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テニスとルノワール帽子

テニス三昧の一週間だった。

といっても、私がテニスをしていたわけではない。ざ・ふぁーむでバンク・オブ・ザ・ウェスト・クラシック (Bank of the West Classic) という女子プロテニス大会が開催されていた。スペイン語の授業などで忙しかったので練習試合は観に行かなかったが、金曜の準々決勝、土曜の準決勝を友人と観戦。テニスファンの知り合いがこの一週間のうちに選手の一人と仲良くなったらしく(ええと、ノーコメント)チケットを無料で分けてもらった。ありがたや。

私のテニス知識はマルティナ・ヒンギスとかリンジー・ダベンポートとか、一昔前の時代で止まったままである。そのダベンポートが解説者としてざ・ふぁーむに来ていて、マキシドレスでコートの周りをスタスタ歩きまわっていたのが実に印象的であった。若い頃見ていたプロ選手をこんな近くで(しかも何年も経ってから)見られるとは夢にも思わなかった。

ウィリアムズ姉妹はまだ現役。ヴィーナスの背の高さ、セレナの筋肉の大きさに脱帽。知らない選手ももちろん沢山いる。若い日本人選手も来ていたようで、あいにくその試合を観る機会はなかったが、友人の話によると結構いい所まで行ったらしい。偉いなあ。

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Renoir, Pierre-Auguste. 1892. Chapeaux d'été.


プロの試合を生で観るのは今回が初めてだ。テニスというと、なんだかブルジョアでハイソなスポーツのイメージがある。その昔はウィンブルドンなどをけっこう熱心にテレビで観ていた。まず、コートが静まり返っている。観客もなんとなく上品な感じがした。皆がルノワールの絵画に出てきそうな帽子を被っていて、拍手の仕方も他のスポーツと異なり、ぱらぱらぱらっと音のする整った拍手である。

このイメージでざ・ふぁーむの試合に繰り出したら、雰囲気はかなり違うものであった。陽射しが強いので帽子を被っている人は沢山いたけれど、観客はけっこう勝手に叫んだりヒューヒュー口笛を吹いたりしている。ヴィーナス・ウィリアムズがプレイしているとき、「ヴィー、頑張ってえ」と声を張り上げて叫ぶおばさんたち。ヴァルヴァラ・レプチェンコがプレイしているときは、「バーブ、しっかり 」との掛け声。(バーブはバーバラのあだ名。レプチェンコはペンシルバニア州のアレンタウンに移住したため、「頑張れペンシルバニア」という応援もあった。)

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Renoir. 1895. Femme au chapeau blanc.

想像していたより賑やかな試合ばかりでとても楽しかったのだが、暑さが辛かった。残念ながらルノワール帽子を持っていないので、中途半端なつばの帽子を被っていたら、気が付けば胸と足の甲に変な日焼けの跡ができている。12時間以上に渡るテニス観戦で、隣に座っている友人はこんがり焼けてしまっている。日焼けしてしまった以上もうどうしようもないけれど、夏休みはまだ一ヶ月以上ある。その間につばの広いルノワール帽子を買いたいと思っている。

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Renoir. 1884. Jeune fille au chapeau de paille.

今は完璧にカウチポテトになってしまっている私だが、子供の頃にテニスのレッスンを受けていたことがある。当時はシンガポールに住んでおり、コーチは中国系シンガポール人だった。そのコーチが毎週履いていた眩しいほど白く、ピチピチでとても短いショーツを覚えている。今思えばあれはホットパンツ以上の域に達する実に過激なショーツだった。しかし子供相手にあんなの履いていて良かったのだろうか。大人相手に履かれても困るが。

練習が終わると、お母さんたちがお喋りしながら待っている日陰のところへテニス仲間と駆けて行き、冷えた砂糖漬けのレモンスライスを皆で分け合って食べていた。テニスで汗だくになって口にするレモンの最初のあの一切れ、その美味しさは私にとって懐かしの味だ。

Or me.

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引き続きスペイン語の話。

三人目のスペイン語の先生は、テレノヴェラ大好きなお茶目なスペイン人男性。テレノヴェラ( telenovela )とは、メキシコを始め、スペイン、ラテンアメリカで放映される連続メロドラマのことである。語源は文字通り、テレ(テレビ)のノヴェラ(小説)。先生に教えられて、Los Herederos (2007年、『相続者たち』)というテレノヴェラをたまに観るようになった。三角関係あり、裏切りあり、殺人未遂あり、臭い演技とどんでん返しだらけの浅ましくも楽しくてたまらない番組である。

マルコ1号・2号がいなくなってしまい、会話が物足りなくなると思いきや、テレノヴェラ先生が大のロールプレイ好きと判明し、毎日スリリングな授業である。

例えば、先日は「手相占い師と客」という設定で、一人が占い師のマダム役(セニョール役でもいいけど、マダムのほうがしっくりくる)、一人が将来について質問をする悩める若者役。教室の照明を落として、それっぽい音楽もかけて、細かい演出まで考えてある先生。

またあるときは、「精神科医と患者」。精神科医役は、先生自らが画用紙で作った黒縁眼鏡をかけながら会話をする。患者はテーブルに横たわるよう、細かい指示が出された。(いつも仕事をサボっている私が言うのもなんですが、先生も大学院生なのに、よく眼鏡を作る時間がありましたね。よっぽど自分の仕事がしたくなかったんだなあ。)

患者役になったとき、「父親がアル中で、母にも捨てられ、とても辛い幼少時代でした」と話したら、相手の精神科医を演じる男の子が私の大嘘を本気にしてしまい、「トウキョウは裕福な家庭ばかりだと思っていた!俺は大変な勘違いをしていた!」と叫び、急に自分の頭を「あーなんて馬鹿なんだ俺は」と叩き始めたので、少し困ったことになってしまった。「ごめんごめん、嘘だよ、幸せな家庭だったよー」と慰めるも、なんだか凄くショックを受けてしまったらしい。

ちょっとした間違いをしただけで、よく自分の頭を叩く、仮名グレゴリオ君。繊細なんだかよくわからないけれど、大切な脳細胞が死んでしまうのではないかと、いつもハラハラしながら見守っている。

朝ごはん。ギリシャヨーグルト。コーヒー(1杯)。

昼ごはん。オフィスメートのアトリエ君と学食で中華を食べる。サンフランシスコのゲイ編み物クラブに最近入ったらしく、今週の編み物クラブのミーティング後にオンラインで知り合った人とデートがあるらしい。食後にラテ(1杯)を飲みながらアトリエ君の恋愛話を聞いていたら、あっという間に2時半になってしまった。

サンフランシスコにはゲイコミュニティがあるが、少し離れたざ・ふぁーむだと(しかも大学院生の特殊な日常生活だと)いろいろ苦労することがあるらしい。頑張れ、オフィスメート。
by majani | 2014-08-05 12:33 | ナンデモアリ

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


by majani