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【ローマ回想】女と男

ローマ回想の続き。(去年の夏、ほぼリアルタイムで書いていたローマ旅日記はこちらから。数回に渡りぶらぶらしたり、ヴァチカンでパンツを見たり、パンテオンで恍惚としたりしています。)

リルケは山へ芝刈りにじゃなくて学会に行っているので、私は一人で美術館巡りタイムを謳歌している。アルテンプス宮が凄く良かったので、他のローマ国立博物館にも足を運ぶことにした。

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今回はマッシモ宮、 Palazzo Massimo alle Terme へ。古代ローマのディオクレティアヌス帝浴場の跡にイタリア統一50周年を記念して国立博物館が開館したのが1911年。テルメは浴場のことで、浴場跡の近くだからと「テルメのマッシモ宮」という名前に。(すぐ向かい側のごった返しているテルミ二駅はすると「風呂駅」ということだ。)

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マッシモ宮の中庭。毬のようなオレンジが生る木も。

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グラウンドフロアと1階は彫刻や herm (伊:erma)の展示が多い。もともとヘルムとは神話上の伝令使ヘルメスをかたどった柱像のことであるが、ローマ人たちはそのスタイルの複製をよく作ったらしく、ヘルメス以外に哲学者や歴史的人物の像のこともヘルム(エルマ)と呼ぶ。

上は頭の部分しか残っていない、歴史の父とされる古代ギリシャのヘロドトスである。髭のうねうねが良いねえ、うんうん、さあ次は誰かなーと中庭の周りの外廊下を進んでいくと、

ん?

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びっくりした。いきなりあるもんだから。なんだなんだ、これはどういう意味なのだ、と説明書きを読むと、

この人物は、ギリシャ哲学者、数学者のタレース(紀元前624~545年)だと考えられていたが、後にソロンと解釈されるように。近年では無名の劇詩作家だというのが通説。何故ならば、ディオニューソスに捧げる冠を劇詩コンテストの優勝者に授与することが慣例的であり、その冠の跡だと思われる額にできた深い溝がヒントにな

って、説明になってないじゃないかー!何か幸運を運ぶ(?)的な意味があるのだろうが、滑らかな柱からひょっこり出ている男性器には全く触れていなかった。

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マッシモ宮の変化球にドキドキしながら再び歩き出す。

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ディテールが綺麗に保存されているサルコファガスが多い。この3D感が凄い。

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サルコファガスの部屋が延々と続く。

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アルテンプス宮と比較するとこちらは完全な像(腕や鼻が欠けていないという意味で)が多い気がした。とにかく来る部屋来る部屋、肉体美を叫ぶ彫刻がゴロゴロしている。

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古代、またルネッサンス期のローマ人はギリシャ彫刻の複製をわんさか制作した。なので同じポーズのものが何体もあったりする。上、コピーのコピーの模写をする青年。それを写す私。

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思わず撫でたくなる牛乳のような肌。うっとり眠る表情が良い。反対側からも見てみようとてくてく歩いて行くと、

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おおっと、またもや変化球。その名も「眠るヘルマフロディトス」。つまり女でもあり、男でもある。

オリジナルは紀元前2世紀半ばに活躍していたギリシャ彫刻家ポリクレスによる銅像で、マッシモ宮の収蔵品は1880年に発見された、古代ローマ人が複製した大理石版である。尚、1781年に発見された2世紀頃に造られたとされるコピーは、ローマのボルゲーゼ美術館で見られる。ちなみにルーブル美術館にも「眠るヘルマフロディトス」がいる。

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パラッツォ・マッシモは素晴らしいフレスコ画やモザイクが結集する美術館でもある。

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モザイクは1~4世紀頃のものが多い。

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遠くからパノラマ的に展開されるドラマに見入ったり、ぐっと近づいてそれぞれのタイルの微妙な色合いを楽しんだり、細かい眉毛や魚のウロコ一枚一枚に感心したりした。スゴイ職人技だ。

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魚、猫、鳥などがよく登場する。

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こちらはビザンチンのモザイク画だったかな。モザイク三昧でメモもあまり取らずに歩いていたのであいにく覚えていないが、明らかにスタイルの違う色使いやビックリしたように大きく開いた目が印象的だった。

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ローマの12キロほど北に位置するプリマポルタのリウィア邸、 Villa di Livia からマッシモ宮に移されてきたフレスコ画。(リウィアは古代ローマ帝国初代皇帝アウグストゥスの妻。)

地下一部屋をくるっと覆う、肥沃な春の庭。

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これほど美しく、色鮮やかに残っていることに感激した。ゆっくり小鳥や小動物を見つけていくのが楽しい。

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こちらは Villa Farnesina のフレスコの一部。

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このエリアで、また気になるものを見つけてしまった。フレスコ画の一部に登場する鹿、の上に浮遊するもの。

日本にちょくちょくタイムスリップしてしまう古代ローマの浴場設計士を主人公とする、ヤマザキマリの驚異的なコメディー漫画『テルマエ・ロマエ』を思い出した。たしか男性器を祀る宗教だか、それをアミュレットのようにして首に下げたりする習慣に触れるエピソードがあり、そのお守りがまさしくこの形だったと思うのだが。関係あるのだろうか。これも説明ナシだった。

テルマエ・ロマエと言えば、マッシモ宮はディオクレティアヌス帝浴場の跡地の側にあると書いた。次回はその浴場の跡を辿る。

記事最後の写真がコレでもアレなので、

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屋根上で食事した時の一枚を。やっと涼しくなってきた。



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by majani | 2020-08-14 12:46 | 旅に待ったなし

カリフォルニア、ニューヨークを経て、ボストンにやってきた学者のブログ。海外生活、旅行、日常の記録。たまに哲学や語学に関するエッセイもどきも。


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