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バナナスラッグ日和

パリッとした秋がやってきた。

新たなふにゅふにゅ系の生き物を求めて、ヘブンフィールドさんと再び遠足に出かけた。今回私たちが訪れたのはレッドウッドが聳えるプリシマ・クリークの州立公園である。

Purisima Creek Redwoods Open Space Preserve はスカイライン通り Skyline Boulevard )沿いにある。この辺りはレッドウッドが多く、色々なハイキングトレールがあるので、アウトドア派にはとても嬉しい北ナンデモアリフォルニアの一部だ。週末はうねうねしたスカイライン通りを上るサイクリスト達の姿が目立つ。

また、近くには Arlo Guthrie の有名な反ベトナム戦争の曲、Alice's Restaurant に因んだ同じ名前のレストランがある。涼しくなってきているが沢山の人が外のパティオで食事をしている。レストランの外には色鮮やかでピカピカのバイクが並ぶ。

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断っておくが、私は決してアウトドア派ではない。カウチポテトだということは以前立証している。しかしレッドウッドの森は好きだし、自然の中で見つける生き物にも興味がある。今回のトレールは、行きは良い良い帰りは怖いで、下り坂が延々と続くが、ある時点で自分の耐久力に見切りをつけ、引き返して同じ坂道を上ってこなければならない。もう少し下ればもっと良いものが見られそうな気がしてずんずん歩いてしまう、ちょっと危険なトレールである。

プリシマ・クリークのハイキングトレールを歩き始めて5分も経たないうちに、ふにゅふにゅ系の生き物を早速発見。4、5匹集まっている。


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熟したバナナのように見えるため「バナナスラッグ」と名付けられたこの黄色い物体は、25センチほどになる巨大なナメクジの一種である。近寄ってじっくり見ると、体がぬめぬめした粘液に覆われているのが分かる。この粘液はバナナスラッグが呼吸できるよう重要な役割を果たしているとパンフレットに載っている。体が乾いてしまわないように、枯れ葉の下に小さくくるまったりしているのもいる。

すぐバナナスラッグが見つかってラッキーだねえと喜びながら、写真を何枚も撮るが、トレールを歩いてゆくとありとあらゆる所にバナナスラッグがのさばっているではないか。この森はバナナスラッグだらけのようである。天敵はいないのだろうか。

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サルノコシカケや面白い色をした木の実にコメントをしながら森の中へ進む。時々、鳥のさえずりが響き渡る。ヘブンフィールドさんとお互いの研究について相談しあっているうちに、かなり遠くまで歩いてきてしまった。

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そろそろ引き返すことにする。

バナナスラッグはすっかり見飽きてしまって、「またバナナスラッグがいるよ」と指差すこをやめてしまった二人。しかも途中で木が倒れたりしていて、それをまたいで超えたりしているうちに私はすっかり疲れてしまった。

一方、ヘブンフィールドさんはけろっとしていて、こういうときに限って私ばかりに研究の話とかをさせるのである。

「森の中で研究のこと考えるの楽しいですよね!」

とかなんとかお気楽なことを言っているヘブンフィールドさんだが、私の頭の中はバナナスラッグだらけの森で力尽きて死んでしまうのではないかという不安で一杯で、もう研究の話どころではない。最初は喜んでいちいち立ち止まって観察していたバナナスラッグも、沢山いすぎてなんだか恐ろしくなってくる。ヒッチコックの『鳥』のナメクジ版である。

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このまま私が深い森の奥で果ててしまったらヘブンフィールドさんは私を担いで山を登ってくれるだろうか。

「私を見捨てないでくださいね、絶対ですよ!ナメクジに食べられるのは嫌です!」

と念押しすると、今さっきまでエルサルバドルの話をしていたのに一体何のこっちゃという困った顔をされた。


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ふにゅふにゅでぬめぬめのバナナスラッグたちに見守られながら、上り坂をひたすら歩くことさらに一時間、やっと車を乗り捨ててきた入り口まで戻ってこれた。ヘトヘトだけれど、森の熟したバナナに会いに、いつかまた来たい

と思えるようになるのは、少し時間が必要だ。

Or me.

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by majani | 2014-11-09 18:26 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

クラゲ体験

金曜日にモントレーを訪れた。ヘブンフィールドさんと久しぶりの遠出である。

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キャナリー・ロウ(Cannery Row)という通りにまず出る。昔は缶詰工場(cannery)と、工場で働く人の家が並んでいた。キャナリーで思い浮かぶのは、やはりイワシ( sardines )。ところどころにイワシの缶詰のサインが路上に打ち込まれていて面白い。

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1920年代には中国人の移民が増え、中華街が栄えたとキャナリー・ロウのどこかで読んだが、中国人たちはどこに行ってしまったのか、中華街はどうなってしまったのか、そこまで教えてくれない。今は海鮮料理のレストラン、バー、小さなカフェ、土産品店などが並び、昼間はパティオでカラマリとビールを楽しむ観光客で賑わっている。又、小説家ジョン・スタインベックが『キャナリー・ロウ』でこの通りを描写しているため、スタインベックに因んだ書店、プラザ、バーなどをよく見かける。(実際のキャナリー・ロウ通りはスタインベックの小説に因んでOcean View Avenue から Cannery Row に名前が変更されたらしい。)

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しかし私たちの目的はイワシでもカラマリでもスタインベックでもない。クラゲなのだ。

キャナリー・ロウを歩いてゆくと、モンテレーベイ水族館が見えてくる。昔から行きたかった大型水族館だ。カリフォルニア付近の沖に生息するあらゆる海洋生物が、ノアの箱舟のようにこの水族館に詰まっているのだ。10メートル近くある水槽の「昆布の森」が有名らしい。

今回の目的は、この水族館でクラゲを見ることである。隣にある海洋学研究施設で博士課程の研究をしている学校の知り合いが無料で入れるパスを貸してくれるという。(入場券は、学割だと一人付き30ドルちょっとする。)「水族館を如何に効率的に制覇できるか」みたいな戦略スピーチを長々と聞かされ、いざ水族館へ。

中に入ると、ちょうどラッコの餌やりの時間である。子供と一緒になってガラスに張り付いてラッコを観察していて驚いたのが(背が高いヘブンフィールドさんは遠慮して奥のほうから見ている…というかこれが正しい大人の態度)、ラッコのスピードと、大きさと、変なウニャウニャした動き。私の体重の半分以上あるらしい。もっと小振りでふわふわして丸っこい感じだと思っていたが、近くで見ると、まあ当たり前のことではあるが、筋肉質で歯が尖がっている。正直、ちょっと怖い。海の中で鋭い歯をむいてウニャウニャしながら迫られたらどうしよう。カリフォルニア沖に住む海老じゃなくて、ああよかった。

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魚がイソギンチャクの中に隠れている。

人気の「昆布の森」を見に行くと、何故か巨大なアホウドリが台車に乗って、水槽の前に陣取っている。カゴに入っていないため、水族館の護衛(?)が五人くらい台車の周りに立って、アホウドリが逃げないようにしている。子供たちは怖がってあまり近づこうとしない。しばらくして、「アホウドリが通ります、道をあけてくださーい」と護衛の人が叫びながら台車をガラガラ押して、アホウドリ退場。なんだったのだ。

館内の違う階から見ることができる昆布の森、kelp forest は実に幻想的。鰯が群れて銀色に煌く巨大なボールになっている。丸々としたハタや、小型のサメなどもいる。また、所々で rockfish Sebastidae、日本語だとメバル科の魚)が昆布に抱かれてぼーっとしている。種類によって色や模様が異なるが、いずれにしても割りと地味で、目がぎょろぎょろしているからかあまり可愛い感じがしない。館内の色んな水槽にエキストラのように出演していたこのロックフィッシュであるが、何年もかけて成長するらしく、80年生きるものもいるらしい。見直したよ、ロックフィッシュ。

もう一つの巨大水槽では鯖や鮪(美味しそうと思ってしまう)、サメ、エイ、ウミガメなどがスピーディーに泳いでいる。どの魚もサバイバルしている感じがあり、先ほどの揺らめく昆布の水槽とは雰囲気が全く違う。そこで孤独に一匹で泳ぐマンボーを見つけた。彼だけおぼつかない泳ぎ方だなあと思って眺めていたら、マンボー、水槽の壁にガンと突き当たる。方向転換が苦手のようだ。

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ラッコが喜びそうなアワビや、ヒトデに触れることのできるプールを発見。ウミウシやピンク色の派手なウニ、またガンギエイ科のskate の一種(名前が出てこない)もここにいる。エイは時々水面まで来て、ぴちゃぴちゃとしぶきを立てながら進み、泳ぎ方はまるでスカートがひらひらしているように見える。ダンボの耳のような動きでもある。エイの卵は英語で「人魚のお財布」というらしい。なんて詩的なんでしょう。

ヘブンフィールドさんはガンギエイをいっぱい撫でて、とてもご機嫌である。ガンギエイの皮は滑らかで少し「ふにゅっ」としているらしい。「ちょっともう一回撫でてくる!」と言って戻ってこないので、私はその間にウミウシ、イソギンチャク、クモヒトデ・・・つまりふにゅふにゅしたものを中心に一通り触ってみることにし、ふにゅふにゅ感に歓心を得る。

(周りにいる子供たちは、ふにゅふにゅ系よりもはっきりとした動きのヤドカリに興味が行ってしまうようだ。大人になったらふにゅふにゅ系の良さも理解できるようになるさ、きっと。)

Louis Roule (1935). Rajidae swimming. Public domain.

ペンギンたちは換羽の真っ最中らしく、ボサボサで少し情けない姿である。己の恥ずかしい姿をじっと堪えるようにして、目を瞑って佇んでいる。この間抜けな感じが、とても良い。

パフィンもいる。私がこの夏、鯨ウォッチングボートで命がけで(嘘)見つけたタフテッド・パフィンも、ここで飼われている。しかし、荒波を平然とサーフィンするタフテッド・パフィンを見つけた時の感動はここでは起きない。ヘブンフィールドさんはヘブンフィールドさんで、ガラス越しに見る海鳥に違うがっかりを感じている。「アラスカで見たパフィンの方が可愛かった。この子たちはあまり可愛くない」と、理不尽な文句を言っている。



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パフィンでがっかりした後、クラゲの部屋にやっとたどり着く。

展示室に名前が付いている。それも「ザ・ジェリー・エクスペリエンス」で、「これは上手い!」と二人で感激する。Jelly はクラゲの愛称で、「ザ…エクスペリエンス」は明らかに The Jimi Hendrix Experience にかけている。展示室では60年代風のサイケデリックロックが流れており、彩り豊かなクラゲたちがラーヴァランプのように妖しげに動いている。

クラゲと言えば、ドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルを思わずにいられない1904年に出版された Kunstformen der Natur に描かれている幾何学的なクラゲやイソギンチャクや海綿動物を思い出してしまうのだ。(英訳は Art Forms of Nature 。邦題は『生物の驚異的な形』とある。)

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Haeckel, Ernst (1904). ''Siphonophorae.'' In Kunstformen der Natur.

ヘッケルのモノグラフがそのまま動き出したようなクラゲたち。探さなくてもプランクトンが降ってくる水槽の中で、平和に過ごしている。色々な種類が一度に見られてとても満足である。さすが、ザ・クラゲ体験。

あまり知られていないと思うが、ヘッケルはクリスマスのグリーティングカードの挿絵を描いていたことがある。そのカードにもクラゲがわんさか登場している。例えば、これ。


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まず注目すべきところは、男の子がクラゲを凧にして遊んでいるところである。なんてシュールなのだ。しかもクリスマスだと言うのに妙に薄着ではないか?これはどう考えても、春に公園の池で紙ボートを浮かべる服装である。突っ込みどころ満載だけれど、クラゲへの愛がひしひしと伝わってくる。こんなカードがうちに届いたら、とても嬉しい。

他にココナッツ・タコ(coconut octopus )が歩くのを見たり珊瑚に潜むイカを探したりしていたら、もう5時間以上経っている。そういえば腹ペコだ。

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キャナリー・ロウを後にし、車で20分ほどの違う町にある Phil's Fish Market という店で晩御飯を食べることに。サンフランシスコが発祥地の、チョッピーノ( cioppino )というトマトベースの魚介類シチューを頼む。体が温まる、ガーリックブレッドと一緒に食べたいシチューだ。フィルズのチョッピーノのレシピを参考に、家で再現してみようと思う。


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by majani | 2014-10-26 08:36 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

ナンデモアリフォルニアの絶滅動物

ワイナリー巡りをしていると、カリフォルニア州の旗を見かけることがある。殊にソノマでは多い。特徴的な熊の絵は多くの人に馴染み深いと思う。少し内股で、重い足取りの熊は、図案化されているにも関わらず、今にも動き出しそうだ。

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Flag of California (public domain).


1911年に「カリフォルニア共和国」の旗として制定されたものだ。といっても、旗の起源は、もう少し歴史を遡る必要がある。1846年に、当時メキシコ合衆国の領土であったアルタ・カリフォルニアから分離独立を図ったアメリカ人住民が蜂起し、ソノマを拠点に「革命」を起こした。その革命の象徴となった熊の旗が後に、私たちに馴染み深いナンデモアリフォルニアの旗になるというわけだ。1846年の反乱は Bear Flag Revolt (「熊の旗の反乱」)と呼ばれる。

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Original Bear Flag (public domain).


先日ワイナリーを訪れ(あいにくソノマは行かなかったが)、6月14日が Flag Day (国旗の日)ということもあり、ナンデモアリフォルニア人の人魚姫さんとカリフォルニア州の旗の話をしていた。とてもツマラナイ会話になりそうだが、そうでもない。この熊、実は絶滅動物だということを最近知ったからだ。

グリズリー・ベア(ハイイログマ)だと勝手に思い込んでいたが、旗の熊はカリフォルニア・グリズリー・ベア(カリフォルニアハイイログマ)である。愛称でゴールデン・ベア(黄金の熊)とも呼ばれる。最後に目撃されたのは1924年だから、絶滅したのはけっこう最近だ。因みに、旗の熊は、アレン・ケリーという新聞記者が1889年に捕獲したカリフォルニア・グリズリーの「モナーク」ちゃんがモデルとなった。

しかし昔の人って、色んなことをしているなあと思う。詩人だけど発明家でもあるとか、医者だけど冒険家でもあるとか。新聞記者だけど、熊も捕まえてやるぜ、ってスゴイことだと思う。私の学部の教授も週末は、研究と関係ないスゴイことをしているのだろうか。学者だけど週末はサンフランシスコのマーケット街でジャグリングを披露しているのです、とか。

カリフォルニア・グリズリーのラテン名は Ursus arctos californicus だ。Ursus はラテン語で「熊」という意味だ。これは聞いたことのある人もいるだろう。例えば星座の大熊座は Ursa Major という。Arctos はギリシャ語の「熊」。つまり、カリフォルニアのグリズリーは文字通り、カリフォルニアの熊(熊!)なのだ。

しかし最近までは Ursus arctos horribilishorrible な、恐ろしい熊)、つまり普通のグリズリーと同じ分類だったらしい。これも不思議だ。ある日突然、「こいつはもしかして違う種なんじゃないか?よし、もう少し丁寧にDNAを分析してみようじゃないか」と思い立った学者がどこかにいたわけである。何故そんなことを思いついたのだろう。動物の分類の歴史も奥が深い。


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今日食べたものとか。
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by majani | 2014-06-03 17:56 | 動物王国 | Trackback | Comments(0)

ナパとワインとヒクイドリ

久々にナパに行ったら、ヒクイドリに出会った。

ナパバレーはソノマとロシアンリバーバレーと共に有名なワイン生産地である。ざ・ふぁーむからは、車と時間さえあれば、毎週末ナパに行くことも可能だが、私は年に一、二度しか行かない。

さんさんと陽が降り注ぐ好天。オフシーズンなのでブドウは生っていないものの、辺り一面が小さな緑のブドウの木の列で、これもまた良い。車窓からブドウ畑を楽しんでいると、ナパバレーの「ワイントレイン」がゆっくりと反対側からやってくる。レトロな感じの電車で、食堂車できちんとしたテーブルクロスと銀製食器で優雅に食事をする乗客が見える。

外へ出てみると、雲が一つもない。この陽射しがブドウを美味しくするのだろうから、私も陽射しを少し浴びておこう。

ナパで過去にいくつかのワイナリーを訪れているが、今回行った V. Sattui Winery(V.サットゥーイ・ワイナリー)は初めて。普段はガイドブックに載っていないような小さめのワイナリーを好むけれど、サットゥーイは、週末だったこともあり、外の crush pad (クラッシュ・パッド)の近くでバーベキューをしており、ピクニックエリアも設けていた。オークの涼しい木陰でランチとワインが楽しめる。トイレの行列には憤慨したが、たまには大勢の人が集まって和気藹々としているワイナリーも良いなあと思った。

15ドルで6種類までワインが試飲できる手頃な価格。白ワインが沢山開けてあったのか、ワインテイスティングの係りの人に、白ワインばかり色々薦められる。こちらは意地を張って赤ばかり飲む。結局のところ、キャベルネたちが一番美味しかった。「旅に待ったなし」だから、記念に甘いデザートワインを購入する。

試飲のカウンターにワインリストが置いてある。テイスティングをしながら友人とそれに目を通していると、なんだか変なコピーばかりである。例えば、「このワインは革ジャンに纏われたラブソング」だとか、「革表紙の本」だとか。いずれもあまり美味しそうな感じがしない。ハニーサックルもよく説明に使われている。(因みにハニーサックルは、とても甘い匂いがする、詩や歌詞などにも使われる身近な花。日本語だとニオイエンドウ、又は西洋スイカズラというらしい。)あれもこれも、どのワインもハニーサックルの香りがするらしい。そう・・・かなあ?

「革ジャンに纏われたラブソングの味する?」と友人に聞いたら、

「ラブソングの味は分からないけれど、革ジャンの味が若干する」と言う。

革は、タンニンが多いということだったのではないだろうか。こんないい加減な説明で良いなら、私だってワインのキャッチコピーくらい書けそうだぞ、と思いながら一軒目を出る。

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Simon, André Louis (1927). “Bottlescrew Bill.” In Bottlescrew Days: Wine Drinking in England during the Eighteenth Century.

さて、次に肝心のヒクイドリに出会うことになる。

ナパ北西部のカリストーガに、Castello di Amorosa (カステッロ・ディ・アモローサ)という城がある。何故ナンデモアリフォルニアに立派な城があるのかというと、物好きなイタリア系アメリカ人が、イタリアのトスカーナ地方に魅せられて、その中世時代の城を似せて造ってしまったからである。本当になんでもありだなあ。

確かに城の周囲に堀があったり、中世っぽい(適当)城壁があったりする。パンフレットをもらうと、この物好きなアメリカ人というのは、先ほどのワイナリーを開いたダリオ・サットゥーイだということが判明。長年ワイン作りをしていたおじいさんの名前をワイナリーの方の名前に使ったようだ。このカステッロのパンフレットがまた面白い。城を背景に、ダリオが大きなジャーマンシェパードに跨り遠くに目を凝らしている、絵画的にエアブラッシュされた写真が載っている。何故、犬に跨っているのだろう。ダリオは遠くの何を見ているのだろう。しかしダリオより、もっと城自体をアッピールしたほうが良いのでは。いろいろ考え込んでしまう。

城内のチャペルに迷い込むと、フレスコ画っぽい絵が壁を覆っている。このフレスコ画「っぽい」というのがミソで、実はフレスコ画ではない。キッチュな感じが良いのかしら。大食堂にも同じような工夫があり、中世イタリア人「っぽい」キャラクターが壁に何人も描いてある。畑仕事をする農夫とか、茂みの中で愛人と抱き合う貴婦人とか、その様子を隠れて窺う小柄な男とか、どの人物もそれ風の役をこなしている。しかし、「本当のイタリアのお城じゃないから」と知ってしまっているせいか、どの人物もなんだか取ってつけたように畑を耕したり愛人を抱いていたりするように思えて、大笑いしてしまいそうになった。

さすが中世の城に似せたカステッロ、拷問部屋があるとパンフレットにある。ずっと昔、ロンドンタワーに祖母と母と三人で訪れたとき、拷問部屋を覗きたかったが、改装工事中で立ち入り禁止になっており、とても残念な思いをした。ロンドンタワーで見逃した拷問道具をじっくり拝見するチャンスが、なんと、ナンデモアリフォルニアの城で再び巡ってきたか!と思い、行こう行こうと友人を急かしたら、ツアーに入っていないと見られないらしく、拷問部屋に向かう廊下がロープで断ち切られていた。一瞬、ロープを乗り越えてやろうかと思ったが、律儀で正直者の友人がすぐそこにいるし、ふと下を見たらインド人の小さな子供が私のことをじーっと見ている。今回は諦めた。

城の地下のワインテイスティングに向かう途中、廊下に変な器具が置いてある。拷問道具かもと思って近寄ってみると、ダリオがトスカーナの畑で拾ってきた(買ってきた)とても古いワイン関係の(たしかワインキャスクを作るための)器具らしい。トスカーナまで足を運んで、頑張ってるじゃないか、ダリオ。

ワインテイスティングをしながら友人と延々と話し込んでいると、冷やかしで来ていると係りの人が察したのだろう。「混んでいるので、ワインを決めたなら…」と濃いイタリア人アクセントで冷たくあしらわれる。何も買わないまま、追いやられる。

ところで、ここのキャッチコピーは普通だったが、ワインのネーミング自体が面白かった。全てがイタリア語名で、括弧の中に英訳が入っている。その名前が「ナイス」、「ジョイ」、「スイート」等。日本酒を「良いね」とか「嬉しい」とか名付けるようなものだ。そうか、ダリオはベタな人なんですね、きっと!ここで全てのことが納得いく。「革ジャンのラブソング」を書いたのもダリオなのでは。よくよく考えてみれば、カステッロ・ディ・アモローサは「愛の城」?う~ん。

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私のスマホに興味を示すヒクイドリ君。近くで見ると、目が恐竜みたい。絶滅動物のモアも、こんな目をしていたのだろうか。

ここで一番良かったのが、現地で作っているグレープシードオイルと、城の外で飼われているヒクイドリ。確かに中世の城には動物が飼われている場所とかあっただろうけれど、なぜオーストラリアのヒクイドリ(エミュー)がここにいるのだろう。ヒクイドリも謎だが、そこらを走り回っている雷鳥のつがいも不自然。他に、ヤギ、羊、ガチョウなど、もう少しヨーロッパっぽい生き物も。

一日中ナパにいたのに、一枚だけ撮った写真がヒクイドリの写真って、どうしてしまったことか。写真を撮る間も無く楽しい一日だったのだろう。

ちょうど日が暮れ始めた頃、サンフランシスコ方面に引き返す。帰りは「ワイントレイン」を見かけない。


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by majani | 2014-06-02 16:14 | 旅に待ったなし | Trackback | Comments(0)

シリコンバレーってどうよ

土曜日、ナンデモアリフォルニアのシリコンバレーでスタートアップ会社を立ち上げた友人の誕生日パーティーに行った。

人魚姫さんとパーティー用のケーキを焼く約束をしていたので、ああなんて面倒くさい約束をしてしまったんだろう、何故昨日『刑事コロンボ』なんか観て夜更かししてしまったんだろうと嘆きながら、待ち合わせ場所のカフェに向かう。

このカフェがまたとても良いカフェで、外のちょうど日当たりが良い場所に沢山テーブルがあり、店内はビッグバンドジャズがかかってたりして、ちょっと気取っているけれど、チーズケーキがとても美味しいので許してしまう。隣はインディー系(?)の良い感じの本屋さん。(本が大好きでたまらなくて、通いつめていた近所の本屋をそのまま買い取ってしまったという個人オーナーの書店。)外のカフェテーブルに座って、コーヒーかグラスワインを飲みながら今買ったばかりの本に没頭できる。ノートを開いて仕事をしていてもちっとも嫌な顔をされないという利点もある。

そこで人魚姫さんとマドレーヌを食べながら、どんなケーキにするか会談する。スタートアップの友人はさっぱりしたものが好きなので、Silver Palate Cookbook (シルバー・パレット・クックブック)で見つけたサッパリ系のオレンジケーキに決める。この間、料理に関しては無頓着と書いたが、ケーキ作りなんかになるとなおさら。まずバンドケーキ用の型を買うところから始まる情けなさ。しかも台所の電球が切れている。近所の工具店で電球とバンドケーキの型を買い、トレーダージョーズで他の材料を集める。

ところで、小さな工具店でケーキの型が買えるってすごいよ、ナンデモアリフォルニア。俺はDIYが好きだけど、週末はタルト・タタンも焼くぜ!みたいな人が大勢私の近所に住んでいるのだろうか。是非、会ってみたい。

シルバー・パレットは、「一冊しか料理本を持たないんだったらこれにしなさい」と言って母がくれたもので、バターとかオリーブ油とかが付いてガベガベになっているページもあるけれど、それはとても重宝している証拠、きっと。ずっと昔に出版された本なので、ミキサーがなくても作れるデザートが沢山載っており、とても助かる。ミキサーが無いので。

レシピに “Cream the butter” と書いてあり、意味が分からないまま「多分こういうことかな、多分そうだ」と湯船でバターを溶かし始めたら、人魚姫さんに怒られた。クリーム・ザ・バターとは、フォークを使って室温に戻したバターをさくさくと砂糖と混ぜることらしい。溶けたバターはノーグッドらしい。この年になって、初めて知りましたよ。

クリーム・ザ・バターのことで「あなたは駄目ねぇ」なんて得意げになっていた人魚姫さんがオレンジソースを焦がすという大失態。ケーキが焼けるのを待っている間、二人でワインを飲み飲みフランスのテレビ番組 Les Revenants に夢中になっており、ソースをかけていたのをすっかり忘れてしまった。アパート中が煙に包まれ、今日になってもまだなんとなく焦げたオレンジ臭い。ソースは『オズの魔法使い』で悪い魔女が溶けてしまった跡みたいになっており全く使い物にならず、ケーキの上に粉砂糖をふって綺麗に見せることにした。けっこうどうにでもなる。いいぞ、シルバー・パレットのレシピ。


そういえば、ケーキの話じゃなくて、シリコンバレーの話がしたかった。


28歳になったスタートアップの友人は、大学卒業後、一度も働いたことがない。じゃあどうやって生活していたのかというと、ポーカーで稼いでいた。たまにラスベガスに消えては、「最近儲かったから、パーっと行こう」みたいなことを言ってナンデモアリフォルニアに舞い戻ってくる。

ビジネス経験もテック企業経験もないのに、テック系スタートアップを始めた友人。投資家は、ここら辺のバーで知り合ったベンチャー投資家。「こういうアイディアがあるんです」とお金持ちそうな人に話しかけてバーをまわっていたらしい。先日オーケーキューピッドについてチラッと話したが、友人の話によるとティンダー (Tinder) というアプリも大変人気であり、彼のスタートアップ会社が開発したアプリは「就活用のティンダー」らしい。彼のアプリがシリコンバレーで根付くかどうかは別として、とにかくアプリが完成してめでたいめでたい。

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スタートアップの前、友人は人生で初めての就職活動を行なった。そして、人生で初めての面接が、シリコンバレーの超有名ベンチャー投資会社の社長との面接だった。

「僕は長年プロのポーカープレイヤーをしてきましたが、最近ベンチャーキャピタルに興味を持ち始めました。僕はとても社交的で、努力家でもあります。○○社でもっとベンチャーキャピタルのことを学びたいと思います。もし良かったら、僕と会ってくれませんか?」という内容のメールを送ってみたら、「こいつは度胸あるな」と思った社長自身からの返事があり、面接の約束をしたとか。

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そして今。ダブリンオフィスにて。

最終的に就職には結びつかなかったけれど、「元プロポーカープレイヤーです。もし良かったら、会ってくれませんか?」というカジュアル過ぎるメールが面接に繋がったということが信じられない。

この類の話はシリコンバレーでよく聞く。ざ・ふぁーむで教育を受けたエンジニアやコンピューター科学者など、所謂技術士が高く評価されもてはやされる一方、経験がなくても良いアイディア・やる気・度胸さえあれば、一度会って話し合おうじゃないかというエートスが多くのテック企業やベンチャー投資会社に浸透している。私自身は、良いアイディアはもちろん、過去の経験というか研究の成果や出版物がものを言う分野なので、このシリコンバレーのエートスが不思議でならない。ある意味、アメリカン・ドリームである。開拓者の国、ナンデモアリフォルニアであるのも、理にかなっている。

もっとも、友人のような面白くて賢いシリコンバレー・タイプがいる分、やる気だけで頭が空っぽ…という感じのシリコンバレー・タイプもうじゃうじゃいる。が、中に今までのテクノロジーを覆すような凄いアイディアを一つ抱えている奴がいると信じたい。たった一人でいい。

 

因みに、オレンジケーキはとても美味しかった。


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by majani | 2014-05-01 16:59 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)

なんでもありふぉるにあ

ここしばらく、「ざ・ふぁーむ」というあだ名がついているカリフォルニアの某大学院で奮闘生活を続けている。ここに来るまでは、カリフォルニアについて何も知らなかったし、興味もあまりわかず、ワインが美味しそうとか陽射しが強そうとか、カリフォルニアの住人は人がよさそうとか、漠然としたつまらないイメージしかなかった。引越しが決まりやきもきしている時期、ふぁーむと呼ばれているんだから、ひょっとしたらラマとか馬とか飼っている学校かもしれないと思った。ぜひともラマを触ってみたい。学業が辛いときに癒されたい。


着いてみると、ラマも馬もいなかった。実に嘆かわしいことである。サボテンがにょきにょき生えていることに感激するも、哺乳類といえば妙に大きいアライグマと巧妙なフットワークを見せびらかす嫌味なリスくらいしかいないではないか。全然ふぁーむっぽくない。いや、むしろラマよりアライグマがいたほうが農場っぽいのかもしれないが、都会育ちなのでそこらへんは怪しい。


よくよく考えてみれば、カリフォルニアにラマなんかいるのだろうか。今なおカリフォルニア州自体にあまり興味がないので調べていないが、とりあえず私の活動範囲内にいないことは確かだ。


こうして、ラマがいない生活が始まる。


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by majani | 2014-03-30 19:10 | ナンデモアリ | Trackback | Comments(0)


ナンデモアリフォルニアの某大学院で研究中。海外生活、旅、散歩で出会った生き物などの記録です。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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