久々にメトロポリタン美術館を訪れた。
ニューヨーク在住あるいはニューヨーク、ニュージャージー、コネチカットの学生の場合、入場料は好きなだけ寄付する制度(大人の suggested 料金は25ドル)。堂々と無料で入ることもできたが、最後のヨレヨレの20ドル札を差し出した。
美大生らしき若者があちこちにイーゼルを立てて模写をしているのは、おそらくこの良心的な制度のおかげ。何日かけて完成させるのだろう。
週末は人でごった返しているメットは、平日に訪れると穏やかな空間。マティスの金魚シリーズのこの小ぶりな作品も、空っぽの部屋で、じっと近づき、急かされることなく楽しめた。
メットは印象派のコレクションが有名とされているが(ドガのバレリーナが腐るほどいる)私はルネッサンス期やさらに昔のビザンチンのイコノグラフィーが気に入っている。絵画の歴史や宗教についてもっと知っていれば高度な楽しみ方ができるのだろうが、私は単に描かれた人物たちの平たい顔やカチッと見開いた目が奇妙で面白いナと感じる程度。
例えば上のクリヴェッリの作品。ルネッサンス期によく見るマドンナ像だが、よく見るとマドンナが胡瓜と一緒に描かれている。奇妙です。
落ち着いて説明を読むと、右上に描かれた林檎とイエスが睨みつけるようにしている蝿は罪と悪の象徴、また胡瓜とゴシキヒワ(イエスの手の中の小鳥)は罪の贖いの象徴とある。小鳥は何となく分かるような気がするけれど、どうして胡瓜が贖いを意味するようになったのだろうと好奇心が掻き立てられる。
アフリカやラテンアメリカの展示室(色々な文化の装飾品や彫刻がごちゃ混ぜになっているエリア)も面白い。12世紀~19世紀後半に存在したベニン王国(現在のナイジェリア南部エド州にあった)の装飾品コレクションが見事なので、是非一度見てきたら良いと日本に住む家族友人に教わっていたので、閉館間際に一周してきた。
確かに見事。16~17世紀にベニン王国の宮廷の壁を彩ったとされる浮き彫りの飾り板は、今にも動き出しそう。
同じくアフリカ西海岸、植民地時代以前の作品。右に写っているのはポルトガル人を描写した象牙で出来た小さな像。当時はヨーロッパに輸出するため、ベニンやサピ(現在のシエラレオネ)のアーティザンたちがこのような「アフロ・ポルトガル」像を数多く作り出していた。西欧の装飾美学と、ベニンやサピの芸術品に見られる幾何学的なパターン使いの共存によって、独特な雰囲気を放っている。
この指輪は19~20世紀マリの出土品。はめてみたい。
それにしても欧米にずっと昔からアフリカ諸国の芸術作品が流出しているわけですが、返却の要請はないのでしょうか。ちょっと気になる点ではある。
美術館から出てきて、街角で売っているローストカシューナッツの香りに惹かれる。
ニューヨークは今日も雪がちらほら降りまだ寒いけれど、最近のセントラルパークは丸々としたカナダガンが騒がしくお喋りをしていて、おぼろげな春の予感がする。