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新しいフーコー

今週の哲学のセクションは拷問と死刑の話をする予定だ。生徒たちに読ませている論文で、フランスの思想家ミシェル・フーコーやモンテーニュを引用している学者がいたので、そういえば自分のフーコーの本はどこにやったかなと家中をひっくり返してみたところ、一冊も出てこない。オフィスに隠れているのか、ニューヨークか日本に置いてきてしまったのか、わからない。

せっかく早起きできたのだからすぐ仕事にかかればいいのに、何故かアマゾンでフーコーの本ばかり見ている。仏語版は大学時代使っていたものがどこかにあるはずなので、良い英訳がないか色々検索してみた。するとVintage 出版社の割と新しい『監視と処罰』を発見し、心が動く。この表紙、凄くイイ。

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何がイイかって、ごちゃごちゃした推薦文が一切無く、普通の木製の定規の絵とミニマリストな字体のタイトルだけだ。殊にこの定規が上手く使われている。昔のイギリスの寄宿学校とかアイルランドの男子校とかが設定の小説によく出てくるような話で、何か悪いことをすると先生に定規で手のひらを引っ叩かれるという恐ろしさを思い起こさせる、明確で理解しやすいイメージだ。


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フーコーの本をシリーズで再版したらしく、『監視と処罰~監獄の誕生』の他に『性の歴史』全巻や『狂気の歴史』など同じスタイルの表紙で手に入る。例えば、『快楽の活用(性の歴史)』 はかじりかけのリンゴの絵。もちろん、エデンの園のアダムとイヴを想起させる。かじった跡が多少黄ばんでいるところも意味深い。こういう細かいところまで気を使っているのですね。


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『言葉と物』 “The Order of Things” という公定の英題になっているため(order は順序・秩序)、マトリョーシカが表紙に並んでいる。『知識と権力』 は冠の絵。

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わああシリーズを一式大人買いしたい!ってなってしまう。とても効果的なマーケティングである。侮れないヴィンテージ社。

昔からヴィンテージ社のブックカバーが好きだ。こういう印象的なイメージ一つで勝負するシンプルな表紙もあれば、手の凝ったデザインの表紙もあり、いずれにしてもセンスが非常に良い。因みにフーコーで今でも一番印象に残っているのが、大学時代に初めて読んだ『ピエール・リヴィエールの犯罪』。(原題は Moi, Pierre Rivière, ayant égorgé ma mère, ma sœur et mon frère... Un cas de parricide au XIXe siècle. 「私、ピエール・リヴィエールは母、妹、弟を殺害しましたが…」というショッキングなタイトル。)これもカッコイイ表紙で再出版してくださいとヴィンテージ社に頼みたいものだ。

朝っぱらから何をやってるんだか、アマゾンでブックカバーを堪能した後、キャンパスへ向かう。

獣道は毛虫が多いので、最近避けていた。今日、久しぶりに獣道を使ったら、啄木鳥に出会えて嬉しくなった。手を伸ばせば触れるくらいの距離にいる啄木鳥は赤い帽子をかぶってぼーっとしていた。しばらく息を潜めて眺めてからまた歩き出したら近くの違う木に鷹が留まっていて、鋭い眼をぼーっとしている啄木鳥の方向にやっている様子だったので、ハラハラした。獣道は険しい。

昼ごはん。オフィスメートの助奈探君とカフェテリアに行き、サーグ・チキンとナンを食べる。コーヒー(一杯)。

夜までキャンパスで仕事をしていたら近所のスーパーの閉店時間が過ぎてしまった。食料品が何もない家に買えってきて、ひもじいなあと思いながら冷蔵庫を整頓していたら(ピクルスの瓶を4つも発見)、後ろのほうから巨大な茄子が出てきた。宝くじに当たったような気分だ。ナンデモアリフォルニアの茄子は大きくて、私の顔くらいある。とういうわけで、晩ごはんは茄子の天ぷらとご飯(一膳)。ワイン(2杯)。


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by majani | 2014-05-09 17:11 | 言葉と物

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


by majani