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135,700,001番目

2020年は何だったんだ一体。まだ唖然としながら、猫とエビと寝正月。

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米報道はワクチンの話題(とトランプが数週間後、ちゃんと立ち退いてくれるのかという疑問)で持ち切り。

自分の年齢・職種・リスクカテゴリーなどを記入するとワクチンの順番がいつ回ってくるか予想してくれるという、ニューヨークタイムズ紙の "Find Your Place in the Vaccine Line" をやってみた。私の前に全国で約135,700,000人いるという結果が出た。・・・ん、つまり?数字が大きすぎてピンとこないけれど(こんな整理券もらいたくない)夏休みくらいには私のデモグラフィックに回ってくるかなあ程度の漠然とした気持ちでいる。

オペレーション・ワープ・スピードなんてSF漫画みたいな名前が付いた米国のワクチン政策であるが、実際は不完全なコーディネーションでぐずぐずしている印象が強い。今年は、さっさとワクチンを打ってもらって、雰囲気だけでもいいから「普通」の生活を送りたい。

明けましておめでとうございます。
不定期な更新ですが、今年もどうぞよろしく!



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# by majani | 2021-01-03 04:26 | 絵葉書もどき
毎年恒例の秋の神隠しに遭っていた。パンデミックのせいで忙しさ倍増の秋学期だった。

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春からほぼずっと、自宅・食料品買い出し先・誰もいないハイキングトレールの三カ所くらいしか行き来していない。人間は社会的動物だというので、少し退化していてもおかしくないくらい一人の時間が多い一年だった。(相棒リルケはガラガラの職場に車で通い、個室オフィスに籠って研究と授業を行っている。私は自宅で仕事をしていて、何カ月もキャンパスに足を踏み入れていない。)通勤がなくなったり、毎年通っている学会がキャンセルされたり、ホリデーパーティーがズームで行われたり、一日、一週間、一年の節目がすべて失われてしまった2020年。時間の流れの感覚が狂ってしまい、遅いようであっという間だった。

今日はそんな時間のロスについて。

話は真夏のある夜に遡る。新学期のため全国中から学生が舞い戻ってくる時期を迎えようとしていたボストン。家で籠城中の私は、ユーチューブが何故か勧めてきた水槽の動画をなんとなく観た。そして、俄然アクアリウムを始めたくなった。

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というわけで、水槽を立ちあげた。

子供の頃に色々な熱帯魚を飼育していたことがあり、経験ゼロではないのだが、このブログさえ放置しがちなのでしっかり管理ができるか心配。なので少しお勉強をして、フィルターもポンプもCO2も肥料も全てが不要だという、ローテックかつローメンテナンスな水槽にしたいと思った。つまり、放置プレイできるアクアリウムである。

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小規模な2.5g(9.5ℓ)の水槽・・・というか Anchor Hocking の普通のガラス瓶を購入した。

米国では水槽って意外と高いのですよ。お手並み拝見(?)ということで、まずは瓶でいいやと思った。お洒落に言うならばボトルアクアリウム。

光、土、水、水草と生体だけで、小さな生態系を作りあげていくのが目的である。この究極のローテック方式は、1999年に出版された Ecology of the Planted Aquarium の著者Diana Walstad が広めたことによって、ウォルスタッド・メソッドと呼ばれることもある。下記の記録は、私がウォルスタッドの本とウェブサイト( 主に https://dianawalstad.com/aquariums/ の « Small Planted Tanks for Pet Shrimp »という記事)から情報をかいつまんで実践した結果なので(失敗談含む)、ものすごーく投げやりな説明だということを先ず大声で断っておきたい。私もアクアリウム放置プレイしたい!という方には、実証されたサイエンス満載のウォルスタッドの著書を直に参考にしていただきたい。

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オーガニックの土(人工肥料が入っていない物が重要)をふるいにかけ、水槽の底に1インチ程度敷く。少し濡らして割りばしなどで空気を逃がし、上に普通の砂利を1.5~2インチほど敷く。カルキ抜きした水を入れる。水と砂利だけ入った状態で2日ほど放置(容器の水漏れチェックになると同時に、水の濁りが落ち着く)。3日目、水草を植える際に初めての水替え。

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水草を植え始める。少しだけ水が入っている状態がやりやすかった。

さて、窒素循環(nitrogen cycling )が完了するまで(つまり水のバランスが取れるまで)1〜3ヶ月ほどかかるとのことなので、水草を植えてから1ヶ月ほどそっとしておいた。良いバクテリアの繁殖を促すため、水替えはちょびちょび、定期的にする程度だ。

この序盤のポイントは、多種の水草をいっぺんにうりゃうりゃうりゃあ!と沢山植えること。自分のコントロール外である地域の水道水や気温によって向き不向きがあるので、とにかく色々ぎっしり植えてみる。私は成長が早い水草を多めに選んだ。また、コウキクサ(Lemna minor)やアマゾンフログビット(Limnobium laevigatum)など水面に浮かぶ種類を一つ取り入れると、丁度いい具合に光を遮ってくれるため、不安定な初期でもアオミドロやコケが発生しにくくなるとのこと。

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右から:Micromeria brownei ('Creeping Charlie'), Rotala rotundifolia ('Rotala indica'), Ludwigia repens, Bacopa monnieri ('moneywort', 'water hyssop'), Saggitaria subulata。袋に入っているのは、上が池の表面などによく浮かんでいる Lemna minor ('common duckweed') 、下が Anubias nana の petite というバラエティ。

オンラインで注文した水草は、スーパーのスパイスセクションでも簡単に手に入る alum を溶かした水に一日放置し、スネイルの卵を除去する。…といっても完全な処置ではないので、けっきょく二、三匹の pond snail を後に発見することになるが、苔取りチームとして残ってもらった。羊のくるくるした角のような殻がかわいい。半透明の殻の中に薄いピンクの渦が見える。

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植えた初日の様子。水が白く曇っているのは、バクテリアブルームが起きているせいだと思われる。数日のうちに自然に消えるので、これも放置。ルドウィジア以外、全ての水草がぐんぐん成長してぼんぼん増えてくれた。アヌビアスは現在違う瓶に移動させてある。

ところで窒素循環とは何ぞや。枯れた植物、生体の排出物、土などから発生するアンモニア → 亜硝酸塩 → 硝酸塩という具合に、硝化専門の善良なバクテリアが、熱帯魚や甲殻類に毒であるものを次々と変換してくれて、それを最終的に植物が肥料としてまた取り込み、水が自然にメンテナンスされる・・・はず。この窒素サイクルが自然に行われるようになった時、初めて生体を投入する。

窒素循環のプロセスをスピードアップするために市販のバクテリアスターターやアンモニア液(?)を利用する人もいるようだが、私の瓶・・・いえ、ボトルアクアリウムの場合、とても小さいし、のんびりとやっていたので、何も使わず観察していただけ。何かしら土や草にいるでしょバクテリアと安易に考えていたら、実際に割とすんなりサイクルが完了した。ラッキーだった。

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一カ月経過のアクアリウム。

さて、ここからいきなり大惨事なのだ。水が安定したので、一ヶ月ほど経った時に、若いヤマトヌマエビを三匹迎え入れた(米国では、日本人のアクアスケーパー、アマノ・タカシ氏に因んで、アマノ・シュリンプという名称で売られている)。水合わせも上手くいき順調だったのだが、ある日、カゲロウのヤゴがぽつぽつ現れ始めたのである。水草の茎に忍ばせてあった卵から孵ったのだと思う。

ヤゴは小さなすらっとした姿をしていて小魚やエビちゃんを瞬時に捕らえて食す水中の魔物。2匹ほど追い回して退治したが、やがてエビちゃんが3匹ともやられてしまった。

ものすごく気の毒なことをしてしまった。でもこれも自然の摂理。

しばらく悲しみに暮れて仕事に没頭していたのだが、気が付けば水槽立ち上げから3ヶ月経っていた。さすがにヤゴはもう出ないし、水草もスネイルたちも元気そう、水質は抜群。またエビちゃんに挑戦してみようという気持ちになった。

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3ヵ月経過。なんだかごちゃごちゃしているけど、みんな元気そうだから、まあいいや。Hairgrass を少し剝いて Staurogyne repens、Alternanthera reineckii 'mini'、Glossostigma elantinoides を前景に加えた。後ろの松の木みたいなのは、私が勝手に森で拾ってきた苔を枝に括り付けたもの。実験的に突っ込んでみたらうまく育った。

今月の頭、新しくレッドチェリーシュリンプを買ってきた。

学名は Neocaridina davidi といい、赤、黄、茶、青、緑まで、絵の具で塗ったような不自然なカラフルな種類がある。「サクラ・オレンジ」なんていうバリエーションまで。(なんだサクラオレンジって、ピンクじゃないのか!と突っ込みどころ多いネーミングがある世界。)普通のレッド版を迎え入れた。

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水合わせは、ルッコラが入っていたプラスチック容器を使い、サイフォン式で2時間かけて慎重に行った。10分毎に古い水を少し抜き、水量が元の倍くらいになったらネットで掬い出して水槽に移す。

昔は「水合わせ」というと魚が入ってきた袋をちょいと水槽に浮かせておくくらいのことだったのに、ホビーも進化しているのだなあと感心しながらサイフォンが終わるのを待った。

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ホッ、元気そう。

その後、飼い猫が具合を悪くしたため動物病院にすっ飛んでく事件や(ただの風邪で、今は元気な状態に戻っているのでご心配なく)仕事のゴタゴタなどが一度に到来し、餌の世話以外エビをあまり気にしていなかった。その間に、二匹の姿が見えなくなってしまった。おとなしい感じの二匹だった。水質には問題ないので、おそらく環境の大変動に馴染めず死んでしまったのだろう。残念。(でもヤゴの時よりはショックが少ない。)

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残る二匹は数週間経つ今も仲良く元気にやっている。見分けがつき、なんとなく性格も違う。うちにやってきてから、色もイキイキとしてきた。時々アーモンドの枯れ葉を入れてやったり、野菜の切れ端をやったりするのが些細な楽しみ。さっと湯がいたケールや芽キャベツが好評。

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エビは、キャンディケーンのような島縞模様の脚をひたすらしゃかしゃか動かしながら、流木をうっすら覆うコケや草の根に住む微生物などを食べる。せっせと餌をかき集めるその姿は、草をひたすらむしゃむしゃやっている牛にどこか似ている。この長閑な風景、延々と見ていられるのだ。「よーし、ちょっとだけ休憩してエビを見よう」と瓶に顔を向けると、「あれッ、夜?!」と2時間がどこかに消えていることがある。エビをぼーっと見ているうちにリルケが帰宅し、「まじゃーにさん、暗い部屋で何やってるの」と声を掛けられてトランスから解放されたこともある。

レッドチェリーシュリンプはタイムワープ能力を備えているのだろうか。

私は漫画を読んでいてもタイムワープをすることがあるので、エビをハギオちゃんとテヅカちゃんと名付けた(二匹とも雌)。

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ところで、水草にヒッチハイカーとしてやってきた、ごく普通のスネイルたち。私はボトルアクアリウムで火が付き、先月、10g (38ℓ)の「ちゃんとした」水槽でウォルスタッド式のセットアップを始めたのだが、窒素サイクルを促すためにスネイル(の糞)に協力してもらった。上はその新しいアクアリウムの一部。スネイルは、瓶のガラス、草の葉、流木の表面をずっとのそのそのそのそ無言で這っている。これも私は延々と見ていられる。

そしてスネイルも、ある意味タイムワープをしている。

Jakob von Uexküll の生物学の古典『生物から見た世界』に、カタツムリを使った実験の例が載っている。ゴムボールに乗った被験者(研究者に捕まってしまった不運なカタツムリ)の殻を洗濯ばさみで固定すると、カタツムリは匍匐運動を妨げられずに、同じ場所にとどまっている。そこで足元に小さな棒をあてると、カタツムリはその上によじ登ろうとする。また、この棒で軽く三、四回突っつくと、カタツムリは上がろうとしなくなる。しかし棒の動きの速度を変えることによって、カタツムリの行動が異なるのが面白い。一秒に四回以上叩くことを繰り返すと、カタツムリはまた棒によじ登ろうとするのである。「カタツムリの環世界では全て一秒に四回以上振動する棒は、静止した棒になっている」からだ。「環世界」とはカタツムリが客観的な環境の中の諸物に意味を与えて構築している主観的につくりあげた世界であり、その中ではカタツムリの知覚時間は一秒に瞬間が三つ、多くて四つ、という速度で流れていると推論される。

私たちが目まぐるしく瓶の外側で朝ごはんを食べたり、パソコンのキーボードを打ったり、大統領選の討論会を観てこぶしを振ったりしていたのは、スネイルたちの目には僅かに震える光と色の塊にしか写っていないのかったのかなあと思う。

因みに、この本はGeorg Kriszat 他による奇妙な絵や図解がスゴク面白い。ベルリン1934年版は『見えない世界の絵本(Ein Bilderbuch unsichtbarer Welten)』 という相応しいサブタイトル付きで出版されている。また、生物の行動は刺激に対する物理反応だけではなく環世界があってのものだという考えは、私がサファリさんと読んだ蛸の本にも登場していた。古い本をたまに手に取ってみると面白いなあと、年末年始はいろいろなジャンルの古典を読み返して静かに過ごす計画だ。

タイムワープを繰り返す、ガラス瓶の緑の小宇宙。しかし「サジタリアがまたこんなに伸びた!」「アラザンみたいだったスネイルがこんなに大きく!」と、時間の進行をはっきり刻んでくれていたことも確か。季節感ゼロの2020年、目に見える時間の流れをこうして作り出すことによって、「楽しい」「面白い」と感じるのはもちろん、より生産的に過ごせたのではないかとも思う。ありがとう、エビちゃん、スネイル陣。

というわけで(?)私はエビと年末年始をタイムワープしてきます。皆さんもどうぞ安全で、よいお年をお迎えください。


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# by majani | 2020-12-31 02:44 | 動物王国
時間が少しあいてしまったけれど、去年のローマ旅行をしつこく振り返っている。

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前回のマッシモ宮と目の鼻の先にある、古代ローマのディオクレティアヌス帝浴場の跡を見てきた。

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こちらが入口。のこのこ入っていった時は分からなかったが、思いがけず広い敷地で、大浴場の跡・美術品・歴史資料と庭園の三つのエリアに分かれている。

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美術館ウイングには、吹き抜けがある開放的なホールや、両側に古代ローマの装飾品が展示されているスカイウォーク的なルートがあり、面白かった。

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これでもか!これでもか!という量の展示品で、お手洗いの出入り口にまでこのような立派そうなモンが説明もなくどかーんと置いてあったりする。政治家だろうか、ローマの重鎮という雰囲気を醸し出す人物たちが神妙にテーブルを囲う。もっといろいろ知りたいけれど、トイレの隣の無名の遺物なので真相は闇の中。

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こちらは美術館が多数所持する骨つぼの一つ。(壺というより箱の形をしている。)ローマの創立神話として有名である、狼に育てられた双子ロムルスとレムスが中心に描かれている。このモチーフは骨つぼはじめ様々な美術品に登場する。

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キリストを表す魚のシンボルが ichthys(左の魚の真上、古代ギリシャ語で「魚」)の文字と彫られている別の骨つぼの一部。キリスト教がすでに広まり始めていたのがうかがえる。ちなみに古代ギリシャ語で「神の子イエスキリストは救世主」という言葉の頭文字をそれぞれとると「魚」と綴るので、魚がキリストの秘密の(?)シンボルとなった訳だ。キリストが「人間を捕る漁師に」なれと説いて漁師たちをリクルートした逸話(うろ覚えなのでちょっと違うかも)から来ているのだと勘違いしていた。

さらに雑談だけれど、ichthys は現代英語の ichthyology (魚類学)に使われている。へええ言葉のルーツって面白いねパンテオン云々というまとまりのない過去の記事はこちら

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これは私でも描けそう、と思うものも。

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ある湖の跡地から発掘された出土品。これは確か敵に呪いをかける儀式を行うためのランプだかティーポットだったと思う。撫でたらジーニーが飛び出てきそうな形をしている。決してメインストリームではなかったが、こういったおまじないを行うウィッチドクター的な人たちがいたそうな。おはじきみたいな物も交ざっている。

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こちらの犠牲者アントニウス、何か知らんがスゴイ恨みを買ったらしい。大昔の人のことながら、アントニウスどうなっちゃったんだろう大丈夫だったかなと、ぼんやり思う。

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この踊り場で学会を終えたリルケと待ち合わせをしている。リルケは汗が滲んだシャツとゲッソリした顔で現れた。

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少し外の空気を吸いましょうと中庭へ出ることにした。オレンジタビーの野良猫が日陰で涼んでいる。

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やっとこの博物館のセリングポイントにたどり着く。これが古代の銭湯の跡地である。銭湯というか、現代のジム施設みたいに背が高く開放的な建物だったことが分かる。

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人が少ないのでスケールが伝わりにくいかもしれない。しかし真っ青なローマの空に届きそうな壁面。その規模に驚く。

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マッシモ宮殿でも多く展示されているスタイルのモザイク画が登場し始める。次の部屋へ入っていくと、

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・・・オーケストラ?

モザイクの男を真似するように美しいチェロが床に横たわっている。蝶ネクタイをしたミュージシャンが私たちを通り過ぎて行き、外の庭で煙草に火を点けた。今夜、ここでコンサートが開かれるようだ。

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エコーチェンバーのようなこの部屋でチェロの音が流れたら身体の底から音楽を感じ取ることができるのだろうねえとリルケと話しながら、古代の大浴場を後にした。

聴いて行きたかったけれど、身体の底がこの時欲していたのはチェロの官能的な深い音色ではなく、もっぱらパスタとワインだった。

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他いろいろハプニングがあったのにだいぶ端折ってしまった。ひとまずローマ回想はこれで終わり。
またぽつぽつ思い出すことがあったら、その時はその時ということで。




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# by majani | 2020-12-28 09:47 | 旅に待ったなし

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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