眩しくネオンが光るミッドタウンウェストの劇場街。演劇界で活躍中の友人二人と Theater District でブランチを食べることになった。
少しごてごてしたヴィクトリア朝(?)スタイルのブランチスポット、Lillie's Victorian Establishment。観光客が多いエリアにしては割とお手頃な価格。そして天井がとても豪華。
友人ロキシーはミュージカル俳優のちょっと年上のカッコイイお姉さん。歌と演技はもちろん、彼女の強さはダンス、特にジャズやラテンボールルーム。もう一人のグリンダさんは、劇やミュージカルのマーケティング・教育関係を専門とする。(二人の仮名をちょいブロードウェイ風にしてみました。)
もちろん、私はもっぱら観劇側である。久々に会う二人に、バックステージやリハーサルのこと、役者たちは gig(仕事)が無い間どのような生活をしているのかなど、色々な話をうかがうことができた。
夜は昼間のように明るく、混沌としているタイムズスクエア。ブロードウェイを中心に51st St. あたりまで劇場が散らばっている。
一つのショーで、なんと1200カロリーを軽く消費するという。8分半にも及ぶ速いタップダンスナンバーや、手袋や靴やジャケットなど23点もの衣類を76秒以内にステージ上で衣装チェンジする早業・・・。日頃の身体の訓練と共演者との協力が欠かせない大変なお仕事だなあと感服する。マチネーもあるため、一日に何時間も踊りっぱなし、ということもしばしば。ロケッツ時代は好きな物が何でも大量に食べることができたから良かったわとロキシーは笑う。
お小遣い稼ぎのために、ラジオシティミュージックホールのツアー中にある「ロケッツに会おう」という企画にもバイトで参加していたとロキシーは話す。好きな衣装に着替え、ツアーグループが回ってくると、しばらく観光客と談笑、質疑応答、というバイト内容だ。
面白い質問がありそうねと私が言うと、ロキシーは例を挙げ始める。「あなたの体重は?」「何歳ですか?」「ダイエットしていますか?」などといった質問が多いそうだ。伝説的なロケッツと話すことができて、もっと良い質問があるだろう!と驚いた。因みにこの類の質問を受けた場合は、「ロケッツのオーディションは18歳から受けられて、そのまま毎年オーディションを繰り返し、20年近くこの仕事をしている同僚もいますよ」「一日に何千カロリーも消費するので、みんな大食いなんですよ(笑)」などと、やんわり返答するらしい。大人の対応。
最近はキャスティングで役者の人種を凄く意識するようになっている、という話も興味深い。
某ミュージカルのオーディションで、白人女性のロキシーは他二人(白人ではない)とヒロイン役の最終選考まで残ったが、「今のご時世、主役に白人をキャストしたら滅茶苦茶に叩かれるから、悪いけどロキシーは絶対にキャストできない」と、キャスティングディレクターから彼女のエージェントに電話が入ったとか。さらなるツイストは、ヒロインの基となっている実際の歴史上人物は白人だということ。う~ん、難しい。
そう言われてみれば、以前に比べアフリカンアメリカン、ラティーノ/ラティーナのブロードウェイ俳優をよく見るようになった。(アジア系の人はまだまだ少ない。)意図的なキャスティングデシジョンがその背景にあってのことなのか、人材のプール自体がまた違う理由によって多様化してきているのか、よくは分からないけれど。
ブロードウェイにも「多様性」の風が吹いている。