暑さ47度の砂漠とセコイアの木陰の思い出を振り返りながら、最後のストップ、サンタクルーズへ。
雨交じりのサンタクルーズ。ここまで戻ってくると、アイスプラントなど見慣れた植物が多くて、変な安心感もあった。
サンタクルーズでは、Babbling Brook という bed & breakfast に泊まる。
道草を食いながらだったのでずいぶんと遅い時間に着いてしまったが、魔女みたいな格好をした女性が、手作りのオートミールクッキーやワインを勧め、優しく出迎えてくれた。入口付近で、水車がゆっくりと回る。
各部屋に有名な画家の名前が付いている。私たちはトゥールーズ・ロートレックの部屋。何がロートレックっぽいのかというと、モンマルトルを描いた彼の絵がいくつか壁に飾ってあるくらい。
静かな中庭が見下ろせるパティオは朝の読書に良さそう。
近くの Año Nuevo State Park へ散策に出かけた。割と新しい州立公園だ。
曇りがちで人が少なく、しばらく砂道を歩いていると、鹿が出てきた。セコイアで出会ったのより、ちょっと色白さんかな。
でも鹿が目当てで来たのではない。目的は・・・
この巨大なクリーチャー。ゾウアザラシの群れが海岸で寝そべっている。
ケンカをしているように見えるのは、若い雄のゾウアザラシ。ティーネージャーたちは、大人になったらハーレムを巡って戦わなければならないので、その時期に備えて特訓をしている。
ゾウアザラシは年齢と性別によって、移動する先とタイミングが少しずつ異なる。メスたちは海岸で休み、メーティングを終えた後、餌を探しにピンクのルートを辿って何カ月も海に出る。そして、子供を産みにまた海岸に戻ってくる。
雄はもう少し遠い青いコースを辿るが、若いのと大人の雄は別々のタイミングで再び海岸に現れる。私たちが公園を訪れた時は、ちょうどティネージャーたちが海岸に戻ってきているシーズンだった。
成長しきった雄は鼻の部分がぶくぶく膨れているが(そのぶくぶくを叩き合わせて争う)、この子たちは若いのでまだ顔が小さい。それにしても、なんだかコミカルな容姿。
もたもたとビーチに上がってくる様子が、アメーバみたい。
やっとビーチに上がってこられたと思ったら、またケンカの練習を始めた。太い鳴き声で、迫力満点。
特訓をしていない時は至って穏やかなゾウアザラシたち。一回り、二回りも小さな普通のアザラシと混ざって、ビーチでゴロゴロしている。
アザラシがうがい(?)をしながら近寄ってきた。
公園にはゾウアザラシが見られるスポットがいくつかあり、上に写っているヴィスタポイントではボランティアのガイド(docent)がゾウアザラシの説明などしてくれる。赤いベストを着たガイドのおじさんが、サラダを食べながら私たちに話しかけてきて、雌の生殖サイクルについて熱く語ってくれた。
ゾウアザラシは近くで人間がわいわいやっていても完全無視で、のそのそビーチに上がってきたり、ゴロゴロしているばかり。ヘンテコな平和が、ここにある。
天気があまり良くないが、せっかくだからと宿の魔女のおばさんに勧められて、サンタクルーズの海岸沿いの道をちょっと散歩することに。パドルボードをする人やサーファーたちが次の大きな波を待っている。
あれ、あんな所に立派なアームチェアが置いてある。写真の右側に小さく映っているのですが、分かるでしょうか。しばらくすると青いトラックスーツを着た男がやってきて、柵を乗り越えてアームチェアにぽこっと座り、マリファナを吸い始めた。男はジョイントを終わらせると、満足した表情でまた柵を乗り越えて、さっさとどこかへ行ってしまった。
昆布の森で、独りぼっちのラッコが何かを美味しそうに食べていた。一応ここに写っていますよ!
夕食は Pour Taproom で。このバー、ちょっと面白いのです。広々としたスペースの壁の一面に、タブレットとドラフトビールの栓がずらりと並ぶ。
バーの入り口で、まずクレジットカードをブレスレットと交換する。それぞれタブレットの画面にビールの情報が出ていて、サンプルか、ハーフパイントか、パイントの量が選べるようになっていて、ブレスレットを画面に掲げると、その下の栓から自分でビールが注げる、というセルフサービス方式だ。
色々なクラフトビールを少しずつ試せるのはいいけれど、ちょっと面倒くさい感じもするなあと思ってしまった。ブレスレットだのタブレットだの、テクノロジーを駆使したノヴェルティにつられて(私たちのような)客がやってくるのでしょうが、こうして人件費を節減している割にはけっこういいお値段。しかし、いわゆる「IKEAエフェクト」で、自分で注いだビールの方が美味しく感じるのかも?
オイスターショットを二種類試してみた。う~ん、これも普通に生牡蠣をレモンとちゅるんと食べる方がシンプルで良いかもしれない。
でもローストポテトと、イチジクとベーコンのピザは、美味。
さて、馴染みのざ・ふぁーむ付近に戻って来た私たち。翌日の飛行機に乗るまで、二食だけ残されている。それ急げ!と思い出深いダイナー、Heidi's Pies でランチをした。
カリフォルニアのオリーブが沢山乗っているオムレツ。とびきり美味しいというわけでもないが、ツインピークスに出てくるような昔ながらのダイナーの雰囲気が好きで、ここには時々リルケと一緒に、パイとブラックコーヒーを楽しみに来ていた。
もう一軒、通い詰めていたパロアルトのクリーマリー。私は甘党ではないが、ここのパイはいつも新鮮で本当に美味しくて、一時期は毎週のように来ていた。(そういえば食べ物ポルノの記事に、クリーマリーのアップルパイの写真を載せました。)
そういえば、後ろのブースにマーク・ザッカーバーグが奥さんと赤ちゃんと一緒に座ってパイを食べていた時があったね、とリルケと思い出話をしながら、ここでベイエリア最後の夕食を食べた。
ベイエリアで最後の晩餐がダイナーのフライドチキンって!大学院生の生活に終止符を打つ意味で、これはこれで良かった。
ここのコールスローサラダも、しゃきしゃきしていて甘すぎず、とても好き。
一カ月ほどホテルを転々とする生活がやっと終わり、新しい仕事も落ち着いてきたので、次はいよいよ、引越しの後半について書こうと思う。
バイバイ、愛しのナンデモアリフォルニア!アザラシくんも、達者で。
公園とかダイナーとか