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霧のラトビア

不安になるほど小さなバルト航空の飛行機に乗りこんだ。ベルリンで引き留められて半日以上つぶれてしまったが、いよいよラトビアへ。

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石畳の街、リガ。旧市街の Radi un Draugi ホテル(ラトビア語で友達と家族という意味)に泊まっている。

向かい側のフレンチビストロは深夜を過ぎてもシャンソンを引き続き流している。ビストロの名前がまた良い。ボンヴィヴァン、つまり、楽しく生きる人だ。

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最後に見たのがベルリンのゲシュタポ資料館だったためか、二人とも相当気分が沈んでいる。せめてボンヴィヴァンで何か食べないかとリルケを誘ってみるものの、彼はベッドを乗っ取ると一向に動こうとしない。私は一人で夜のリガの街を散策する…ほどの元気は流石になかったけれど、近くに Narvesen というコンビニを発見し、そこで調達した飲み物やチーズサンドイッチをホテルに持ち帰った。

サンドにはレリッシュみたいなピクルスが沢山入っている。ここはピクルスが盛んな国なのかしら。良い旅になりそう―そんな予感をさせる、コンビニで買ったとは思えないほど美味しいサンドだった。

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翌日、ホテルのレストランで朝食を取る。ミニマリストなデコールは一見、北欧デザインを思わせるが、色彩の使い方や飾ってある絵の感じは、やはり何となく東欧の香りがする。

といっても、私はバルト三国は今回のラトビア訪問が初めてで、「東欧ぽい」漠然とした印象や、慌てて調べたラトビア語(とロシア語)の欠片しかない、未知の世界だ。言葉が通じない国で生活をするのはまるで霧の中を歩いているようだと、母が昔言ったことがあるが、コミュニケーションが取れない異文化の霧の中で、「これは東欧ぽい」とふと感じさせるのは、何だろう。霧の中を歩くこの感覚は、ラトビアにいる間ずっと続く。

朝ごはんを食べに降りてきて、ホテルスタッフに速いラトビア語で何か話しかけられた時、私は記憶の底からとっさに引っ張り出した「おはようございます」としか返答できなかった。(敬語の仕組みが分からないから、「おはようさん」みたいな変な言い方だったかもしれない。)う~ん、霧はまだまだ深い。

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ビュッフェに並ぶものは全て英語で記されているので分かりやすい。例えば、酢漬けのニシン三種類、ローストポテト、クレープ、手製ヨーグルト。半熟卵は「3分」「5分」と、茹でてある時間別に記されたバスケットの中に寄り添うように詰まっている。「ラトビアのハム」とか「ラトビアのチーズ」とか丁寧に書いてあるけれど、ラトビアのハムって何だろう。

ニシン美味しい!ここはやっぱりピクルス天国なのね!とわあわあ騒ぎながら、おかわりをする。

ピクルスといえば、後日、また Narvesen のサンドイッチが無性に食べたくなり調べてみたところ、ノルウェーのコンビニ系列だと知る。ラトビアに騙された(?)気分だが、そういえばノルウェーの料理もニシンを酢漬けにしたり、ピクルス系のものが多いような。寒くて海に面している場所に住む人々はなんでもピクルスにしちゃうのかしら。これももちろん、霧の中の勝手な解釈ですが・・・。

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ところで、このホテルの部屋のバスルームをどう思われますか。オレンジ色のチェック柄に最初はびっくりしたが、変に愛着が湧いてきてしまう。



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# by majani | 2017-01-17 07:31 | 旅に待ったなし

ベルリンで足止め

ベルリンに着いたのは、リガ行きの小さなプロペラー飛行機がすでに飛んで行ってしまった二時間後のことだった。

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リルケと私は友人の結婚式に参列するため、ラトビアに向かっている。しかしニューヨーク発の便が三時間も遅れてしまった。次のリガ便は夜までないと冷たくあしらわれ、着たきり雀の私たちは寒空のベルリンの街を半日彷徨うことになった。

とりあえず、哀しいベルリン空港を出ようとタクシー乗り場に急ぐ。ブランデンブルク門に行きたいのだけどと、緑のトラックスーツを着たトルコ系ドイツ人の運転手に相談する。そんなツマラナイもの見に行きたいの?と運転手は不思議がりながら、煙草の火を消してエンジンをかけた。

空港から直接世界遺産にタクシーで乗り付けようとした私たちに好奇心をおぼえたようで、彼は運転しながら「あれは政府の建物だ」「これはナントカ公園だ」と片言な英語で説明をし始めた。最後は心配そうに「チュース」と手を振ってくれた。

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Brandenburger Tor に到着。夜になるとライトアップされてとても綺麗だそうです。

広場で読んだ看板の受け売りですが、1737年~1860年の間、ベルリンの街は「税関壁」で囲われていた。関税の徴収を容易にする目的で市街地の回りに壁が建設され、ドイツ各地へと繋がるメジャーな街道と交差する場所に関税門が設けられた。ブランデンブルク門はその関税門のひとつだ。

第二次世界大戦後、ベルリン東西の共同作業によってブランデンブルク門は修復されるが、後に門の東側にベルリンの壁が建設され、ブランデンブルク門は東ベルリンの最西端の行き止まりとなる。再び門の下を自由にくぐれる日が来るのは、1989年のベルリンの壁崩壊後となる。

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寒くて仕方がなくて、集中できない。コーヒーが買えそうな店がないかウロウロしていると、灰色の石が幾何学的なグリッド状に並ぶ広場に出た。

何だろうと近づいてみると、石の間を人がぽつりぽつりと一人ずつ消えてゆく。Denkmal für die ermordeten Juden Europas(虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑)だ。

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地面がうねうねしているため、石碑の間をすり抜けていくと、広場の外からは人間が地面の中に飲み込まれていくようにも見える。地下にはホロコーストの資料館がある。


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ベルリンの州議会(Abgeordnetenhaus)はクリスマスツリーで華やかになっていた。

ポツダム広場付近で良さそうなカフェを発見するが、メニューがすべてドイツ語だ。また、店員の英語がとても怪しい。

そういえば、サザエさんの漫画に、サザエさんが女友達とレストランで、「どうする、メニュー全部横文字ヨ」「大丈夫ヨ」とこそこそ相談しながら適当に注文すると、高価そうな料理が大量に出てきてしまうというのがある。コーヒーらしきものとソーセージらしきものを「ズヴァイ!」だの「アイン!」だのとりあえず知っている数字と共に読み上げてみた。言葉が分からない国で店員とやりとりをする妙なスリルを味わうのは久しぶり。

寒さで鼻の先がピンクになっているスペイン人の若いカップルがやってきた。このカップルも横文字ヨ、大丈夫ヨと話しあっている。すると英語で、「私たちサムイ!アルコール?テイクアウェイ」と必死に店員と交渉しはじめた。「アルコール」が通じなかったようで、しばらくの間やりとりをしていたのだが、やっとひらめいた店員が、「ああ、アルコホル?アルコホル、これ、クリスマスドリンクね、テイクアウェイオーケー、だんけしゅーん」と笑い、商談が成立。若者たちは紙コップに入ったホットワインを頬にあて、腕を組んで店を出て行った。

ちょうどその頃、カプチーノが二つと、ソーセージが一本、運ばれてきた。

「コーヒーとソーセージは変なコンビかなあ、おかしいと思われてるかなあ」とリルケが心配している。たぶん変だけれど、外国で自意識過剰になっていたらキリがない。旅に待ったなし、午後2時にソーセージが食べたくなったら、食べれば良いのですと、私は考えてしまう。

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残りの時間で Topographie des Terrors を訪れた。

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1933年~1945年、ゲシュタポとSS(ナチスの親衛隊)の本部の跡地に作られたナチスドイツに関する資料館で、入場料は無料。

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ゲシュタポやSSの歴史・機関構造に関する事細かな解説のほか、ユダヤ人を始め、ユダヤ人を助けようとした人々、インテリ、女性、ゲイの人に対する残酷で非道な行為が、当時の新聞記事、プロパガンダとして使われたポスター、写真など、沢山の資料を通して淡々と伝えられている。

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解説が全てドイツ語と英語なので、訪問する際は言葉が理解できる人と来るのがベストだと思う。

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建物の外。拷問などに使われていた地下施設や、ベルリンの壁の一部が展示されている。

そうこうしているうちに、空港に戻る時間になっている。ビールを一杯も飲まないままドイツを後にするのが残念だが、こうして再訪する理由を一つ残しておく。

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とにかく温かいものを…と空港のレストランにふらふらと入った。ベルリン空港で飲んだパースニップのスープは赤いペッパーコーンとオリーブオイルが散らしてあった。

隣のテーブルの男性が、バームクーヘンを美味しい美味しいと呟きながら食べていたのが、印象的だった。




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# by majani | 2017-01-10 10:14 | 旅に待ったなし

ハーバード自然史博物館

ロンドンからナンデモアリフォルニアに戻ってくる途中、ハーバード大学に寄り道をすることになりました。

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久々の東海岸・ニューイングランドらしいキャンパス。

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UCLの動物博物館に次ぎ、ハーバードの自然史博物館を訪れる。

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まずは Glass Flowers の展示室に入る。ドレスデンのガラス工芸家、レオポルド・ブラシュカとその息子ルドルフ・ブラシュカによる「ブラシュカ製ガラス模型」の世界最大のコレクションがここハーバード大学の自然史博物館にある。

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部分拡大されたベ二ハナインゲンの模型。ハチによる授粉の様子を精密にとらえている。

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ブラシュカ親子の工房は19世紀後半から20世紀半ばに向けて、ヨーロッパとアメリカの博物館や教育機関のためにガラス製の生物模型を作っていた。例として、前回紹介した University College London のグラント博物館が保有するクラゲやウミウシの模型もブラシュカガラスだ。

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このカシュ―は年中、実が生っている。

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次の「進化の部屋」に進むと、おどけた顔のこんな子が。

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虫の世界の食生ピラミッド。ベジタリアンの方が基本的に派手?

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古脊椎動物学の部屋にのこのこ入っていくと、12メートルにも及ぶクロノサウルスが大きな笑顔で出迎えてくれた。クロノサウルスと二人きりの部屋は静かで居心地が良い。

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新生代の部屋にはマストドンや、

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巨大なナマケモノ(右奥)やサイとカバのあいの子のような奇妙な哺乳類の化石。真ん中の動物はアルマジロに似ているような、似ていないような・・・。

当時、南アメリカ大陸は海で囲われていたため、他の生態系と関わることなく、まさしく bizarre な、不思議な動物がどんどん進化していったのですね。

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現代の動物は地域別に標本がアレンジされている。南米・アマゾン熱帯雨林の動物が特に面白い。普通サイズのナマケモノがにっこりしている。

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哺乳類の標本は大きい分インパクトがあるが、鳥にも是非注目したい。威厳のあるタカにちっぽけなハチドリ、エメラルド色のフウキンチョウから一見地味なシジュウカラまで、多様な鳥の標本が保有されている。

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ダーウィンはガラパゴス諸島に生息するフィンチの多様性に進化論のヒントを得たとか、所々に丁寧な説明がある。

よくできているなあ、教育的だなあと感心していたところ、大泣きをしている子供がこちらにかけてきた。死んでいる動物ばかりで怖くなってしまったようだ。無理もない・・・。

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大型の哺乳類が集まる部屋。いよいよ博物館のフィナーレです。

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吹き抜けになっている二階に上がると、クジラの骨を間近で見ることができる。

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二階の壁に展示されているのは主に鳥の標本。

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私が特に気に入ったのは、杏子色のへんてこりんなアンデスイワドリ。

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シンガポール以来会っていないオオサイチョウと再会する。

そして・・・

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・・・ラマがいました!



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# by majani | 2016-12-23 09:18 | 動物王国

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


by majani