セコイア国立公園の最終日。
途中経過の様子。頂上まで、1931年に造られた石段をひたすら上る。
私たちは公園の中に泊まっていたため、混み始める前に到着できたが、下りは大勢の観光客とすれ違う。今に心臓麻痺を起こしそうな太ったおじさんたちが、ぜえぜえ言いながら頑張って階段を上っている。
そこで
昨日のパラダイスバレーで「あと10分くらいだよ」と励ましてくれた男性を思い出し、如何にも死にそうになっている人に「あと少しで頂上ですよ」と声をかけた。「オー、サンクゴッド…」と泣き出しそうなおじさん。本当にあとちょっとですよ!
こんな所にも、小鳥ちゃん。
先日行きそびれたジャイアントフォレスト・ミュージアムに寄る。セコイアを始め様々な針葉樹に関する解りやすい展示がある案内所と土産品店。
子供向けなのだろうけれど、「あなたがセコイアの種だったら」というゲームが面白かった。Wheel of Fortune みたいな巨大なルーレットを手動で回すと、「リスに食べられて、芽が出ない」「日当たりが悪い所に落ちて、芽が出ない」「他の若木に栄養を奪われて、育たない」「山火事で焼ける」など、ありとあらゆる悲しい運命が「当たる」のである。
リルケはリスに食べられてしまったが、私は奇跡的に「巨樹に育つ」が出ました。これで人生の運を使い切ったような気がする。
次に、自然保護の父 John Muir に因んで名づけられた Muir Grove トレールを歩く。立派なセコイアが沢山生えているのに何故かいつも空いているとのことで、このトレールを選択した。
帰り道にすれ違ったパークレンジャー以外(二人組で時々トレールをパトロールしているようだ)まったく人を見なかったが、ちょろちょろ水が流れているこの一角で、ガラガラヘビに出くわした。
森に響き渡る「トン、トトントン」という音はシロガシラキツツキたち。身体が黒いので、まるで白粉でおめかししたような白い頭が目印になる。
一方のドングリキツツキは集団で暮らし、一本の木に沢山の穴を開けてドングリを敷き詰めてゆく。びっしりとドングリが詰まったキツツキの高層マンションは、原因が分からず通りがかったならば、とても奇怪な木に見えることでしょうね。
もちろん、この子も登場。
ミューアが愛したセコイアの木が現れるのはトレールの最後。レンガ色の幹と、他の木が急にちっぽけに見えるその絶大なスケールで、一瞬にしてセコイアだ!と分かる。空まで届きそうなセコイアがいきなりズドーンと出てくると、実に感激的。
トレールの終盤は、何本もの巨樹が円状に生える静かな grove になっている。その中心に転がっている丸太に二人で並んで座り、ぼーっと上を眺める。
こんなに大きな木でも、マツボックリは手に2、3個納まるミニサイズ。
そろそろ、出発の時間。名残惜しい。
パトロール中のパークレンジャーに挨拶をし、来た道を戻っていくと、ガサガサガサっと何か大きな動物が茂みから私の目の前に飛び出してきた。
とうとう熊にやられるのかと思ったら、鹿だった。鹿の方も、人間が通り道にいて驚いた様子で佇んでいる。熊が出たら絶対に走って逃げるな、戦え!みたいな恐ろしい注意書きは何度も読んでいたけれど、一見優しそうな鹿の場合はどうすれば良いのでしょう。
エルクを間近で見た時も思ったことだが、草食獣でも近くで見ると大きくて少しおっかない。
連れがいて、しばらく鹿 vs 人間のにらめっこが続く。
私たちが危険でないことをようやく悟ってくれたようで、二頭は悠然と食事を始めた。こちらはトレールを通せんぼされてしまったので、彼らがランチをする間、距離を置いて待機するほかない。
やっと退いてくれた。またねー。
夕方のセコイア国立公園。あと数日ゆっくりしたいものです。
国立公園付近の町 Exeter で East Meet West という、ダイナーと中華料理店を掛け合わせたような奇妙なレストランで食事をした。
赤いチェックのテーブルクロスの上でメニューを広げてみると、名前通り(?)フライドチキンやパスタなど「洋食」の「西」メニューと、タイ料理と中華の「東」メニューの二つに分かれている。あちらのブースにはフランス人の家族、こちらのブースにはイギリス人家族、奥にはイタリア人カップル。皆、「西」メニューのものをつついて、大量の赤ワインを飲んでいる。
セコイアを見てきた後に餃子を食べるのも何だかねえとか言いながら、私たちは結局パッドタイを注文した。アジア系の料理をずっと食べていなくて身体が欲していたのだと思う。
チンタオを頼むと、ウェイトレスの中国系のおばちゃんが、凄く嬉しそうにしていた。
Moro Rock / Crescent Meadow
www.alltrails.com/trail/us/california/moro-rock-trail
夏から秋にかけて岩のふもとまで車で乗り付けられるが、他のシーズンは案内所から歩くか、無料のシャトルを使う。
Giant Forest Museum
www.nps.gov/seki/learn/historyculture/gfgfm.htm
是非、セコイアの種になった気分で、ルーレットを回していただきたい。
Muir Grove Trail
www.alltrails.com/trail/us/california/muir-grove-trail
是非、ミューアになった気分で、歩いていただきたい。