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ベルリンで足止め

ベルリンに着いたのは、リガ行きの小さなプロペラー飛行機がすでに飛んで行ってしまった二時間後のことだった。

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リルケと私は友人の結婚式に参列するため、ラトビアに向かっている。しかしニューヨーク発の便が三時間も遅れてしまった。次のリガ便は夜までないと冷たくあしらわれ、着たきり雀の私たちは寒空のベルリンの街を半日彷徨うことになった。

とりあえず、哀しいベルリン空港を出ようとタクシー乗り場に急ぐ。ブランデンブルク門に行きたいのだけどと、緑のトラックスーツを着たトルコ系ドイツ人の運転手に相談する。そんなツマラナイもの見に行きたいの?と運転手は不思議がりながら、煙草の火を消してエンジンをかけた。

空港から直接世界遺産にタクシーで乗り付けようとした私たちに好奇心をおぼえたようで、彼は運転しながら「あれは政府の建物だ」「これはナントカ公園だ」と片言な英語で説明をし始めた。最後は心配そうに「チュース」と手を振ってくれた。

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Brandenburger Tor に到着。夜になるとライトアップされてとても綺麗だそうです。

広場で読んだ看板の受け売りですが、1737年~1860年の間、ベルリンの街は「税関壁」で囲われていた。関税の徴収を容易にする目的で市街地の回りに壁が建設され、ドイツ各地へと繋がるメジャーな街道と交差する場所に関税門が設けられた。ブランデンブルク門はその関税門のひとつだ。

第二次世界大戦後、ベルリン東西の共同作業によってブランデンブルク門は修復されるが、後に門の東側にベルリンの壁が建設され、ブランデンブルク門は東ベルリンの最西端の行き止まりとなる。再び門の下を自由にくぐれる日が来るのは、1989年のベルリンの壁崩壊後となる。

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寒くて仕方がなくて、集中できない。コーヒーが買えそうな店がないかウロウロしていると、灰色の石が幾何学的なグリッド状に並ぶ広場に出た。

何だろうと近づいてみると、石の間を人がぽつりぽつりと一人ずつ消えてゆく。Denkmal für die ermordeten Juden Europas(虐殺されたヨーロッパのユダヤ人のための記念碑)だ。

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地面がうねうねしているため、石碑の間をすり抜けていくと、広場の外からは人間が地面の中に飲み込まれていくようにも見える。地下にはホロコーストの資料館がある。


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ベルリンの州議会(Abgeordnetenhaus)はクリスマスツリーで華やかになっていた。

ポツダム広場付近で良さそうなカフェを発見するが、メニューがすべてドイツ語だ。また、店員の英語がとても怪しい。

そういえば、サザエさんの漫画に、サザエさんが女友達とレストランで、「どうする、メニュー全部横文字ヨ」「大丈夫ヨ」とこそこそ相談しながら適当に注文すると、高価そうな料理が大量に出てきてしまうというのがある。コーヒーらしきものとソーセージらしきものを「ズヴァイ!」だの「アイン!」だのとりあえず知っている数字と共に読み上げてみた。言葉が分からない国で店員とやりとりをする妙なスリルを味わうのは久しぶり。

寒さで鼻の先がピンクになっているスペイン人の若いカップルがやってきた。このカップルも横文字ヨ、大丈夫ヨと話しあっている。すると英語で、「私たちサムイ!アルコール?テイクアウェイ」と必死に店員と交渉しはじめた。「アルコール」が通じなかったようで、しばらくの間やりとりをしていたのだが、やっとひらめいた店員が、「ああ、アルコホル?アルコホル、これ、クリスマスドリンクね、テイクアウェイオーケー、だんけしゅーん」と笑い、商談が成立。若者たちは紙コップに入ったホットワインを頬にあて、腕を組んで店を出て行った。

ちょうどその頃、カプチーノが二つと、ソーセージが一本、運ばれてきた。

「コーヒーとソーセージは変なコンビかなあ、おかしいと思われてるかなあ」とリルケが心配している。たぶん変だけれど、外国で自意識過剰になっていたらキリがない。旅に待ったなし、午後2時にソーセージが食べたくなったら、食べれば良いのですと、私は考えてしまう。

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残りの時間で Topographie des Terrors を訪れた。

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1933年~1945年、ゲシュタポとSS(ナチスの親衛隊)の本部の跡地に作られたナチスドイツに関する資料館で、入場料は無料。

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ゲシュタポやSSの歴史・機関構造に関する事細かな解説のほか、ユダヤ人を始め、ユダヤ人を助けようとした人々、インテリ、女性、ゲイの人に対する残酷で非道な行為が、当時の新聞記事、プロパガンダとして使われたポスター、写真など、沢山の資料を通して淡々と伝えられている。

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解説が全てドイツ語と英語なので、訪問する際は言葉が理解できる人と来るのがベストだと思う。

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建物の外。拷問などに使われていた地下施設や、ベルリンの壁の一部が展示されている。

そうこうしているうちに、空港に戻る時間になっている。ビールを一杯も飲まないままドイツを後にするのが残念だが、こうして再訪する理由を一つ残しておく。

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とにかく温かいものを…と空港のレストランにふらふらと入った。ベルリン空港で飲んだパースニップのスープは赤いペッパーコーンとオリーブオイルが散らしてあった。

隣のテーブルの男性が、バームクーヘンを美味しい美味しいと呟きながら食べていたのが、印象的だった。




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by majani | 2017-01-10 10:14 | 旅に待ったなし

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


by majani