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狐よりハリネズミ

生まれ変われるとしたらどんな動物になりたいか、という仮想ゲームが友人の間で最近流行っている。(れっきとした大学院生ですよ。)

「私は○○になりたい」と宣言してから、友人の問いに対しその選択を弁護し、むしろそれが唯一正しい選択であると主張しなければならない、というルールだ。ジョブトーク(学者の世界における就職活動の際に行なわれる自分の研究の発表のこと)の肥やしになっていると言えなくもない。いや、言えないか。とにかく楽しいゲームだ。

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J.J. Grandville (1829). Les Métamorphoses du jour, 73 lithographies. Paris: Aubert.


ナパでヒクイドリを見た帰りに、サンフランシスコのピアー39(Pier 39) で Aquarium of the Bay 水族館の広告にラッコの写真が載っていたので、ラッコになりたいと思った。なんたって、ぷかぷか水上で昼寝ができる。

「寝ている間に波に流されてしまったらどうするの」と聞かれた。

「心配ご無用。ラッコは賢いから、自分の体を昆布に巻きつけておくのです。素晴らしいでしょう。」

ナンデモアリフォルニア近くの沖で貝を一日中食べ、昆布に抱かれて昼寝をする。これ以上の快楽はないだろう。

私は、動物学者でテレビプロデューサーのデイビッド・アッテンボローのファンである。動物と植物好きな、おっとりしているけれども平気でセイウチに近づいてはチノパンとワイシャツのままで隣に寝転がってしまうようなおじいさんである。ナマケモノが糞をするときは、何故だか木から降りてこないとできない ということを知ったのもサー・アッテンボローのおかげ。

そのアッテンボローによると、ラッコは毎日が忙しい。新陳代謝率がとても高く、一日に体重の三割くらいの食料を食べなければいけない。すると一日の大半は食料探しに費やされる。それはちょっと面倒くさいなあと思い直し、ではハリネズミになろうと思った。毛虫が薔薇を食べ散らしているようなイギリスの綺麗な庭にひっそり住んで、夜だけ出没するのだ。(昼間は、やっぱり、昼寝。)キノコとかメロンとかを食べる美食家ハリネズミになりたい。ええい、どうしても必要な場合はカタツムリも食べてやろうではないか。モロッコで食べたカタツムリのスープはとても美味しかったぞ。

「生まれ変わるならゲーム」をしているのは同期の仲間だったりビジネススクールの友人だったりする。ハリネズミに決めたと告げると「へえ、変なチョイスだね」とまず言われ、皆ハリネズミのことをあまり知らないこともあってか、かなり甘い反対尋問ですぐ終わる。(何故かラッコはかなりの反論があった。)

さて、哲学者とハリネズミの話をすると、ちょっと面白いことが起こる。「う~ん、それは君のことを物語っている、ナイスチョイスだ」とかなんとか言われるのだ。哲学者はハリネズミが好きなのだ。(牡蠣も好きだ。)

説明しよう。哲学者イザイア・バーリン(Isaiah Berlin)のエッセイに『ハリネズミと狐』というのがある。(邦訳は『ハリねずみと狐~「戦争と平和」の歴史哲学』(岩波文庫 1997年)を参照。)バーリンは『自由論』( “Two Concepts of Liberty” )というエッセイで有名になった。一方、『ハリネズミと狐』は、大衆向けとは必ずしも言えないが、比較的にインフォーマルなエッセイである。古代ギリシャの詩人アルキロコスの詩に、「狐は沢山のことを知っているが、ハリネズミは大きなことを一つだけ知っている」という一行があり、それを引用したものがバーリンのエッセイのタイトルになった。

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こんな所にもハリネズミと狐が。Curiosity and Method: Ten Years of Cabinet Magazine (2012). Ed. Sina Najafi. New York:Cabinet Books.



小さなことを沢山知っている、巧妙で要領良い活発な狐に対し、ハリネズミは物静かで華やかでもないけれど、デカイ、凄いアイディアを一つだけ知り尽くしており、そのことばかりじーっと考えているのである。あなたは狐派、それともハリネズミ派?

ある意味、ハリネズミと狐は卓越した比喩になっている。教授にも、「私たちの分野では狐になるのはとても大変な上、大した利益がないので、ハリネズミになったほうが良い戦略だと思います」と、なんだか哲学的なアドバイスを受けたことがる。

くるっと丸まって、茂みの中で寝ていたい。けっきょくのところ、昼寝がしたいだけなのかもしれない。


Or me.

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昨日、モロッコのカタツムリのスープのことを思い出した。モロッコで旅行をしたとき、マラケシュの屋台でカタツムリのスープを買って食べてみた。蜆のスープの様な味だったので、体に良さそうな感じがした。

ヘブンフィールドさんとマウンテンビューでモロッコ料理を食べに行ったから思い出したのだろう。マウンテンビューで食べたのはラマじゃなくてラムのタジン料理(tajine は料理に円錐形の土鍋のこと)、オリーブのスパイスマリネ、ブリワット等。ブリワットは briouat、あるいは briwat と綴る。サモサのような三角形のパフペーストリーで、中身のチキンや野菜をチーズ、レモン汁、胡椒と混ぜ、小麦粉ベースの皮に包み、それを油で揚げたものだ。因みに私たちが頼んだブリワットの中身は蟹だった。モロッコにカニ料理なんてあるのか。Racineというキャベルネ(1本)、モロッコの赤ワイン(1杯)、ミントティー(1杯)。

今日は久々にキャンパスに用事がなく、気持ち良い朝寝坊をする。

リナーを食べた のは4時頃。ヒヨコマメのスープ、サワードーブレッド、ケールのサラダ。ブラックコーヒー(1杯)。バルバレスコ赤ワイン(2杯)。

小腹が空いたので、サファリさんにもらった中国の Hawthorn Candy を試してみる。正体がイマイチ不明だ。包みに「山楂」という文字がある。杏みたいな味のクチャクチャする、ちょっと水飴みたいなお菓子だ。美味しい美味しいと張り切って食べていたのだが、着色料が問題になって米国の食品医薬品局により何度か押収されていることが分かり、とても不愉快な気分になる。

もうすぐ、夏休み。
by majani | 2014-06-14 17:42 | 動物王国

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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