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イスラエル料理

若者が集うごみごみしたイーストヴィレッジにティムナという店がある。イスラエル料理にひとひねり加えた美しいプレーティング、そして紳士的なサービスが充実している小さなレストラン。ある金曜の夜、小腹を空かせて友人ルポとふらりと入った。

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地中海風のセビーチェ…といっても、セビーチェに見えない。ミントの葉が散らしてあるぱりんぱりんのヒヨコ豆クラッカーの下に隠れているのは、マグロのセビーチェ、イスラエル風サラダ(トマトと胡瓜がメイン)、スパイス、そしてクレムフレッシュのような濃厚ヨーグルト。

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そしてこちらが、クバネ(kubaneh)のパン。植木鉢に入ったふわふわのクバネを指で引き裂き、ハラペニョのサルサや、新鮮なトマトとオリーブ油に漬けて食べる。食感はクロワッサンに似ている。奥に写っているピスタチオ色のものは、中東料理の定番である茄子のババガヌーシュ。

クバネは沢山のバターを使って焼いているのか、薄いフィロ生地をぐるぐる巻きにしたジャフヌン(jachnun)に通ずるものがある。こちらも少しピリ辛のトマトディップと食べる。ジャフヌンとクバネは両方ともイエメン系のイスラエル料理だと友人に教わった。

そういえば何年もジャフヌンを食べていない。ブルックリンとグリニッチヴィレッジの二カ所にある 12 Chairs Cafe の週末ブランチメニューに載っているが、中東食材の店などで生地を売っているらしいので、家で作ることも可能。

ただ、相当の時間がかかる作業だ。古いパンを鍋の底に敷き、その上にバターをたっぷり塗りながらきつく巻いたジャフヌンの生地、そして一番上に生卵をぽこぽこ乗せて蓋をし、なんと10時間~14時間かけてオーブンでじっくり焼くとのこと。ターキーより面倒くさい!

国民に愛される朝ごはんなのに、誰も家で作ろうと思わないことに深く納得。



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by majani | 2018-04-02 03:47 | 食べる人々 | Trackback | Comments(6)

バノフィー・パイ

友人フリーダとキキのハウスウォーミングパーティーに招待されて、週末はブルックリンに出かけた。

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サウスフェリーの駅で見たこ洒落たモザイク画。

マンハッタンから脱出するのに少し億劫な場所に住んでいるので、ディープブルックリンに行くわけでもないのに、地下鉄がちょっとした冒険のように感じられた。

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ディナーパーティーの面子はウィーメンズ・マーチに参加した友達、プラス男性陣。

私の主人がブルックリンへの遠征が初めてとのことで、是非ブルックリンらしさを感じてほしいとキキちゃんが笑いながら取り出してきたワインが、旨味(ウマミ)という言葉にフランス語の冠詞 le をくっつけた L'Umami というオレゴン州のピノノワール。フランス語風にして、ちょっぴり気取った感じが変に「今風」でユーモラスなのである。確かに、裕福なヒップスターに乗っ取られているブルックリンで受けそうだ(ポートランド、サンフランシスコにもありそう)。

近所のワインショップで、キキが可笑しがって「ルマミ」を手に取ったら、女優のローラ・ダーンがすっと隣にやってきて同じワインを買っていったそうだ。今頃、ローラ・ダーンさんもこれをお友達と飲んでるのかねえと笑いながら啜ったルマミは、飲みやすいピノだった。

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そこで「私が持ってきたデザートにびっくりするわよ」とルポが宣言する。それは「バノフィー・パイ」。ば、ばのふぃ?って何?

これよ、バノフィーパイ、と出てきたのが、生クリームがこんもりのグラムクラッカー生地のパイらしき物。その上に温めたチョコレートソースをたっぷりかけて、切り分ける。

バナナとトフィーが入っているので、banana + toffee = banoffee pie というわけだ(アクセントは no の部分なので、バノッフィーの方が正確かも)。英国のデザートで、最近までロンドンに住んでいたキキちゃんは大興奮。

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それにしてもこの生クリームとパイの割合、どう考えてもオカシイでしょと笑ってしまう。生クリームは微かにコーヒー味がして(これは多分ルポの工夫)美味しいのだけれど、とてつもなく甘くて、やっとのことで半分食べる。しかし英国について新しいことを学び、満足。

トライフルといい、何層かレイヤーがある(?)デザートに好感を持つ国民性なのでしょうか。

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ところで、「猫欲しい病」が全く治りません。フリーダたちの猫は、ツンデレタイプ。放っておくと俄然寂しくなるのか、ディナーパーティーの様子を窺いに来たりしていた。



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by majani | 2018-03-06 07:39 | 食べる人々 | Trackback | Comments(4)

ブロードウェイで泣く(そしてパイを食べる)

引き続き ブロードウェイミュージカルの話。今回は感動する作品について。

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Hello, Dolly!

高校時代のジュリエットと私は、アンドリュー・ロイド・ウェバーに負けない大御所作曲家のスティーブン・ソンドハイムが手掛けた Into the Woods というミュージカルにハマっており(2014年にメリル・ストリープ、ジェームズ・コーデン主演の映画が出ている)そのビデオ鑑賞会をよく行っていた。(今思えば、擦れていない大真面目な高校生だった。)「赤ずきんちゃん」や「ジャックと豆の木」など有名な童話に登場するキャラクターたちが、何かを強く望むことによって招いてしまった思いがけないハプニングを追うストーリーだ。ブロードウェイの大女優であるバーナデット・ピーターズが、オリジナルキャストで迫力ある魔女を演じている。私たちはたちまちピーターズの大ファンになった。

そのバーナデット・ピーターズが主人公を演じるコメディー Hello, Dolly! が今回の大目玉。

設定は19世紀末のニューヨーク。世話好きな未亡人ドーリーは、老若男女を恋に導くマッチメーカーとして街で有名。しかしドーリー自身は独りの生活に苦しんでいて、郊外ヨンカーズの "half-a-millionaire" として知られる、怒りんぼなホラス・ヴァンダーゲルダーと再婚しようかと考える。困ったことに、以前ヴァンダーゲルダーにお見合い相手を見つけてあげてしまっているため、ドーリーは彼のハートを奪還するべく作戦を立てる。そんな中、ヴァンダーゲルダーが営む店の若い従業員コーネリアスとバーナービーは、恋愛と冒険を求め、秘密でニューヨークに乗り込む。帽子屋でアイリーンとミニーに出会うが、そこへ雇い主のヴァンダーゲルダーが現れトラブル発生。どんな奇想天外な展開でも上手くことを収められる賢いドーリーであるはずだが・・・?

初心な若者たちや恋に無作法なヴァンダーゲルダーなど、ドーリーを取り巻く様々な関係者が、ニューヨークの超高級レストランに集まるシーンがミュージカルのクライマックスだ。色鮮やかなドレスを着たニューヨーカーが行き交うさり気ない街のシーンから、ウェイターたちが踊り狂う爽快なレストランシーンまで、音楽、衣装、コリオグラフィー、全てに胸がときめく。古典派ミュージカルだからこそ何となく安心して観ていられる『ハロー・ドーリー』は、2017年にブロードウェイに戻ってきてベスト・リバイバル部門でトニー賞を受賞している。

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バーナデット・ピーターズがブロードウェイステージに立つのは20年ぶり。彼女が演じるドリーが最初に登場するシーンで、すでにスタンディングオベーションが起きる。ミュージカルのタイトルともなっている "Hello, Dolly!" というナンバーで、紛れもないルビー色のドレスを着たピーターズが "It's so nice to be back home where I belong" と歌うと、観客はいっそうに手を叩きならし、私はつい涙ぐんでしまう。ブロードウェイに、お帰りなさい!

因みにハロードーリーは、19世紀の戯曲をもとにしたソーントン・ワイルダーの劇 The Merchant of Yonkers がミュージカル化されたもので、元ネタがそ~と~古い。そのため、「女の取柄は家の掃除」的な古めかしい台詞が時々あるが、ピーターズ主演の現代版では(#MeToo後でもある)台詞の読み方(delivery)の工夫でコミカルな効果を狙うなどして、ストーリーが時代遅れだと感じさせないように努力している印象を受けた。

ピーターズのコメディーセンスはピカイチだし、アイリーン役のケート・ボールドウィンの歌声には聴き惚れてしまうし、バーナービー役のチャーリー・ステンプの可愛いことったら。またすぐにでも観たい作品です。

一目でいいからバーナデットを見たいと楽屋口で雨の中一時間半も待ったのですが、残念ながら会えず。(チャーリー・ステンプは一人でとことこ出てきて、待っていた高校生たちのプレイビルをサインしてあげたり、写真を撮ってあげたりしていた。可愛いうえに、凄くイイ人。)今でも若い子たちが、大昔の私たちのようにこうしてミュージカルに胸をときめかせているのを楽屋口で目撃し、とても嬉しく思った。

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Wicked

こちらは近年の王道ミュージカル。『魔法使いのオズ』に登場する Wicked Witch of the West (西の悪い魔女)がどうして悪い(wicked)魔女になってしまったのか、その経緯を辿る壮大ミュージカル。後に「悪い」魔女となるエルファバ、そして善良な魔女グリンダとして知られるようになるガリンダ(名前がどうして変わるのかはミュージカルでチェック)の間の、時には緊迫した友情の描写に感動する。

歌とそのリリシズムがとにかく良い。エルファバ役とガリンダ役の歌唱力に全てがかかっているとも言える。また、"Defying Gravity," "The Wizard and I," そしてフィナーレの "For Good" など数々の名曲がありますが、魔法使いのオズの話を知っている方が楽しめるかと思います。

このミュージカルでは第一幕の "The Wizard and I" で一度ぐっと涙をこらえ(アップビートな歌だけれど、後にどうなってしまうか分かっているだけに悲しい)、最後の "For Good" でうおおおおんとジュリエットと泣く。女の友情ものに弱い女二人です。

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Waitress

ガラリと変わって、現代のアメリカ南部の田舎町。小さなダイナーでウェイトレスとして働くジェナは、亡くなった母親から学んだパイ作りの名人。ダイナーで出している自家製パイは、どれもちょっと変わった名前が付いている。こうしてパイを焼いたり仕事仲間たちと他愛無いお喋りをする平凡な生活を送っていたが、ある日、妊娠が発覚。父親は、ろくに仕事もせずジェナから金を巻き上げるのが日課となっている夫のアール。愛がとっくに消えた結婚生活から逃げ出すべきか悩むジェナは、彼女を担当する産婦人科医のジム・ポマターに惹かれていくが・・・。

『ウェイトレス』は2015年にマサチューセッツ州でプレビューが始まり、2016年にブロードウェイで開幕したばかり。4部門でトニー賞にノミネートされている。私たちが観に行ったバレンタイン辺りの時は、作曲作詞をしたサラ・バラレスが自ら主人公を演じ、ポマター役はシンガーソングライターのジェイソン・ムラーズだった。ああもう、サラ・バラレスが泣かせる!演技が上手い!声が良い!(オリジナルキャストのジェシー・ミューラーも観客を唸らせる演技力と歌声の持ち主。)甘いマスクのジェイソン・ムラーズも、見ているこちらがモジモジしてしまうほど awkward ながらもチャーミングなポマター先生役を上手く演じきっている。

ジェナの夫アールのダメ男炸裂ぶりに観客の怒りが増していくのが手に取るようにわかる(アールはジェナに対し暴力を振るうまではいかないが、その危機感が常にモヤモヤとあり、ジェナの恐怖感が伝わってくる)。ジェナのソロナンバー、"She Used to Be Mine" が終わった時にはその怒りは悲しみに変化していて、周りから「ぐすん、ぐすん」と女性がすすり泣いたり鼻をかんだりする音が一斉に聞こえてきた。実は私もうおおおん状態で、ふと隣を見るとジュリエットも必死にティッシュで目を拭っている。

バレンタインデーに近かったのでカップルが多かったのですが(男性陣はデートのお相手が急に泣き出して困っている様子だった)このミュージカルは、一応「男に頼らず強く生きる女」みたいなのがテーマとしてあるので、良き女友達と観て、一緒にうおおおんとなりたい作品。

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また、非常にパイが食べたくなる作品でもあります。

パイ~、パイはどこだ~、と私たちは Little Pie Company (www.littlepiecompany.com)へ向かった。こちらのはマンハッタンで見つけたパイの中で頗る美味しいと感じている。事前に注文をしておかなくても良いというのがさらなる利点。

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パイを一切れ($4.50)その場で温めてもらって食べることができる(アラモードも可)。私はリンゴとクルミとサワークリームのパイ、ジュリエットは王道のベリーパイ。ブラックコーヒーと合います。

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パイをホールで買うのは少し大袈裟だなと考え、ミニサイズの梨とリンゴのクランブルパイ($8.50)を持ち帰った。後日オーブンで15分ほど温めて、ミュージカルのことを思い出しながらデザートを楽しんだ。

しかし一週間でいくつもショーを観ると、さすがに疲れる。そして一気に貧乏になったような・・・。しばらくはおとなしく家で夜を過ごしたいと思う。




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by majani | 2018-02-24 03:25 | 旅に待ったなし | Trackback | Comments(0)

餅をつく

海外に住む日本人は、一時帰国中が総理大臣並みに忙しい。

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洋服・消耗品・酒や食材の買い物、普段会えない親戚や友人との再会、美味しい和食のため食い、小旅行、ビザ切替などと重なるとさらにツマラナイ事務的な用事…。そうこうしているうちに、疲れたまま、あっという間に飛び立つ日になっている。

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今回の一時帰国は、さらなるイベントが待ち受けていた。リルケの祖父母宅で例年行われる、昔ながらのお餅つきである。去年の末、私もとうとう初参戦することに。運動嫌いで気が利かないわたくしが、ちゃんとお役に立てるのだろうか。(実際あまり役に立てませんでした。)

何十年も使われてきた重い臼を、庭の物置からゴロゴロ出してきて下準備が始まる。

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冷たい井戸水で、手を震わせながら、リルケがもち米を研ぐ。それを一晩水に浸しておき、本番の餅つきは翌朝から開始される。

お餅つきといえば、えいやさ、よいやさ と杵をテンポ良く振り下ろすイメージが強いが、他にも色々な役割があり、メンバーの適性によって仕事が割り振られる。もち米を蒸篭で蒸す作業に始まり、それを臼に移す助っ人、餅つき係と返し手係、出来上がった餅をのす係、それを乾燥させる場所に移す脇役、など。効率よくテキパキ動く親戚の皆さんを観察していて、ひょえ~こんなに大変な作業なのか、と感心した。

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私は初めてということで色々なことを試させてもらった。ベテランのおじいちゃまの鋭い視線の下、へっぴり腰でフラフラと杵を持ち上げている恥ずかしい証拠写真が沢山残っている。

「うん、さっきよりだいぶフォームが良くなった」とかリルケに余計なコメントをされながら(フォーム関係あるの?)ふらふら、ぽこぽこ。「ああ、疲れたでしょう、もういいわよ~」と親戚の方から優しくストップがかけられるほど下手くそでした!

結果として、つきたての餅を真四角にのす地味な作業が一番向いていたようで(でもこれも意外とスピードと体力が必要なんですヨ)、最終的には黙々とのしのしやっていました。

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つきたてのお餅は手作業で一口サイズの丸餅にし、大根おろしに漬けたからみ餅として食べたり、きな粉やお手製のあんこで食べる。市販のものと全く違う食感。

大勢で協力し合っただけ、とても美味しく感じられた。

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乾燥させた餅は好きなサイズに切っていき(これまた力がいる)皆で仲良く分けてお持ち帰り。

後日、majaniさんは初めてのお餅つきとは思えないほどの上達ぶりでした、と優しいお手紙が届いたときは、私は謎の高熱を出して自分の実家でぶっ倒れていた。すっかりお餅つきをなめていました・・・。

何だかとてもジャパニーズなクリスマスの過ごし方。貴重な体験でした。



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by majani | 2018-01-17 03:15 | 食べる人々 | Trackback | Comments(8)

おせち

いつの間にか年が明けていました!
一時帰国をしていたため更新が滞っていますが、またぼちぼち書いていきます。

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今年のおせち料理は、伊勢海老ちゃんがドンと構えている豪華版。
色々な綺麗なお料理を、それぞれ少しずつ愉しむ。日本食はやはり良いですね。
リチャージできて、今年も頑張るぞという気になれました。

大変遅ればせながら、明けましておめでとうございます。
皆様、今年もどうぞよろしくお願いします。



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by majani | 2018-01-14 03:06 | 絵葉書もどき | Trackback | Comments(0)

感謝祭がやってきた

やってきました、感謝祭。今回は感謝祭ディナーについて。

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本番の数日前、ユニオンスクエアのファーマーズマーケットをぶらぶらしながら、感謝祭ディナーの材料になるようなものを探した。寒空の下、厚いダウンのコートをまとった人たちばかり。もうクリスマスリースやモミの木などを売っている。

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リンゴが美味しそうだったので、今年のデザートはアップルクランブルを作ることに。ハニークリスプやグラニ―スミスなど、何種類か混ぜて使う。

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さて、感謝祭に欠かせないターキー。今年は奮発してオーガニック&フリーレンジの七面鳥に決定。その名も「ダルタニアン」というブランド。何だか強そうです。

20ポンド以上の巨大なターキーも売っているが、私たちは5人だけの感謝祭なので、10ポンドの比較的小さいものを選んだ。ブランド、品質、また下準備がしてあるかによって(事前に塩水に漬けて brine してあるものは高かったりする)、1ポンドあたり2ドルから5ドルくらいする。

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感謝祭当日、ダルタニアンくんの準備は朝から始まる。まず首などを切り取り、玉ねぎやセロリを一緒に投げ込んでストックを始める。本体を丹念にレモン汁で洗いながらマッサージすると、柔らかく焼き上がる。ターキーの下に、大きく切ったニンジン、セロリ、玉ねぎを敷いておく。

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ターキーはスタッフィングが付きもの。アンドゥイユソーセージ(チョリソーでも美味しい)、プレーンのクルトン、セロリ、リンゴ、玉ねぎが基本。他に砕いたくるみやマッシュルームなどを入れるとナッティーでスモーキーな香りと様々な食感が出てきて、さらに美味しい。

これらを塩コショウ、ベイリーフ、ローズマリー、タイムなど、好みのハーブで味付けをし、軽くオリーブオイルで炒める。最後にざくざく切ったイタリアンパセリを投げ込む。ターキーの中から出てきた giblets (日本でいうところのハツやレバーの部分)も細かく切り刻み、さっとフライパンで炒めてスタッフィングに加える。

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最近はスタッフィングを七面鳥の中で焼かず、別に調理する家庭が増えてきている。私たちはオールドファッションドなため、ターキーに stuff 、つまり詰め込んで焼く昔ながらの料理法を使う。

ぎゅうぎゅうにならない程度に、ダルタニアンくんの中にせっせとスタッフィングを詰めていく。残っているイタリアンパセリをブーケのようにして、それでお尻に栓をする。ターキーをマッサージするのに使ったレモンをそのまま中に放り込んでもヨシ。(はまりきらなかったスタッフィングは、キャセロール用の容器に入れておき、後でターキーの隣で焼く。)

オーブンに入れる前に、これでもか!と思うくらいの量のバターをターキーに塗り込む。大きいターキーの場合、皮の下にもバターを塗りこんでおくとしっとり焼ける。アルミテントをかぶせて、いよいよオーブンの中へGO。

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次にアップルクランブルやサイドディッシュに取り掛かる。今年はコーンブレッドのマフィンが初登場。生地に少しバジルを入れると、くどすぎない味で美味しかった。コーンミールが沢山残っているので、次回はハラペニョでも入れてみようかと思う。

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ひと段落したところ、家族で近所の散歩に出かけた。さすがは感謝祭の日、普段は新宿のような通りも、このように静まり返っていた。

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途中経過のダルタニアンくん。時々ターキーの様子を確認してストックをまわしかける。1ポンドにつき、15分焼くのが目安。仕上げに入ったらアルミテントを取り外し、強火でターキーの皮がこんがり焼けるようにする。

ターキーが濃い琥珀色になったら、一度オーブントレイから降ろして休ませておく。トレイに残っているターキーや野菜の汁にバター、ストック、酒を加え、トレイに張り付いた美味しいおこげも混ぜ込みながら、とろりとしたソースになるまで煮詰める。茶こしを通せば、透き通った美味しいグレービーが完成。魔法のようです。

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ターキーとスタッフィングの他に、ニンジンの冷製スープ、芽キャベツとニンニクのロースト、コーンブレッドマフィン、キノコのマリネ、マッシュポテト、ヤムの砂糖煮、ラディッシュのサラダ、チーズプレートなどのサイドディッシュを用意した。

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因みにターキーを切るのは家の主の役目、とされている。ちょっとごちゃごちゃして見えますが、とてもジューシーで美味しかったんですよ!

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お腹がもうポンポコリンだけれど、まだ食べる。デザートは、朝作っておいたアップルクランブルと、近所のイタリア食材専門店で買ったパネトーネ。本当はクリスマスに食べる物なのでしょうが、せっかくなので。

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パネトーネをスライスすると、こんなにフワフワ。

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感謝祭の残り物のおかげで、最近、朝ごはんが充実している。




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by majani | 2017-11-30 04:24 | 食べる人々 | Trackback | Comments(0)

感謝祭がやってくる

トライベッカを少し北に行ったところの Houseman というレストランで、友人とディナーをすることになった。(ニューヨークに来てから、食べ物の話ばっかりですね。)

店は、どこかヨーロッパの古い町並みを思わせる石畳のグリニッチ街に面している。トライベッカに最近引っ越した友人ルポがこのレストランの常連になろうとしていて、私はその助っ人として付き合った。

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この季節、根菜が美味しい。パースニップ、ビート、ニンジン、サツマイモなどを使った料理が、街中のレストランのテーブルを彩るようになった。

カリフラワーも今ピークシーズンだ。Housemanでは、オーブンで焼いた赤やオレンジの暖かい色彩の根菜と添えられて出てきた。オリーブ、ピスタチオ、ナツメヤシ、そしてハリッサという、チュニジアやモロッコなどの料理でよく使われるチリペッパーペーストが敷いてある。普通の野菜のオーブン焼きも、北アフリカ風(?)のツイストがあると一段と美味しく感じる。

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こちらはラディッシュとコールラビのサラダ。クロテッドクリームとゴートチーズで和えてあり、カラスミの一種であるべっ甲飴の色をしたボッタルガがぱらぱらっと振ってある、シンプルに見えてパンチが利いたサラダ。濃厚なクロテッドクリームが、ラディッシュのシャキシャキ感をうまい具合に引き立てている。また、メインのスパイシーなラム肉ソーセージと相性が良かった。

ラディッシュをぽりぽり齧りながら、友人と感謝祭の話をしていた。

七面鳥をどこで買うだの、炭水化物は何を作るだの、デザートはパンプキン系かアップル系かどうしたものか、と料理のプランニングで盛り上がった。今年グリーンカードを取得したばかりの友人は、ご主人側の親戚が訪ねてくるということで、非の打ち所がない「アメリカン」な感謝祭ディナーを成功させなければならないのだ、と少し鬱陶しそうにしていた。近くのバーに移り、彼女の in-laws の話を伺っているうちに、深夜になってしまった。

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感謝祭は日本のお正月のようなもので、帰省して家族が集まることが前提としてある。おせちの替わりに定番の料理は七面鳥、クランベリーソース、マッシュポテト、甘いヤム、芽キャベツのオーブン焼き、パンプキンパイ、クランブルなど。これらが大量に用意される。そうして滅多に顔を合わせない親戚とフットボールの試合をテレビで観ながら、ターキーを頬張り、一日中食べてやんややんやのお祝いのはずなのに、私の友人にとってそうであるように、ストレスの要因となるイベントとしても有名な感謝祭。「家族」にはどうも、「政治」が隠れているのである。

我が家の感謝祭は日本から両親と友人が来るだけで、比較的小さなグループで祝う。全員が日本人なので「感謝祭」というものに強い思い入れがあるわけでもなく、せっかくだからアメリカの伝統を楽しもう、ええいこの際ターキーも焼いちゃえ焼いちゃえ、というお気楽なノリなので安堵している。(頑張れ、友人!)

なあんだ、ナンデモアリフォルニアで着ていたコートでも十分じゃないかと思っていたら、いきなりぐっと寒くなったニューヨーク。本格的なオーバーコートを新調するべきか迷っているが、まず探し当てなければならないのはやはり、感謝祭のスターに変身してくれそうな新鮮な七面鳥。



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by majani | 2017-11-18 09:45 | 食べる人々 | Trackback | Comments(2)

チキンスープとクリングル

すっかり秋色のニューヨーク。近所の公園で散歩をすると、足の下で葉がポテトチップスのような音を立てる。

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今学期は授業を教える義務が無くて時間があるため、お楽しみでスペイン語の授業に通っている。そこで「風邪を引いたらどんなことをしますか?」と先生に聞かれ、「チキンヌードルスープを作ります」と自慢げに話していた矢先のことである。早速、リルケと代わりばんこで風邪を引いてしまった。

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病んでいる時、何故かとびきり美味しく感じるチキンヌードルスープ。厚く切ったセロリとニンジンを多めに入れ、冷蔵庫に残っている白ワインを投入するのが我が家の手法。このチャンキーな具沢山のスープを飲むとじわじわと元気が出てくる。

リルケが治りかけた頃、今度は私がダウンした。セーターやらマフラーを着込んでノートルダムのせむし男のようなシルエットになって家に引きこもっていると、こんな愉快なカタログが届いた。

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クリングルのカタログだ。私たちの前の住人宛てで届いた。

Kringle とはデンマークのお菓子で、巨大な円形のデーニッシュのこと。外はクロワッサンのようにサクサクでフレイキーで、上にアイシングがまわしかけてある。中身はくるみとサワークリームだったり、ラズベリージャムだったり、色々とある。

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あれ、カタログの船のロゴ、どこかで見たことあるなと思ったら、今年の春、このウィスコンシン州にあるクリングル専門ベーカリーが作ったラズベリークリングルを、カリフォルニアのトレーダージョーズでちゃっかり買って食べていたのである。

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リルケが「クリングルってなんだか分からないけれど、すごく気になる」とトレジョで大興奮して、当時は高いなあと思った9ドルだか10ドルだかを支払い、家に持ち帰った。

しかし今回届いたカタログをぱらぱら見ていると、クリングルが2個で42ドル、「感謝祭クリングル」が1個24ドル。そんなに高い物なの?クリスマスケーキも70ドル以上する。

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トレジョで買ったクリングルが随分と安くなっていたことをカタログを見て初めて知った。けれど味が so-so で、何日もクリングルを朝ごはんにして食べなければいけなったため、二枚目は買わなくていいね…となってしまったのだった。うん十ドル出せば、もっと素晴らしいクリングルが届くのだろうか。

自分で作った方が新鮮で美味しい(+安い)のではないか、と疑わずにはいられない。身体が元気になったら、自分のキッチンでクリングルを作ってみようと意気込んでいる。

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Seymour, R. 1836. "Old Christmas." Public domain.

話が飛ぶが、北欧と言えば、クリスマスに登場する Julbocken ユール・ボッケンを思い出す。文字通り、「クリスマス・ヤギ」である。小さい頃、ユールボッケンや手作りのニッセの人形(nisse は赤い煙突状の帽子を被った小人のこと)でクリスマスツリーを飾っていたのを覚えている。

よく見ると上の挿絵のユールボッケンに乗った Father Christmas も、湯気が立ち上るチキンスープらしきものを抱えている。何でしょうね、あれ。風邪を引いたりスープを作っていたりするうちに、あっという間にクリスマスになってしまいそう。

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因みに私が風邪を引いた時は、リルケは日本の大根をどこからか見つけてきて豚汁を作ってくれた。これも風邪に効きそうな感じ。

一人が弱っている時はもう一人の元気な方が料理をするので、安心して体調が崩せる。



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by majani | 2017-11-07 03:27 | 食べる人々 | Trackback | Comments(4)

テイクアウトのメッカ

カリフォルニアの家を引き払って一カ月、マンハッタンにやってきて二週間が経った時のこと。新しい住まいが整うまでアッパーウェストサイドのホテル生活が続いていて、さすがにレストランでの外食がしんどくなってきた。早く自分のキッチンに立って料理をして、ケールでももしゃもしゃ食べたい。

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そこでふと思い出した。何も高いレストランで毎晩食べなくても、出前を取れば良いことじゃないか、と。そしてニューヨークは、テイクアウトとデリバリーのメッカ。デリバリーの定番である中華やピザはもちろん、香り高いカレーに地中海料理、さくさくのバクラヴァからラーメンまで、お兄さんが自転車を飛ばして家に持ってきてくれる。

今回は、テイクアウトした、またデリバリーをしてもらって美味しかった(不健康な)B級グルメの話。

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カリフォルニアで大人気の In-N-Out Burger に対する、ニューヨークの Shake Shack 。

2004年にマディソンスクエアガーデンの素朴なフードカートで始まったこのハンバーガー屋。普通のファーストフードより値段が張るが、今やマンハッタンに10店舗以上構え、東海岸を中心に立派なチェーンへと変化を遂げた。(カリフォルニアだとロサンゼルスとサンディエゴにあるようですね。)

懐かしい感じがするギザギザのフレンチフライに、「シャックソース」とかいう特別のタレを使ったチーズバーガーが定番のセット。ハンバーガーって、年に一度か二度しか食べないけれど、毎回それはとても美味しく感じる。

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さっとテイクアウトできる食べ物と言えば、マンハッタン中の街角に停まっているハラルカート。カートのお兄さんに頼むと、3分で完成。ファラフェルやチキンとラムがイエローライスの上に乗って、トマトとしゃきしゃきのレタスサラダと一緒にスタイロフォームの容器に盛られる。そして最後に、「ホワイトソースとホットソースは?」と訊かれる。

「ホワイトソース」と呼ばれる謎のソースは、色々なスパイスやレモン汁が入っているマヨネーズベースのもので、タヒーニに少し似ている。「両方、お願い」と頼むと豪勢にぶちまけてくれる。

ハラルカートはどこにでもあるが、美味しいカートとそうでもないカートに分かれる。あちこちで試して、自分のお気に入りを探すのがまた楽しい。(写真に写っているのは初めて試してみたカートで、うーん、イマイチだった。)

健康に悪いのだろうけれど、ハラルフードには思い入れがある。昔ニューヨークで仕事をしていた時、毎日のようにミッドタウンイーストのハラルカートでパレスチナ人の仕事仲間とランチを買っていた。しょっちゅうのことだったので、カートのおじさんは、お手玉のような大きなファラフェルを、一つ、二つ、オマケしてくれるようになった。それを職場のバルコニーで、二人で国際政治の話をしながらバクバク食べて、食後に煙草を一本恵んでもらったり、恵んであげたりした。不健康な生活だった。会話の内容を思い返すと、お互いに理想的だったなあと懐かしくも思う。

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デリバリーを頼む時は、大概、インド料理に走ってしまう。カレーはスピードが命って物じゃないし(スフレなんかはデリバリーに向かない)、温め直しでさらに美味しくなっていたりする。

そこでマンハッタンヴィル(ハーレムの左隣あたりのエリア)の店で、ブリートのインド料理版みたいなものを頼んでみた。ロティにラムやチキン等の肉と野菜がぎっちり詰まっている「フランキー」という。ムンバイの屋台で買える、いわゆる street food だと聞く。

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端から見るとツマラナイ感じがするが、これが凄く美味しい。オクラと甘い玉ねぎのベジタリアンのと、ラム肉のフランキーの二種類を試した。一本3ドル50から7ドル50と安い。

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そして「ニューヨークで一番美味しい hummus が食べられる」と教授に教えてもらったブロードウェイ沿いの店。デリバリーもしてくれるが、近くに用事があったので店の中でバクラヴァやサラダなどを眺めがてらテイクアウトを頼んだ。

私はひよこ豆をすり潰して作ったフムスが大好き。半信半疑で試すと、あれ、本当に美味しい!何だろう?オリーブオイルが特別なのかな?じっくり研究すれば良かったのを、フムスを吸い込むようにして食べてしまったので、また頼んでみることにする。ここのパセリ、トマト、ブルグアを使ったタブーレサラダ(tabbouleh)も、塩加減がちょうど良くて大変美味しかった。

マンハッタンヴィルの方はあまり行かないけれど、まだまだ沢山、美味しいテイクアウトが隠れているような気がした。

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フリードマンズのこの豪快なフライドチキン&ワッフルも、家に届けてもらうことができる。競争が激しいだけに、デリバリーやテイクアウトの質、サービスが徹底していて、マンハッタナイトたちは料理をしなくたって充分に食べていける。

そこで一つ疑問に思う。マンハッタンに住む人たちは、一体どこで食料品を買っているのだろう。

近くにスーパーが無いわけではないが、セレクションが少ない、質が怪しい、高い、の三重苦。トレジョはやはりカリフォルニアに比べて店舗が少なく、お酒だけ別の店で売っているし(昔からある宗教絡みの州の法律?)、ホールフーズや洒落たフェアウェイも、徒歩で行くには中途半端に遠い場所にある。すると地下鉄に乗ってショッピング?

長年マンハッタンに住む友人ルポに訊いてみた。「時は金なり」と彼女は私をお説教するように言う。「オンラインで消耗品や食材など全部ひっくるめて買って、家に届けてもらう。アジア食材だけは、月に一度、車を出してニュージャージー州に調達しに行く。」

さらに、「夫がいると足手まといなので、彼を日本スーパー近くのサウナに放置して、その間に私が一人で500ドル分くらいの食材を買い込む」など、細かい段取りまで教えてくれて、笑ってしまった。500ドルも何に使っているの?という疑問はさておき、サウナに置いていかれる方が楽しそう。

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ルポに倣い、車を借りてニュージャージーに行ってきた。IKEAに寄ったのでお約束のミートボールを食べてきたけれど、10年くらい前に初めて食べた時の感激は今回なかった。味覚が長けてきた…と思いたい。


最近は Amazon Fresh、Fresh Direct、Peapod、また Fairway のデリバリーサービスなど、オンラインショッピングの選択肢が色々あって随分と便利になった。しかし自分でトマトを握ってみたい、バナナの熟れ具合を確認したいと思ってしまうのは、時代に乗り遅れている証拠かな。

近いうちに、ドローンでキャベツが自宅に届く時代が来るのだろうか。




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by majani | 2017-10-26 05:06 | 食べる人々 | Trackback | Comments(6)

ベーグルの街

先日、私は街角のデリで呪文のような言葉を口にしていた。

キャナイゲッタンエブリーシングベーグルウィズロックスアンダビアーリーウィズベジークリームチーズ

少し前に、引越しを控えていると話しました。デスバレーセコイア国立公園をまわるロードトリップを楽しんだ後、ナンデモアリフォルニアとしばしのお別れをすることになったのです。

引越し先は、

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ニューヨーク。写真に写っているのはハドソン川から見たニュージャージー州ですが…。

今日は久々に戻って来たマンハッタンについて。

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American Museum of Natural History の正面。

ニューヨークに辿り着いたのは9月の頭だったが、まだ30度以上あるいわゆるインディアン・サマーだった。

そして、夏のマンハッタンは、とにかく臭い。いきなり悪臭の話をするのもなんだが、私はカリフォルニアで博士課程を始める前、マンハッタンのアルファベットシティに住んでいて、ニューヨーク時代の記憶の多くは、何等かの香りがキッカケにある。

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セントラルパークにて。

夏のマンハッタン。地下鉄の階段を下り始めると、ねっとりした空気がまず顔面を直撃し、それを追いたてるようにゴミと排泄物の悪臭が鼻を攻撃してくる。洒落たオープンエアカフェが、ゴミ袋で築かれた黒い山と同じ道端で共存しているのが、夏のマンハッタンの街頭… そんな酷いイメージが私の中で根強い。ニューヨークから初めてベイエリアに移った時は、サンフランシスコはなんて清潔な街なんでしょう!とよく口にしていた。

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ファーマーズマーケットにて。

それでも、ダーティーでグライミーなニューヨークが、私は大好き。

私の学生時代のアルファベットシティは、プエルトリコ人が沢山住んでいて(さらに昔はプエルトリコ人とユダヤ人のエリアだったと聞く)、夕方になるとライスとビーンズの優しい香りが、スタジオアパートにふわりと流れ込んできたものだ。近所のおじさんたちが道端でラテン音楽をラジオで流していたり、私の建物の裏のコミュニティガーデンでちょっとしたバーベキューが行われたりしていた。ごちゃごちゃした、活気溢れるエリアだった。

今思えば、ベッドとテーブルがやっと入るほどの小さな空間でよく生活していた。若くて初心だった私は、大家さんに家賃を現金で払うように言われてもそれをちっともオカシイと思わず、毎月、大家さんの謎めいた指示通りに1番街2丁目にあるコインランドリーへてくてく歩いていき、奥に座っている英語を一言も喋らないユダヤ人のお婆さんに現金を手渡していた。大家さんとコインランドリーのお婆さんの関係は、最後の最後までよく分からなかった。今となっては、闇の中。

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冒頭のデリの話に戻すと、二度目のニューヨーク生活の初日、お腹を空かせた私は近所で発見したコーシャーデリに吸い込まれるように入っていった。ニューヨークの朝ごはんの定番、美味しいベーグルをまず食べたいと思った。空気中の菌によって美味しいサワードーブレッドがサンフランシスコ辺りでしか味わえないのと似たように、一度茹らせてから焼くベーグルの場合は、地域の水が重要。あの濃厚な味とモチモチっとした密な食感は、東海岸でしか生まれないという。

デリに足を踏み入れたとたん、何年も使っていなかった言葉がふと戻って来た。私は everything bagel with lox and cream cheese と bialy with veggie cream cheese の二つを頼んだ。見事にデリでしか役立たない言葉ばかり!

ロックスはサーモンのすり身のことで、「全部ベーグル」はプレーンベーグルの正反対で、ポピーシードやゴマなど普段ベーグルに使われるトッピングの全てが外側にくっついているもの。ビアーリーはベーグルと同様、東欧のユダヤ系コミュニティが発祥地のパンの一種だ。また、クニッシュ(knish)という、中にジャガイモがぎっしり詰まったペーストリー(これもユダヤ系のおやつで美味)や、イスラエル風のトマトと胡瓜のサラダなどの惣菜が売られているのを見て、激しく懐かしんでしまった。

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もう一つ懐かしく思ったのは、デリに来ている客層。もちろん、初めて見る人たちばかりだったが、少し大袈裟に言うと、20代後半~30代の白人テック企業関係の人間ばかりが住むサンフランシスコから移ってくると、デリに来ている人たちの多様性が変に新鮮だった。

中年の野球帽の黒人男性、大学のフラタニティにいそうなやんちゃな白人若人グループ、近くに住む金持ち金髪パパとそっくりな金髪赤ちゃん、巨大なフープピアスのヒスパニック女性、中年アジア人カップル、そしてベーグルの注文が飛び交う大変な騒がしさの中で、一向に動じず新聞紙に読み耽るヤムルカを被った老人たち。彼らは、夏なのに毛糸のチョッキを着ていて、足元は靴下&ゴム草履だったりする。この絵に描いたような、人種、文化、世代が交差する狭苦しいデリの中で、「ああ、ニューヨークに戻って来たんだな」と私は思わずにいられなかった。

ノスタルジックになっていると、「ちょっと、早くしてよ」と列の後ろの人に急かされたのも、ニューヨークらしくて再度じ~ん!としてしまうあり様。

私はベーグルとコーヒーをホテルで休んでいるリルケに持ち帰った。カリフォルニア育ちのリルケは、不愛想なニューヨーカーに早くも幻滅しているようだったが、初めて食べたロックスとクリームチーズのベーグルがすっかり気に入ってしまい、翌日も、翌々日も、そのデリに通い続けることになる。

ベーグルの力は、凄い。

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ニュージャージー州側から見たマンハッタンのアップタウン。

さて、ニューヨークに引っ越したので新しいブログを始めようかとも思いましたが、面倒くさがり屋なので 学会等でベイエリアに戻ることもありますし、せっかくここで素敵なブロガーの方々と繋がることができたので、このまま『ラマがいない生活』で続けようと思います。

ブログを始めた当時、「ラマ」は、何か探し求めていた物が、実際に行ってみたら無かった… という比喩のつもりでしたが、カリフォルニアに住んでいる間、「ラマ」の代わりに新しい発見が色々ありました。大学院初期は、カリフォルニアは「自然が多すぎる、つまらない」とぼやいていたのが(ホント、昔の自分を引っ叩きたい)すっかり西海岸とその人々のレイドバックな接し方の虜になって、東海岸に舞い戻ってきました。また、ニューヨークの思い出と実状が噛み合わないことから逆カルチャーショックみたいなものも大きく、「ラマがいない」という前提は、今年こそタイムリーなのかもしれない。

ボストンで新たな仕事を控えているので、ニューヨークの滞在期間は一年と短いですが、この大都市でも面白い発見ができればと思います。とりあえず遊び過ぎないように心掛けよう、っと。

サワードーの街から、ベーグルの街にやってきましたが、これからもお付き合いいただければ嬉しいです。



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by majani | 2017-10-14 02:55 | 食べる人々 | Trackback | Comments(7)


カリフォルニアで博士号取得後、ニューヨークにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、お出かけの記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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