラップトップで仕事をしている。シュールな中継はこちら:
http://conservatoryofflowers.org/bloom/amorphophallus-titanum/

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何となく不気味なテラちゃんを後にして、蝶の部屋へ。何種類もの蝶が放し飼いになっている特別展示。

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シマウマのような模様の蝶は zebra longwing (学名は Heliconius charithonia)。

南アメリカに生息する蝶で、米国だとテキサスやフロリダなど暖かい場所にいるらしい。サンフランシスコは、ちょっと寒いよね。

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Julia butterfly (学名は Dryas iulia)の真っ赤なおしり。いつも高い所を飛んでいて良い写真が撮れなかったが、羽も炎のようなオレンジ一色。

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サナギが何段も並ぶ「バタフライ・バンガロー」。ガラス張りの展示箱が後ろから戸棚のように開く仕組みになっていて、蝶が繭からのそのそと出てくると、お兄さんが鉛筆の先に蝶を乗せて、他のが放し飼いになっているエリアに放してやっていた。

この子も、もうすぐバンガローを卒業する時期かな。

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沢山の蘭を見た。デリケートな花だと思い込んでいたが、意外と色々な気候でたくましく生きていることを、今回初めて知った。

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そしてみんな、表情豊か。

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上の dancing lady orchid は、チョコレートのような香りがした。

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私が一番気に入ったのは、このちょっと物々しい欄。

キノコに似せた、先端の白いコップのような部分に虫が止まると、それがトランポリンのように弾み、花粉がたっぷり付いている花糸に虫を擦りつける働きがあるんですって。これぞ自然界のイノベーション。

そして名前がまた良い。ドラキュラという蘭の種類だが、それは吸血鬼のことではなくて、ギリシャ語で「小さなドラゴン」という意味なのだと、植物園のスタッフが教えてくれた。髭がぴよんと出ていて、小さな竜の頭に見えなくもない、かな。

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大変勉強になりました。また訪問したいサンフランシスコの植物園。

Conservatory of Flowers
http://conservatoryofflowers.org/



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# by majani | 2017-06-16 07:10 | 旅に待ったなし | Trackback | Comments(0)


ナンデモアリフォルニアの某大学院で研究中。海外生活、旅、散歩で出会った生き物などの記録です。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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